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スタバはコーヒーを売っていない? 社員総会で語った「価値観3.0」

10月28日に行われた毎年恒例のバリュエンス社員総会でお話ししたことについて引き続きまとめていきたいと思います。

前回は、価値観の変化についてのお話をしました。

投資家、私たちにとっての顧客、働く人の三者すべてにおいて価値対象の捉え方とそれに対する尺度が変わっているというお話です。

コーヒーではなく、時間と体験を売るスターバックス

たとえば出先でちょっと時間が空いたとき、待ち合わせや次の予定まで少し時間があるとき、あなたはどうしますか? カフェで時間をつぶすという人も多いと思うのですが、どのカフェに入るかという選択に迷う人もいるかもしれません。

現在、全国の店舗数でトップ1を争っているのは、スターバックスコーヒーとドトールです。2022年10月現在で、1727店舗のスターバックスが1位1067店舗のドトールが後に続いています。

他にそれぞれの用途や好み、立地、タイミングなどによっていろいろなカフェや喫茶店を利用されている方がいると思いますが、スターバックスとドトールを例に価値観について考えてみましょう。

スターバックスとドトールの客観的かつ、明確な違いは、価格帯です。
スターバックスのコーヒー1杯の最低価格が350円(ドリップコーヒー、ショートサイズ)なのに対して、ドトールのブレンド、Sサイズは224円。スターバックスで話題になっている限定のフラペチーノを頼めば、飲み物だけでだいたい600円台後半の出費になります。

経済的な尺度でいえば、ドトールの圧勝。コスパも、最近話題のタイパ(タイムパフォーマンス)もドトールに軍配が上がります。それでもスターバックスの人気は衰えることはありません。

これは、スターバックスが価格帯という経済的な尺度ではなく、店舗の内装やホスピタリティも含めた精神的な尺度で顧客の支持を得ていること、来店する人たちが、「コーヒー1杯」という物質的な価値ではなく、「スターバックスに滞在する時間の豊かさ」という非物質的な価値を求めていることを端的にあらわしていると思います。

新たな豊かさの象徴「サードプレイス」

アメリカ・シアトル発のコーヒーチェーンであるスターバックスは、自宅、職場や学校に続くサードプレイス(三番目の居場所)というコンセプトを掲げて、世界の飲食業界に新たな旋風を巻き起こした企業です。つまり、スターバックスの売り物は、創業当初からコーヒーではなく、コーヒーを片手に過ごす上質な時間であり、くつろげる居場所だったのです。

近年のスターバックス、特に日本では回転数を重視したり、長居する客の対策に追われたりして「サードプレイス」の概念が薄れてきている、コロナ禍への対応も含めて方向転換を迫られるとの指摘もあります。

しかし、スターバックスがこれだけ受け入れられ、立ち寄り先としては圧倒的にカジュアルでコスパのいいドトールを凌駕している。このことから、日本でも顧客のマインドが物資的価値から非物質的価値経済的な尺度から精神的な尺度にシフトしていることがわかります。

これはどちらがいい悪いということではなく、同じコーヒーチェーンでもスターバックスとドトールでは、売っているものがそもそも違う、スターバックスの提供する価値が多くの人(むしろ多数派)に受け入れられているということに興味深さがあります。

時間と体験を売るスターバックスの「サードプレイス」のコンセプトは、経営者として見逃せないものだと思います。

価格当たりの性能差を「気にさせない」「購入動機にしない」テスラの先進性

バリュエンスとしては、ドトール的な価値観の追求から、スターバックス的な価値観への移行をますます進めていきたい。そうしていかなければ、価格や機能をめぐる競争に巻き込まれ、疲弊する未来しかないという危機感を持っています。

同じようにこの価値観軸の話でよく例に挙げて比較するのが、日本が世界に誇る自動車メーカーであるトヨタ自動車と電気自動車(EV)時代の旗手として台頭してきたイーロン・マスク率いるテスラです。

グループ全体(ダイハツ工業、日野自動車などを含む)の販売台数は、2位のフォルクワーゲンに大きく差をつけて世界1位。STARTUP DBによる世界の全企業の時価総額ランキングでも日本企業としてトップの31位を誇るトヨタですが、2003年創業の新興勢力、テスラは時価総額でトヨタを大きく上回り、世界6位にランクされています。

トヨタのハイブリッド車、プリウスは世界的にも有名な機種で、走行可能距離や車両本体のコスパは群を抜いています。

一方のテスラは、EVの先進性やその加速力に魅力を感じる人も多いと聞きますが、プリウスと比較して割高といわざるを得ません。

トヨタは、「トヨタ式カイゼン」が製造現場で世界共通語になったように、ムダや無理をなくすことで高品質な車体をできる限り低価格で提供することでライバルに差をつけてきました。

