年収が20倍になったら幸せも20倍か? 0円Jリーガーから経営企業を上場させてわかったこと
少し前にTwitterでこんなつぶやきをしました。
サッカー選手を引退し20年かけて、年収が20倍になったけど、20倍の幸せは手に入らなかった。
21歳でJリーグ・ガンバ大阪から戦力外通告を受け、23歳でサッカー界から完全撤退。ビジネスの世界に飛び込み、夢中でがんばってきました。
20年をかけて年収はサッカー選手だったときの20倍以上に。
「プロアスリートのセカンドキャリア」としては成功例として取り上げていただくことも多く、今日もこれから始まる新しいことにワクワクする毎日ですが、ふと、「年収が20倍になって20倍幸せになったか?」と自分に問いかけてみると、「どうやら全然そんなことないぞ」という思いが頭をもたげてきます。
20年かけて年収は20倍に。でも幸せは20倍にならなかった
夢を叶えて意気揚々と臨んだJリーグ、目の前が真っ暗になった0円提示、失意のJFL、心機一転、右も左もわからない世界での奮闘、原点となった家業とリユースに見た希望の光、そしていくつかの事業の成功と初めての会社、初めてのオフィス、初めての上場……。
一口に20年といっても、いろいろなことがあり、そのすべてを経験してきたからこそいえること。
みなさん、年収と幸せはまったく比例しません!
年収800万円で幸福度は頭打ち
高収入であること、お金持ちであること、生活に余裕があって高価なものを身に付けている人をさして「幸せ」とする価値観が一般的だという時代はたしかにありました。
しかし、私の経験から、年収が上がるにつれて幸福度、人生の充足感が高まるかというと、実はそうではありませんでした。
しかもこれ、私の経験からだけではなく、近年の研究で「年収が高い=幸せ」という価値観自体が、単なる思い込みに過ぎないという検証結果が出されているというのです。2015年に「消費、貧困、福祉」に関する分析研究でノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のアンガス・ディートン教授が2008年〜2009年にかけて行った調査によると、年収が7.5万ドル(約800万円)まではたしかに、収入が多い人の方が幸福を感じるが、年収800万円を超えると、幸福度はほとんど変わらないという結果が出ています。
年収1億円の人より800万円の人の方が幸せ!ってどういうこと?
年収7.5万ドルでも10万ドル稼いでいても幸福度はさして変わらない。それどころか、仕事に費やす時間が増え、責任も重くなり、ストレスが増えていく。
アメリカの話でしょ? という方もいるかもしれませんが、日本でも2019年に内閣府が「年収と幸福度に関する調査」を行った際の結果が、まさにこれと同じ傾向を示しています。
「満足度・生活の質に関する調査(第1次報告書)」で、年収100万円未満の人の幸福度は平均5.01、年収700万円以上1000万円未満の幸福度は6.24だった一方で、年収1000万円以上2000万円未満の幸福度は6.52と微増。
年収が3000万円を超えると幸福度は6.6とこれまた微増ですが、ここから年収5000万円以上(6.5)、年収1億円超では(6.03)と増えるどころか減っていくのです。
年収700万円以上1000万円未満の人より年収1億円超の人の方が幸福度が低い。これは、ここ日本で行われた調査の明確な結果です。
幸せはあの日の「夢中」にあるのかもしれない
私は今めちゃめちゃ幸せです。
日々幸せを実感して生きていると言い切れます。
でもそれでも、夢中でサッカーボールを追いかけていたころ、何も考えず、ただサッカーがうまくなりたいと思っていたころと比べて、あの時よりも幸せか? と聞かれたら、即答できる自信がありません。
他に何も欲しいものがなく、サッカーが好きで、ボールを蹴ることだけで満足していた、体が疲れていてももっともっととボールを追いかけていた日々。
プロに入って結果を求められるようになってからは、余計な雑念が入り交じることも多く、思えばサッカーが苦痛になっていた時期もありますが、純粋にサッカーと向き合っていた時間はいま思い返してもキラキラ輝いています。どんなに稼いでも、どんなに充実した経験、体験をしても、あの頃を凌ぐような「夢中」はやってきません。
思い込みを手放し、本当の自分を取り戻す
年収1000万円になれば幸せになれる。
1000万プレイヤーという言葉があるように、長い間、ビジネスパーソンの間にはこうした思い込みが定着してきました。
いやいや1000万円じゃ足りない! いやいや収入ではなく、自由になるお金で決まるなどなど、「お金」「稼ぎ」を基準とした言説はたくさんありますが、実際にそこを通ってきた実感としては、やっぱり「ほんまにそうか?」「誰かが決めた基準、過去に縛られてそう思い込むように仕向けられているだけなんじゃないか?」と改めて思うのです。
お金を基準にしていると、比較が始まってしまいます。そしてそこから逃れることができません。見るのはいつも自分より上の人。上を見たら切りがないわけで、つねに比較のループの中にいて毎日こうなりたい自分と現実の自分のギャップに苦しめられる日々です。
自分が本当に欲しいもの、やりたいことに向き合っていないから、目標を達成しても幸せには近づきません。
偽りの価値観、誰かが決めた幸せ、本当は必要のないモノやコトに囲まれて、つくり笑顔で過ごすことになってしまいます。
無意識に信じ込まされていること、バイアスを取り除いて、自分の欲求、やりたいこと、夢中に向き合うことに意識を向けると、お金や経歴、地位、名誉、ステータスとしての持ち物、洋服、車、時計、あらゆる物から解放されるようになります。
「自分はバイアスにまみれている」と自覚した瞬間に呪縛は解ける
もちろんすべてがいらないわけではなく、自分が何を必要としているか、何に価値を感じているかがわかるようになるというわけです。
多かれ少なかれ、みんな誰かがつくった常識で人生の選択をし、自分の意見でさえも潜在的にすり込まれた常識に左右されています。
私自身、かなりバイアスのかかった眼差しで世界を見ていた時期があり、仕事相手、メンバーと話をしてもバイアスのぶつけ合いをしていたことがありました。
大切なのは、「自分がバイアスにまみれている」と気が付くこと。一気に本当の自分を取り戻すことはできませんが、自分で下した決断、判断でさえ自分で選んでいないこと。自分が感じること、思うこと、考えることすら、誰かの何かの意図や古い慣習、常識に縛られていることを意識できれば、そこから「自分」の見方が変わり、思考が変わり、行動が変わっていきます。
幸せは誰かや何かにつくってもらうものではなく、自分で見つけ、自分で育てていくもの。お金、稼ぎ、年収に比例して何十倍になっていくものでなく、自分の中に等しく存在するもの。
これからの20年はどうやって夢中を増やしていき、あの純粋にサッカーが好きだった自分に近づけるかの挑戦なのかもしれません。
