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"誰に向けて話すか"が明確になった。「医者のいらないラジオ」が語る、PodcastにないVoicyの熱量

VoicyとPodcastを併用しながら配信を続けている「医者のいらないラジオ」。医療・健康情報という専門性の高いテーマを扱いながら、熱量の高いリスナーが多くいる稀有な番組です。

通常放送では幅広い健康情報を、有料配信のプレミアム放送では、リスナーの具体的なお悩みに回答していくスタイル。放送をきっかけに医療機関に足を運び、病気の早期発見につながったという声も多く届いているそうです。特筆すべきは、オフ会を開けば海外から駆けつける人もいるほどの、プレミアムリスナーの熱量の高さ。

米国で老年医学専門医として働く山田悠史先生と、番組アシスタントの新里百合子さんに、番組設計の裏側、そして音声の「収益化」の先にある価値について聞きました。

1人より2人のほうが、音声配信は継続しやすい

――まず、「医者のいらないラジオ」を始めたきっかけを教えてください。

山田先生: 著書『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社)を出版したタイミングでお声がけいただいたのがきっかけでした。もともとテキストでの発信が多かったなかで、別の形で情報を届けることに関心があったんです。

医療や健康の情報は、正しいものほどテキストに偏っている印象があって、音声ではあくまで見聞や二次情報など、正確性が担保されていないものも少なくありません。だからこそ、きちんと根拠を持って情報を届ける番組が必要だと考えていました。

――最初からVoicyとPodcastを同時配信していることや、Voicyで2人喋りをしているのも珍しいですよね。

山田先生: これはすべて当時の担当者が考えてくれたのですが、聴けるプラットフォームの選択肢が多くあったほうが良いだろう、ということで複数チャネルでの配信を設計してくれました。

1人より2人のほうが、音声発信は継続しやすいと感じます。1人だと怠けてしまったり、「今日はやめよう」と思ったりすることもあるかもしれませんが、お互いに予定を押さえているので、どんなに忙しくても収録しないといけないんです(笑)。一定のプレッシャーがかかっているので、2人でやることが続けるうえでの土台になっています。

それに、ずっと病院で仕事をしている身だと、どうしても一般の方の感覚がわからなくなることがあるなかで、新里さんがリスナーと同じ目線で話してしてくれるので、専門的になりすぎず、適切な距離感で話ができていると感じますね。

新里さん: 実は私の本業はライターで。パーソナリティをやるのも初めてですし、最初は一言二言しか話せなかったのですが、バラエティ番組や動画メディアに出演されているアシスタント役の方を見て勉強しました。Voicy代表の緒方さんの『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』(ダイヤモンド社)も読みました(笑)。

山田先生: 最初はガチガチに緊張していて無言でしたよね(笑)。

――アシスタントとして意識されていることはありますか?

新里さん: 聞いてくださる方に不快な気持ちを与えないように、敬語は崩さないようにしながら、親しみやすさはのせる…というのを意識しています。

プレミアムリスナーは、「一緒に番組を育てる仲間」

――プレミアム放送は、どのような背景で始まったのでしょうか?

山田先生: 番組の体制変更に伴い、運用が無理なく循環する最低限の仕組みを作ることを目的に始めました。

でも、実際に初めてみると、お金以上に「コミットしてくださる方がいる」価値の大きさに気付きましたね。私は普段はニューヨークに住んでいるのですが、年1回帰国した際に開催しているオフラインミーティングにも毎回たくさんの方が来てくださるんです。そのなかで、「こんなことに悩んでいる」「こんな内容が知りたい」というリアルな声やテーマ案をいただける。距離の近い、密接なコミュニティになっていると感じます。

プレミアムリスナー同士のつながりもできていて、リアルで集まって私たちの生放送を一緒に聞くこともあるみたいです。他にも、私の書籍を買って人に配ってくれたり、わざわざ海外からオフ会に来てくれたり…。

――熱量の高いリスナーが集まっているんですね。

新里さん: やっぱり山田先生のファンが多いですね。おそらく、信頼できる医療情報が少ないなかで、やっと見つけた信頼できるソースだと感じていただいているのかなと。

実際にリスナーさんと会える機会は1年に1回程度ですが、チャット機能で頻繁にやり取りを交わしているので、コミュニケーションが密に行われているのも熱量の高さにつながっていると感じますね。

山田先生: 以前、ニュースレターの読者を集めた会を開いたこともあるのですが、Voicyのリスナーはさらに熱量が高い感じがしますね。ただ文字を読むだけじゃなくて、耳元で話しかけられているみたいな、その感覚がそれを生んでいるような気がしますね。

