「ナニワ金融道」に学ぶ金融リテラシー ー 投資よりも財産防衛を優先せよ
日本政府は前岸田政権の時代から「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げ、国民がより多くの金融資産を投資商品へ投入するよう様々な政策を推進しています。
昨今では多くの種類の投資商品が存在しており、学校や自治体などにおいて金融教育の機会も拡充されていますが、そうした教育は基本的な貨幣の役割を学ぶものであったり、投資商品の特徴や注意点を学ぶものであったりすることが多い印象です。
しかし、私は金融リテラシーを高めるにあたっては、投資商品の知識よりもまず先に「与信=取引相手に信用を与えること」を学ぶ必要があると考えます。
というのも、詐欺の被害に遭ったり、分不相応な取引をしたりして身を滅ぼす原因は「与信の失敗」が主だからです。つまり、投資をして財産を増やす「攻め」を学ぶよりも、自身の財産を「守ること」を覚えるほうが先決というのが私の意見です。
特に、SNSを開けば怪しげな特殊詐欺業者の広告が跋扈する混沌の現代においては、金融リテラシーにおける防衛ノウハウの比重はますます高まっていると言えるでしょう。
そこで、私は「ナニワ金融道」を金融教育の教科書として採用すべきだと考えます。「ナニワ金融道」は鉄道会社の会社員から公務員、キャバレーのボーイまで30以上の職を転々とし、自身で会社を起こして倒産させたこともある人生経験豊富な青木雄二氏が描いた漫画で、1990年代に週刊モーニングで連載していました。
ナニワ金融道はノンバンクの貸金業者に就職した灰原という若者を主人公として、金を貸す側と借りる側のリアルな思惑や掛け合い、詐欺や投資商品にはまる人々の思考回路や転落プロセスを淡々と描いています。
画風が少し独特なので人によってはとっつきにくさがあるかもしれませんが、内容は非常に濃く、連載当時から30年を経過した現代においても金融について多くを学べる素晴らしい漫画だと思います。
そこでナニワ金融道の中から金融リテラシー、特に財産防衛能力の向上において役立ちそうな内容をピックアップしてみます。
お金を借りれば信用情報は記録される。預金残高をプラスに維持して、無用なローンを組まないことが重要。

金融機関や貸金業者は個人にお金を貸す前に申込者を信用情報機関に照会して、借入残高や返済履歴を確認し、返済能力があるかどうかを判断します。
お金を貸す側はクレジットカードの残債や残高不足で引き落とせなかった履歴なども知ることができるので、キャッシュレス決済が主流になっている今日、金融に関する個人情報は金融業者に知れ渡っていると考えてよいでしょう。
クレジットカードの残高不足を数回起こした場合、ローンの審査にとって不利に影響する可能性もあります。お金に対するルーズさが自分の信用を下げることになり、そうすれば金利の低い有利なローンを組めなくなります。そして、金利の高い不利なローンに手を出すことは長期的に見て自分の財産を毀損することになります。
これは金利の高いローンを案内したい消費者金融業者にとって不都合な真実ではありますから、金融教育においてあまり語られる場面はないでしょう。
それでも、「預金残高をプラスに維持して、無用なローンを組まない」これは我々一般庶民にとって重要な知恵と言えるでしょう。
書類が真実とは限らない。常に人間を直接検分して信用を与える必要がある。

最近映画化もされた「地面師」、つまり価値の高い土地の権利を持っているように見せかけてお金をだまし取る詐欺師のことを言いますが、ナニワ金融道ではあろうことか土地の登記簿謄本を偽造して担保を設定し、金を借りて逃走する地面師が出てきます。
主人公はまんまとこの地面師に嵌められてしまうのですが、土地の権利書だけを見るのではなく、その人物がその土地を取得した経緯や、その人物の現在の暮らしぶりなどを徹底的に調べれば、もしかすれば詐欺の被害を防げたかもしれません。
もちろん調査のための労力やコストはかかりますが、大きな取引を行う際には人物を多面的に検分することがリスク回避のための重要な知恵であると言えるでしょう。
また、金融に限らず、人事の場面でも重要なポストの従業員を採用する際にはリファレンスチェックを行うことが増えているそうです。人物の信用は書面だけでは分からない。これもまた真実と言えるのではないでしょうか。
金主の存在。お金は出所があり、出所が一番強い。
貸金業者には金主がおり、金主はお金そのものを貸金業者に預けています。銀行傘下でない消費者金融は個人や企業を金主にしています。ナニワ金融道でも金主の存在を軽んじた主人公が社長にしめられるシーンがあります。
債務者は直接的にはお金を貸金業者に借りますが、間接的には金主から借りることになります。基本的に金主は預けたお金が返ってこないと丸損になってしまうので、債権回収に関して貸金業者に相当なプレッシャーをかけますから、それで貸金業者も債務者に対して(合法の範囲内で)プレッシャーをかけざるを得ないという背景があります。
金融機関からお金を借りるということは圧倒的な社会的強者と取引をすることという意識を忘れてはならないでしょう。
もちろん、現代においては債権の取立て方法や返済条件に関する法規制は厳格化し、債務者に対する不当な権利の侵害が起こらないような制度が整備されています。
しかし、基本的な考え方として「貸す側が強く、借りる側は弱い」という原則は子供のうちから頭に入れておく必要があると言えるでしょう。
まとめ
金融教育は投資商品の扱い方を教えるだけのものではなく、金融そのもののメリットと危険性を包括的に教えるものでなければなりません。
ナニワ金融道はあまりにリアルすぎるため公的教育の教材に採用される可能性は低いと言えますが、その内容をマイルドにした、より基本的な財産防衛のノウハウを教える金融教育が広がっていくことを期待します。
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