輸出免税のカラクリと実務上の注意点
輸出免税売上の消費税はゼロ
消費税は税を負担する者(担税者)と税を納付する者(納税者)が異なる「間接税」です。つまり、消費税は実質的には消費者が負担しますが、その納付は事業者が売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引いて行われます。この「仕入れに係る消費税を差し引く」ことを「仕入税額控除」といいます。
事業者は「売上に係る消費税」を少なくして「仕入れに係る消費税」を多くすれば消費税の納付額が少なくなります。しかし、単純に売上を少なくして仕入を多くすれば言うまでもなく利益が減りますから、得をすることはありません。
ところで、事業者は輸出取引については「売上に係る消費税」をゼロとして申告できます。こうした取引を「輸出免税売上」といいます。これは「消費税は国内の消費者が負担するものであり、輸出された商品は国内でなく国外で消費されるため、その商品に消費税を課することは合理的でない」という理由からです。
輸出免税売上によるマジック
この輸出免税売上が現場でちょっとしたマジックを起こす仕組みを説明します。ここに売値(税抜)100円、仕入値(税抜)60円の商品があるとします。まず、輸出免税売上が絡まない国内取引の場合を考えます。A社はこの商品を税込66円で仕入れて、税込110円で売ったとします。このとき、税込の利益は44円(110円-66円)となりますが、消費税を4円納付(売上に係る消費税 10円-仕入れに係る消費税 6円)することになりますから、最終的に手元に残る利益は40円(44円-4円)になります。

ではA社がこの商品を海外へ輸出した場合はどうなるでしょうか。輸出免税売上は消費税ゼロです。A社がこの商品を税抜価格と同等の100円で輸出すると、税込の利益は34円(100円-66円)となりますが、売上に係る消費税 0円から仕入れに係る消費税 6円を差し引くとマイナス6円になります。このマイナス6円は消費税の還付申告をすれば国から戻ってきます。
したがって、最終的に手元に残る利益は40円(34円+6円)になります。すなわち、消費税分の10円を上乗せせずに輸出すると、利益は国内取引と同じになる仕組みです。

しかし実際の現場では、事業者は消費税分を上乗せして輸出していることが多いのです。つまり、A社はこの商品を110円で輸出します。すると税込の利益は44円(110円-66円)となり、仕入れに係る消費税6円を還付申告で取り戻し、最終的な利益は50円(44円+6円)となって、先述の2つのケースよりも、上乗せした消費税分の10円大きくなります。これが輸出免税マジックです。

輸出免税で海外の得意先と揉めるケースも
海外へ輸出する商品の代金を110円にするか100円にするかはA社の自由なのですが、いずれにしろ輸出商品の代金に含まれる消費税はゼロです。しかし、国内用の販売管理システムで伝票を起こしていると、輸出商品の代金の請求書に消費税が載ってしまうことがあります。
これは厳密に言えば間違いなのですが、この請求書を見た海外の得意先が「こちらでは仕入にかかる消費税を控除できないのだから、代金のうち消費税の分を値引きしろ」と言ってくることがあります。
こうした得意先は前述したようなマジックを知っているのだと思われますが、そもそも輸出商品の代金に含まれる消費税はゼロなので、消費税は関係ありません。
やはり請求書に消費税が載っていることが問題で、書いてあることと実態とがずれていることから、得意先の説得に労力と時間を要する場合があります。したがって、輸出商品の請求書は消費税を載せずに発行することが安全と言えるでしょう。
まとめ
輸出は消費税法上のメリットもある魅力的な取引に見えますが、輸出免税の適用を受けるためには輸出許可書など一定の書類の保存が必要であったり、海外事業者とのトラブルの要因になったりと注意すべき点が多くあります。輸出取引を行う際には信頼できる税理士の助言を仰いで対策を検討する必要があるでしょう。