しかし、テスラはこうした競争に参加せず、EV一本でコンセプチュアルな車体を提供。環境負荷も含め「新しい」「イケてる」空気をまとったブランディングで価格当たりの性能ではない価値を生み出したのです。

ハリウッドセレブが、こぞってプリウスに乗るという時期がありました。排ガスを撒き散らす定番高級車よりもプリウスを選ぶことで、環境に配慮している、時代に先んじて新しい価値観を示しているというイメージを得られるというのが主な理由だったようですが、これも完全にEV、テスラに取って代わられています。

コーヒーチェーンで起きた、時間をつぶすという考え方から快適な時間を過ごすというシフトチェンジ、エネルギー構造の大変革時代に自動車業界で起きた価値観の変化。そのどちらも、目に見えるものから目に見えないものへ価値の重さが移っている象徴のような気がするのです。

「モノそのものの価値」という概念をハックする長坂真護のアート

もう一つ例を挙げましょう。個人的にも懇意にしていてこのnoteにも度々登場しているアーティスト・MAGOこと長坂真護くんの、アートが売れる理由。ここにもスターバックスやテスラと通じる価値観のシフトが大きく関係しています。

おそらくMAGOくんより優れた技巧を持った画家や、造形芸術家は世界中にたくさんいるでしょう。しかし、日本とは「遠いところ」にあるガーナに単身渡り、世界中の電子ゴミが集まるアグボグブロシーに流れ着いた「かつて機能的で価値があるとみなされていたもの=現在は無価値どころか有害なゴミ」を使ってアートにするというコンセプチュアルな作品を生み出せるの唯一無二の存在として自身の価値をも高めているのです。

先日、上野の森美術館で、「長坂真護展 Still A “BLACK” STAR Supported by なんぼや」を開催しましたが、こちらでも反響はやはりただのアート展、展覧会のものとは異質で、社会問題解決への共感、物質主義、従来の資本主義の限界などなど、作品を通じて物事の本質を知るきっかけを提供しています。当然MAGOくんが生み出す価値に共感した人は、彼と作品、その裏にあるストーリーや社会問題解決への貢献に対価を支払います。この影響力はもう、いちアーティストの枠組みを超えていると改めて感じています。

では、私たちはどうやってモノを買い取り、売っていくのか?

翻って私たちバリュエンスは、どの領域にいるのか?
不要なものをお金と交換するというリユース業界の仕組みは、表面的に見れば経済的価値偏重を加速させ、大量消費社会の片棒を担いでいると言われてもおかしくないビジネスモデルです。

しかし、リユースの本質を見れば、それまで価値とみなされていなかったものに価値を与え、必要な人へと橋渡しをするという、スターバックスやドトール、長坂真護が起こしている価値観のパラダイムシフトのモデルそのものの構造をもとから持っているのです。

買い取り価格の納得感の追求は当然です。ただここで競争を始めてしまうと、競合他社とのたたき合い、リユース業界という狭い枠組み「コップの中の嵐」に終始してしまいます。

なんぼや急成長の要因である、立地やアクセスも含めた接客、接遇、おもてなしも、経済的価値から精神的価値への移行を促すという意味では先進的でしたが、これもすでにそうであるように追随されて、いずれこれを巡る競争に巻き込まれてしまうでしょう。

私たちがすべきことは、顧客自身も気づいていない社会課題、需要を可視化し、それを解決するお手伝いをすること。ヴィンテージ・ブランドショップ「ALLU(アリュー)」ですでに始めているLCA(ライフサイクルアセスメント)を用いた環境負荷の可視化もその一つの試みですし、ステータスや物欲を満たすための消費を促進するのではなく「必要なものを必要な人へ」バトンをつなぐリユースの本質をあらわす、これまでの価値観からしたら自己矛盾と感じるような変化をつづけていかなければいけないと感じています。

社員総会で伝えたかったのは、私たちのパーパス、ミッションの真意を改めて考えてみてほしいということでした。パーパスやミッションは、大きな目標や夢みたいなお題目として掲げているのではなく、日々の業務や私たちが行うすべてのビジネスに具体的につながっているものなのです。

モノを買い取って、モノを売る私たちが、モノに執着しない、物質的、経済的豊かさだけを追求する価値観を手放すお手伝いをするためにどうしたらいいか?

大きく変化する「大切なこと」にフォーカスして生きる人を増やすことこそが、これからのバリュエンスホールディングス、そしてメンバー一人ひとりが担う使命です。

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