とあるクソ寒い夜
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
…って時期でもないな。成人の日もとっくに
終わったしな。新成人の皆さんおめでとう。
けど世の受験生にとっては正月も何も
そもそも関係ないんだろうなぁ。
ってな訳で、姉の高校受験にまつわる父のお話。
・看護師になりたい姉
俺には姉がふたり居るんだけど、上の姉は
「将来何になりたいの?」の質問に対して、
ほんの小さい頃から一切ブレることなく
看護師になりたいと言っていた。
年月を経て、実家からなかなかに離れた看護学校へ
進学、国家試験を一浪して、看護助手として
働いてから晴れて夢の看護師になり、
現在はステキな旦那に出会い、現在小学生の
子どもふたりに恵まれ、多忙ながらも幸せな
人生を歩んでいる。
…コレ結構凄いよね?
小さい頃になりたいって最初に言った
ものを一切ブレずにそれを叶えるって。
海賊王とか火影を目指してるみたいな。
普通?ならもっと変遷あると思うんだけど。
俺はかなり変わった。記憶する感じの流れでは
ウルトラマン、裁判官、小説家、ウェディング
コーディネーター、アパレル店員、古着屋。
一個めからの振り幅がものすごいのは多分あんまり
なりたいものがそれまでの期間にハッキリして
なかったからだろう。小6〜20歳までが
小説家〜古着屋の流れだ。
…バーテンダーになるとは小さい頃や10代でも
考えもしなかったな。というか幼少期は
バーテンダーも、そもそもバーという存在や
概念やらも知らない。
俺の場合はそうだったけど、ウチの姉はこう、
初志貫徹というか、初めてなりたいと思ったものに
約20年変わらずひたすら道を突き進んでなれた
なんて、誰でも成し遂げられるようなことじゃ
到底ないと思う。
そんな看護師への道を驀進する姉と、アレな父との
高校の受験戦争の中での、ひとコマ。
・志望校に合格したくて
姉が中学3年の頃だ。
看護師をめざす学科がある私立の女子高に
何がなんでも入学したかった。
家からはかなり離れた場所にあり、チャリ通で
20分〜30分という訳にはいかない所にあったし、
しかも偏差値も高かったらしい。
それでもどうしてもそこに入学したかったのだ。
「中学1年生からもう受験は始まっている」と
両親から言い聞かされ、また自分自身にも
ストイックにそう言い聞かせ、部活も両立しつつ
日夜勉学に励んだ。
まだまだアホの小学3年生程度の俺はその
打ち込みぶりを「ガリ勉」と揶揄したことを
覚えている。うん、なんか、シンプルにごめん。
たちまち「夏を制する者は受験を制する」という
時期を経てつるべ落としの秋も過ぎ、クリスマスも手放しに楽しめる余裕もないうちにあれよあれよと迎え、年が明けた2月だったか3月だったか。
そんな寒いある夜、父から家族に提案があった。
・お参り
「今から合格祈願に行くぞ」と言い出した。
何で夜なん。今からやったら一人で行って。
あと寒いねん。俺エエよ。明日行きぃや。
…とまぁ今ならそう言ってしまいそうではあるが
小学生だった当時はむしろワクワク、予定として
前もって言われずいきなり家族でお出かけ、
というのは特別な感じがしてなんか嬉しかった。
父、母、ふたりの姉、俺の家族全員が揃って
車に乗り込んだ。
ちょっとうろ覚えにはなるけど、2ヶ所の神社に
行った気がする。当然閉まってはいた。
めっちゃ寒い中、家族は一様に吐く息を白く
させながらお参りをして回った。
夜11時頃かな、もう1ヶ所行こうと父が言った。
・3ヶ所目
一家を車にまた乗せて走り、父が停めた先は
姉の志望校の正門前だった。正門のちょい手前。
そりゃあ合格してほしいもの。
別に手を合わせたって寺社仏閣みたいにご利益の
ある場所ではないにしても、ここは一丁宜しく
お願いしますって感じでね。
全員車を降りて、学校の正門前で手を合わせた。
……よく考えたらちょっと恥ずかしいな。
まぁ客観視しては駄目だ。野暮なこと言わずね。
頃合をみて合掌を一同自然にやめたとき、
「先に戻っといてくれ」と父。
まぁ寒いしそれを聞いてさっさと乗車する俺達。
・お…おう……
正門前に父だけ残った。
我々は横から見た父の姿を、車の中から見守る
ような形になった。ほう、何するの?
…再び手を合わせた。
マジで合格してほしいもんな。譲れない。
…深々とお辞儀をした。
いやーもうとにかく受かってほしい。それだけ。
…そして、
ゆっくり両膝を折り、地面に着地して…
そのまま腰を曲げ…頭を垂れ…
ついに土下座しちゃった。
お…おう……だいぶお願いしてるな。
けどヤバいヤバいヤバいヤバい、
一生懸命手を合わせて祈願してたら
なんか学校の前で夜間に土下座してる
オジサンがゆっくり完成したんですけど。
しかも女子高の前だよ?
警備員さんとか警察の人が通りがかったり
近隣住民が通報してたらどうすんの。
皆がそろそろ寝静まりかける時間帯に
女の子だけの学び舎であり秘密の花園の女子高の
前で一人きりで土下座してるオジサンはヤバい。
いやまぁ家族全員とかの方が画的には比較的
ヤバいけどね?
仮に事情聴取とかあったら最悪の場合もう
姉ちゃんの受験どころではなくなるよね。
受かったとしてもなんか風の噂で新入生の
あの子のお父さんは夜の正門の前で土下座したら
目撃されて任意同行した人だよみたいな事に
なったら、もう看護の学科とかマジで本当に
やってらんないとかになりそうよね。
最悪の状況になったら事情をキチンと説明できて
身元引受人になれるウチの母が一緒に来てて
良かったよね。実際何もなかったけど。
ただ、車内は大爆笑してました。
正門で土下座したいから母を連れて来たんかな…
土下座しても大丈夫な環境を作ろうとして…
もとい、
土下座しても大丈夫な環境ってなんだよ。
・サクラサク
晴れて、合格した。おめでとう。
すっごい頑張ってたもん、姉ちゃん。
中3になって部活引退した位からは家に居たら
基本的にずっと勉強してたしな。
そしたら念願叶って4月からは憧れのA高の
1年生だよ。めでたいな。
制服姿を家族みんなにお披露目。
とても似合ってるよ姉ちゃん。
いやぁ弟として鼻が高いよ。これからも頑張って!
これは看護師になる為の第一歩だね!
けどさ、これは一重にアレもコレもさ、
お父さんの土下座のお陰だよね。
素晴らしいすごい!お父さんがすごい!
お父さんが土下座したから受かったよね。
ホントそうだよね!ほらほら!ね!
姉ちゃんお父さんに土下座して?
何してんの早く!ほらぁ!
エッ、姉ちゃん何で泣いてんの(笑)
……、
以上、姉が看護師になるまでの、家族のみぞ知る
(覚えてるかはわからない)サイドストーリー
でした。今年も4649!おもちの食べ過ぎに注意!
