見出し画像

クリストキントって誰?サンタクロースの来ないクリスマス

あなたの街にはクリスマスイヴの夜、誰がやって来ますか?

私は日本で生まれ育ったので、今までは「サンタクロース」と答えていました。しかし今、私の子供たちにプレゼントを届けてくれるのは「Christkindクリストキント」となりました。

南ドイツのバイエルンのクリスマスにサンタクロースはやって来ません。その代わりにクリストキントがやって来るのです。

バイエルンの伝統的なクリスマスの風習についてお届けする本シリーズ。今回は「クリストキント」の正体に迫ります。


【クリストキントって誰??】

まず、クリストキントとは一体誰なのでしょうか。

ドイツ語でChristkind/クリストキントは直訳して「幼子キリスト」

宗教的な意味での「クリストキント」は、馬小屋で生まれた、赤ちゃんのイエス・キリストのことを指します。

馬の餌箱に横たわるイエス・キリスト

しかし、もう一人同じく「クリストキント」と呼ばれる人物がいます。

それがこちら。

クリストキント:1845
Von Heinrich Hoffmann

金色の髪に王冠をかぶった天使のクリストキントです。

ドイツのカトリック信仰の強い地域(主に南部と西部)では、この天使がクリスマスにプレゼントを届けてくれると信じられています。

しかしなぜ二人の異なるクリストキントが生まれたのでしょうか…。

それにはまず、「クリスマスにプレゼントを届ける役割の変遷」について触れなければなりません。


【クリスマスプレゼントを届ける役割の歴史】

元々、アドヴェント(アドベント/待降節)の時期に子供たちに贈り物をする役割は、「子供の守護神」と呼ばれる聖ニコラウスが担っていました。

聖ニコラウス

🎁“聖ニコラウスの日”である12月6日に子供たちはニコラウスからプレゼントをもらっていました。

*****

しかし16世紀に入ると、カトリックの「聖人崇拝」を嫌っていたマルティン・ルター(1483年~1546年)が「クリスマスの贈り物は12月25日にするべきだ!」と提唱しました。

マルティン・ルター
Workshop of ルーカス・クラナッハ - Scan by Carol Gerten-Jackson

また、「そのプレゼントを届けるのは“聖なるキリスト”だけである」とし、それ以降

🎁クリストキント(幼子キリスト)=クリスマスに贈り物を届ける役目

となりました。

贈り物の日は12月6日から25日/24日夜に変更され、贈る人はニコラウスからクリストキントへと変わりました。


【クリストキントはなぜ女の子になったのか?】

ルターがプレゼントの届人としたクリストキントは男の子。

しかし、今日世に知られているクリストキントは金髪の天使。

クリストキントはなぜ女性の姿で描かれるようになったのでしょう。

それにはいくつかの説があります。

ルターの宗教改革以降、16世紀から17世紀にかけて男の子の赤ちゃん(イエス・キリスト)と聖母マリアが家々を回って贈り物をしたことから、「贈り物をするのは女性」というイメージができたとも言われています。

赤ちゃんのイエスはプレゼントを配ったり、アドヴェントのクッキーを焼いたりする事はできないので女の子の天使がそれを代わるようになった」など。

時が経つにつれてルターの思想は薄まり、クリストキントは「女性の天使」というキャラクターとして定着していきました。


【現在の姿を決定づけたのは1933年】

しかし、今日私たちの知る姿が確立されたのは、1933年ナチス政権下のことです。

ニュルンベルクのクリスマスマーケットに「金色の巻き髪で天使の姿をしたクリストキント」が登場しました。

これはナチスの「“ユダヤ人のイエス”に代わる“ドイツ人らしいクリスマスのシンボル”を!!」というプロパガンダによるものでした。

※現在でもニュルンベルクのクリスマスマーケットでは、写真のクリストキントがシンボルとしてアドヴェントを盛り上げています。


【クリストキントとサンタクロースの分布】

ドイツ国内におけるクリストキントとサンタクロースが来る地域の分布は以下の通りです。

「クリストキント」
南部や西部、カトリック信仰の地域

サンタクロース(Weihnachtsmann)」
北部と東部の小さなプロテスタント信仰の地域


【終わりに】

私自身、バイエルンにはサンタクロースではなくクリストキントがやって来るというのは長く知っていました。しかし「なぜ天使の姿をしているのか?イエス・キリストとは違うのか?」とずっと疑問に思っていました。

今回この疑問が解けたことで、より納得してバイエルンのクリスマスを楽しむことができそうです。

子供たちにも「何となく文化を受け入れる」のではなく、この由来を伝承して行きたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。
【自己紹介】

その他の
「バイエルンの伝統的なクリスマスの風習」
に関する記事はこちらのマガジンでお読みいただけます。
↓   ↓


参考:
Gold-Engel statt holder Knabe: Wie das Christkind weiblich wurde | BR24

Nürnberger Christkind Benigna Munsi: Ein Tag mit einem Engel - WELT






いいなと思ったら応援しよう!