AI時代こそ、「完璧な言葉」はときどき温度を失う。
SNSで誰かが新しい講座やイベントを告知すると、コメント欄によく見かける言葉があります。
「必要な方に届きますように✨」
きっとあなたも、一度は見たことがありますよね。
もちろん、悪気なんてまったくありません。
むしろ応援の気持ちで書いている。
でも実は…。
私はこの言葉を見るたびに、
心のどこかで小さな違和感を抱いていました。
そう、
「この応援、本当に相手に届いているのかな?」
という疑問です。
塩見智子の「伝わる声と話し方のひみつnote」へようこそ!
アナウンサー歴46年の私が、「あなたの言葉がもっと届く」ヒントをお届けします。
「必要な方に届きますように✨」
この言葉に、
「えっ、応援コメントなのに?
何が違和感なの?」
そう思われたかもしれません。
実は私自身も、
長い間その理由がわかりませんでした。
私のコンテンツやセミナーを
Xでお知らせしたときも、
「せっかく応援してくださっているのに、
素直に喜べないなんて、私の心が狭いのかな…」
そんなふうに思ったこともあります。
でも、毎日「言葉」を仕事にしてきたからこそ、
ある日、その正体に気づいたんです。
「完璧な言葉」は、ときどき温度を失う
「必要な方に届きますように」
この言葉は、本当に美しい言葉です。
誰も傷つけない。
誰にも失礼にならない。
100人いたら100人が
「いいコメントですね」と言うかもしれません。
だからこそ、私は思いました。
これは100点満点のテンプレート
なのかもしれない、と。
テンプレートは便利です。
でも、
ときどき感情まで整えすぎてしまいます。
まるで、食品サンプルのように。
見た目は本当においしそう。
誰が見ても完璧です。
でも、
湯気もない。
香りもない。
作った人のぬくもりも伝わってこない。
言葉も同じで、
あまりにも整いすぎると、
「その人」が見えなくなって
しまうことがあります。
主語が消えると、人も消える
この言葉には、「私」が出てきません。
その人自身が見えないんです。
すると、不思議なことが起こります。
言葉は正しいのに、
少しだけ温度が下がる。
どこか、神様にお願いしているような、
少し遠くから見守っているような
印象になるんですね。
新人ナレーターも同じでした
弊社の新人ナレーターのナレーションを
指導していると、
こんな場面があります。
技術は完璧。
イントネーションも
アクセントも合っています。
でも…
心が動かない。
そんなことがあるんです。
理由はとてもシンプル。
正しく読むことに集中しすぎて、
誰に届けたいのかが
声から消えてしまうから。
声も言葉も同じなんですね。
ビジネスや日常でも、同じことが起こっています。
たとえば、ビジネスの場面。
お客様へ
「ご検討いただければ幸いです。」
もちろん間違いではありません。
でも、
「私は、この商品が
お役に立てると思っています。」
この「私は」の一言があるだけで
伝わる温度はまったく変わります。
家庭でも同じです。
「気をつけてね。」
も、あたたかい言葉掛けですが、
「私は心配だから、気をつけて帰ってきてね。」
のほうが、ぐっと気持ちが伝わる。
「私」がいる。
それだけで、言葉は急に人間らしくなるんです。
AI時代だからこそ、大事になること
最近はAIが、
とても上手な文章を
作ってくれます。
実際、
「必要な方に届きますように」は、
AIがよく提案する定番フレーズだと
感じます。
だからこそ、人にしか出せない価値があります。
それは、
「私はこう思った。」
という、その人だけの体温です。
少しくらい不器用でもいい。
少しくらい言葉が整っていなくてもいい。
その人らしさが見える言葉は
なぜか心に残ります。
もし、大好きな人が何かを始めたなら、
「必要な方に届きますように。」
だけではなく、
「私は今回は行けないけれど、
本当に応援しています。」
「公開されるのを楽しみにしていました!」
そんな一言を添えてみませんか。
きっと、
その応援は
何倍もあたたかく届くはずです。
言葉は
正しさだけでは
人の心を動かせません。
少しの「私」を添えるだけで、
言葉にはちゃんと体温が宿ります。
ということで、
今回は
「その応援、本当に届いてる?」
でした。
また次回、あなたに“言葉の贈りもの”を届けますね。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
あなたの声とトークで、もっともっと人の心を動かせますように。
楽しい言葉の旅を、ご一緒に続けましょう🌈
トータルスピーチコンサルタント
塩見智子

「VSP」メソッドとは、人に伝わりきるための3つの要素
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