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「何ライセンス買っているか」から「AIにいくら払い、何を得ているか」へ

先日、ServiceNowの決算説明を読んでいて気になる一文がありました。新規ビジネスの相当部分が、すでに「non-seat-based」になっている、というものです。

これまでITAM/SAM(IT資産管理・ソフトウェア資産管理)の実務は、ユーザー数やEntitlement(契約上の権利数)という、比較的明確な「単位」を数えることが出発点でした。何ライセンス買っていて、何人が使っていて、超過はないか、未使用(Shelfware)はどれだけあるか。この数え方が、AI Agentの普及によって静かに崩れ始めています。

Seat-based PricingからHybrid Pricingへ


AI Agentが人間に代わって業務を実行するようになると、「ユーザー数」と「ソフトウェアが処理する業務量」の関係が崩れます。100人分の作業をAI Agentが代替しても、システム上に100ユーザーが存在するわけではありません。一方でAI Agentは、Workflowの実行、Toolの呼び出し、API使用、他Agentとの連携などを大量に実行します。

ベンダー側から見れば、「ユーザー数」よりも「実行量・処理量・Consumption」の方が、提供価値と価格を結びつけやすい。だからこそ、Seat・Subscription・Infrastructure・Connector・AI Consumptionといった複数のメトリックを組み合わせたHybrid Pricingが今後一般化していく可能性があります。ユーザー数だけを追いかけていては、将来コストを正確に見通せなくなるということです。

Consumptionは「使われた」だけで、「価値を生んだ」とは限らない


ここでITAM/SAM担当者が陥りやすい罠があります。AIが100回動いた、10万件処理した、という数字を「順調に自動化が進んでいる」と読んでしまうことです。

しかしAI Agentが同じ処理を何度もRetryする、不要なTool Callが発生する、Workflowがループする、Human Escalationが必要になる——こうした状態でもConsumptionはきちんと発生します。つまり「使われたこと」と「価値を生んだこと」は別物であり、これを分けて見ないと、AI版のShelfware(低価値な消費)を見逃すことになります。

Incident Managementで言えば、AI Resolution Rateだけでなく、Reopen Rate・Failed Execution Rate・Human Escalation Rateまで併せて見て初めて、その自動化が本当に機能しているかが分かります。

更新交渉の主戦場は「Metering Rule」に移る


もう一つ実務上重要なのが、更新交渉の中身が変わるという点です。従来はUnit Price・Discount・Volume・Contract Termが主な交渉項目でした。Consumption-based Pricingでは、最終的な支払額はUnit Price × Consumptionで決まるため、「何を1 Unitとして数えるか」というMetering Ruleそのものが交渉対象になります。

Consumption Unitの定義、Retryの扱い、Failed Executionの扱い、Test環境の扱い、Overageの扱い、Cap、Alert、Carry-over、Metering Error発生時のAdjustment——価格が変わらなくても、Metering Ruleが変われば実質価格は変わります。この点を押さえずに更新に臨むと、気づかないうちにコストが膨らみます。

また、AI Agentで人員を削減したあとにベンダー側の条件が変わっても、簡単に人間中心の運用に戻せないというリスクもあります。これは従来のベンダーロックインとは少し性質が異なる、「業務遂行能力そのものがベンダーに依存する」状態と言えます。

経営層に報告すべき4種類のKPI


「AI導入で何人減らせたか」だけをKPIにすると判断を誤ります。少なくとも次の4種類を組み合わせて見る必要があります。

Consumption KPI:Total Consumption、Consumption Growth Rate、AI Execution Volume
Quality KPI:Resolution Rate、Reopen Rate、Failed Execution Rate、Human Escalation Rate
Financial KPI:Cost per AI Execution、Cost per Successful Resolution、Net Savings
Business Value KPI:SLA Improvement、Processing Time Reduction、Business Outcome Achievement

最終的に見るべきは「AIをどれだけ使ったか」ではなく、「AIに払ったコストに対して、どれだけ価値を得ているか」です。

今から準備できること


更新の直前になって慌てて対応するテーマではありません。今から準備できることとして、原記事では次の7つを挙げています。

  1. Commercial Model(何が課金単位になっているか)を把握する

  2. 2. AI Skill/AI Agent/Workflow単位でConsumption Baselineを作る

  3. 3. ConsumptionとFailure・Retry・Reopenを結び付けて見る

  4. 4. Cost per Successful Business TransactionでUnit Economicsを算出する

  5. 5. AI利用量が増加した場合の将来TCOをシミュレーションする

  6. 6. Cap・Overage・Metering Rule・Auditabilityを更新交渉の項目として準備する

  7. 7. 人員削減効果だけでなく、ベンダー依存で失われる内部Capabilityまで評価する

おわりに


ソフトウェアはこれまで「人間が仕事をするためのTool」でした。それが「ソフトウェア自身が仕事を実行するDigital Workforce」に変わりつつある。だとすればITAM/SAMが管理すべき対象も、Entitlement → Consumption → Cost → Quality → Business Outcome → Vendor Dependencyという一連の経済構造へと広がっていきます。

「何ライセンス買っているか」から「AIにいくら払い、そのAIからどれだけの価値を得ているのか」へ。この問いへの準備が、これからのITAM/SAM・ベンダーマネジメントに求められています。

本稿は、イタムス株式会社 代表コンサルタント 武内烈氏(Oracle License Master/SLAM Master)による記事「AI時代のソフトウェア資産管理」の内容をもとに、VMAJとして要点を再構成したものです。Metering Ruleを踏まえた更新交渉の考え方、Consumption BaselineとUnit Economicsの設計など、より実務的な整理は元記事をご覧ください。

▼元記事(イタムス株式会社)


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