りんごのピラミッドに灯をともす:歴史あるバイエルンのクリスマス飾り
クリスマスを迎えるためのアドヴェント(アドベント/待降節)に欠かせないアドヴェンツクランツ(待降節のリース)は19世紀に北ドイツで考案され、今や世界的に有名となりました。しかしここバイエルンでそれが一般的に用いられるようになったのは20世紀中ごろのことです。バイエルンには、アドヴェンツクランツよりも前から人々に愛されていたアドヴェントを象徴する装飾品がありました。
それが「Paradeisl/Paradeiserl(パラダイスル/パラダイセル)」です。バイエルンの伝統的なクリスマスの風習を語る上で外すことのできないパラダイスルについて、今回はお話していきたいと思います。
【Paradeislパラダイスルって何?】

パラダイスルはクリスマスリースの一種で、アドヴェンツクランツと同じ役割を持っています。クリスマスまでの4回の日曜日に灯りをともし、増えていくロウソクの灯りによって、イエス・キリストの到来を待ちわびます。主にカトリック信仰の地域で広まっており、南ドイツのバイエルンやオーストリアの伝統的な装飾品となっています。
その形状は…
4個のりんごを枝でピラミッド状につなぎ合わせ、りんごの上にロウソクを立てます。
下部のロウソクのうち2本は紫色ですが、アドヴェント第3日曜日はテーマが「喜び」であるため、ピンクのロウソクをともします。
アドヴェント第4日曜日には一番上のロウソク(紫色)をともします。
パラダイスルは焼き菓子、ドライフルーツやナッツで飾られた皿の上にのせて、リビングに置かれます。
【パラダイスルの持つ意味とは?】
「Paradeisl」の語源は“Paradiesパラダイス=楽園(エデンの園)”からきています。
「アダムとイブが食べた禁断の果実がりんご」とされていることから、
りんごは楽園のシンボルとなり、「パラダイスル」と名付けられました。
その他、パラダイスルに使われている材料にもそれぞれ意味があります。
●りんご・・・イエス・キリストが人々を楽園へ導く
●三角形・・・三位一体の教え
●ロウソク・・・「世の光(イエス・キリストの到来)」
●クルミ・・・生殖能力
●ボックスウッド・・・悪を追い払う ※その他常緑樹も代用されます。
【パラダイスルの歴史】

📙15世紀
パラダイスルにそっくりなKlausenbaum(クラウゼンの木)、 Nikolausturm (ニコラウスの塔)と呼ばれる装飾品がNiederbayern(ニーダーバイエルン)地域で確認されています。もしかしたら別の地域で「パラダイスル」という言葉が存在したかもしれませんが、明らかにはなっていません。
📙19世紀
バイエルン王国は普仏戦争(1870〜1871年)に敗れた後、失った多くの兵を補充するため、また森林の整備のために南チロルやオーストリアから多くの労働者を呼び寄せました。彼らが故郷から「パラダイスル」を持ち込んだとも言われています。
そしてOberpfalz地域のChamカーム(上図を参照)からミュンヘンに出稼ぎに来た労働者がミュンヘンに定着させたとされています。また、ドイツ国内でのパラダイスルの元々の拠点はBayerischerWaldバイエルンの森にあったと文献によって推定されています。
1933年、ミュンヘンの新聞に「パラダイスルはほぼどこの家庭のリビングでも見かけられる」と報じています。
📙今日
今はほとんどの家庭でパラダイスルを飾る文化は失われ、アドヴェンツクランツが主流となっています。しかし、地域の伝統文化継承協会や、パラダイスルの文化を残したいと思う世代の需要もまだ残っています。
パラダイスルの歴史については民族伝承によるものがほとんどで、文献として残っている物が少ないそうです。そのため、明確な発祥時期については特定できていません。
【バイエルンでのもう一つの役割】
パラダイスルは緑色で三角形、赤いりんごの装飾、そしててっぺんに灯るロウソク。その姿はまるでクリスマスツリーのよう…。そうです。実はパラダイスルはバイエルンの人々にとってはクリスマスツリーの前身とも言われています。クリスマスツリーも、アドヴェンツクランツもルーツはプロテスタントのもので、カトリック信仰の強いバイエルン地域には北ドイツよりも遅く伝わりました。その代わりにバイエルンでは長い間、パラダイスルがその役割を果たしていました。

【終わりに】
パラダイスルについて、義理の祖父母や知人に聞いてみたものの、名前以外の情報はあまり得ることができませんでした。唯一、義理の祖母から「昔は手作りしていた」という話を聞くことができました。しかし、アドヴェンツクランツの台頭により、徐々にパラダイスルを作ることは無くなったそうです。
それでも、地元の新聞やメディアでは毎年クリスマスの時期に必ず“伝統的なクリスマスに欠かせない物”として「パラダイスル」を紹介しています。
その昔、貧しい人たちが庭にある材料で装飾品を作ってアドヴェントをお祝いしたい…と生み出したパラダイスル。
私も今年はパラダイスルを作って、いつもとは違うアドヴェントを迎えました。
興味のある方は是非、試してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
【自己紹介】
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「バイエルンの伝統的なクリスマスの風習」
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参考:
Alpen-Donau-Adria: Das 'Paradeisl' aus dem bayerisch-österreichischen Alpenraum - hier anschauen
Das Paradeisl | federfuchser.info