Podcastだと聴いている人の顔が見えづらいですが、Voicyではプレミアムリスナー限定のチャットやオフラインでお話を伺っていることもあり、「誰の顔を思い浮かべて話すか」が明確になりました。放送が自分たち本意にならないのは、プレミアムリスナーのおかげかもしれません。

――プレミアム放送と通常放送で、内容はどのような違いがあるのでしょうか。

新里さん: 通常放送では、皆さんが広く関心を持っているテーマを取り上げることが多いですね。山田先生がXで紹介されている研究や論文に触れたり、健康番組を観たり、周囲の人から健康に関する悩みを聞いたりして、それをベースに企画を立てています。

プレミアム放送では、チャット機能でプレミアムリスナーさんからいただいた質問を取り上げたり、個別具体的な相談に深く答えたりする、という使い分けをしています。

山田先生: プレミアム放送でいただく相談はかなり具体的ですね。家族の症状や検査結果、日常生活の判断など、一般論だけでは答えにくい問いが届くため、通常放送よりも踏み込んだ回答をしています。

新里さん: 山田先生に直接相談できる機会なんて、なかなかないですからね。日本の病院って診療時間が短くて、ちゃんと納得できるまで話聞けることってないので、そういうふうに使っていただくとお得だと思います(笑)。

専門ではないことに関しても、断りを入れたうえで、医師としてのジェネラルな知識で回答してくださるので、「なんでも聞いてください!」というスタンスです。

「生配信をそのまま出す」最小工程が、放送継続の秘訣

――お互いに別の国に住んでいるなかで、どのように週に3回の放送を実現しているのでしょうか。

新里さん: 週に1回、約1時間半で複数本をまとめて録り、アーカイブを月・水・金に分けて公開しています。収録はすべてVoicyで行い、全部生放送で流しています。

もともと工数削減のために始めたのですが、意外と毎回その場でライブを楽しんでくださる方が結構な数いらっしゃったので、このスタイルを続けています。山田先生は本当にお忙しいので、事前に概要をお送りするぐらいで打ち合わせはせず、ぶっつけ本番で挑んでいます(笑)。

――通常の収録がすべて生放送なのは驚きです。編集をしないんですね。

新里さん: 凝った編集を入れたり、工程を増やしたりすると続かないと思っていて…。結果的に心理的負担はかなり下がりました。山田先生、よく言いますよね。 結局ずっと続けることが大切で、続けているだけで土俵に残れるって。

山田先生: 医師の番組って、大体スタートから1年以内に終了してしまうケースが多いんです。だからこそ、頑張りすぎずに淡々と続けること自体に価値があると思っていて。私たちはそこを最優先にしたからこそ、長く続けられているんだと思います。

新里さん: 編集しないで、コンテンツの中身だけで勝負できているのは、ひとえに山田先生のおかげですよ。山田先生が他の番組でコメンテーターをされてきたことや、テキスト媒体で発信されていたことなど、仕事上で培ってきた極意が凝縮されての、ぶっつけ本番だなと思います(笑)。

続けることで、想像していなかった価値が生まれる

――リスナーから届く反応のなかで、印象に残っていることはありますか。

山田先生: 放送がきっかけで病院に行き、病気の早期発見につながったという声を複数いただいたことですね。私たちの配信で救われた命がある…と言うと大袈裟かもしれないけど、配信を続けて良かったと感じました。テキストでは届かなかった人にきちんと情報が届いて、結果として誰かを救えていたのなら本望です。医師が病院の外で活動することの意味を感じるシーンが何度もありました。

新里さん: 「やらなくていいことがわかった」という声も多いです。この検査は受けなくていい、このサプリメントは飲まなくていいなど、無駄な時間とお金を使わなくなるというのもこのラジオで提供できている価値だと感じます。「行動指針」を示せているのかなと。

――改めて、音声発信の魅力について教えてください。

山田先生: とにかく続けることで、想像していなかった価値が生まれると思います。Voicyは、過度な作り込みをしなくてもBGMも自然に入れてくれますし、ズボラなスタイルの人でも続けやすい設計なので、安心して始められると思います。

私はこのラジオを延々と淡々と70歳、80歳になっても続けるつもりでいます。変化が起きたときにしなやかに対応できるよう、番組にも余白を持たせながら、必要な情報を届けつづけたいです。

新里さん: 私は本当にたまたま仕事の関係でパーソナリティになりましたが、やってみたらとても楽しかったし、続けるうちにパブリックに向けて喋るスキルが人生のあらゆるところで役に立つことにびっくりしました。

交渉するときでも、初めての人に会うときでも、困ったときに仲介に入るときでも、自分がこうしたいと思った方向に物事を持っていくことが、言葉の力によってできるようになったんです。そんなスキルが培われるのも、音声配信の魅力だと感じました。

・・・

▼「医者のいらないラジオ」はこちら

文章:いしかわゆき


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