物語<抒情性
私も還暦すぎて5年。時間は加速しますね。特に四十歳からここまでは光の速さでした。シャネーの法則というやつかな?
それはさておき、歳のせいか、それとも元々そうだったのか、自分ではわからないのですが、ここ数年読む小説でいいなあと思った小説には共通点があります。それは
物語<抒情性
驚き<静けさ
例えば、去年読んだ小説では、リャマサーレスの「黄色い雨」がベストワンでした。限界集落(というか消滅集落)を美しい筆致で描いた作品ですが、そこには物語と言えるものは無きに等しく、ひたすら儚く詩情に満ちた文章に心を打たれます。実際に存在した村なので人によっては、日本でも起きている限界集落という社会問題と結びつけて考えるかもしれませんが、私はそんな気はさらさらしません。ひたすら静かに流れる時間に心地よさを見いだすだけです。
また、今年読んだ本ではフォッセの「朝と夕」も似たような感じで極めて静かに淡々と生と死だけを描いた作品で、リャマサーレスほど文章の美しさは感じませんでしたが叙情性が心にしみました。
かつては、ポオの幻想小説や罪と罰、レミゼラブルなどの壮大な物語、SFのジャンルでいえば日本沈没やウルフガイなど、波瀾万丈の小説を楽しんだものです。もちろん、当時から芥川の作品で一番好きな作品は?と聞かれたら「歯車」か「蜃気楼」と答えていたし、谷崎との論争においては芥川を支持していましたので、必ずしも物語性は重要ではなかったのでしょう。でも、そういいながらも物語は好きでした。ミステリは苦手ですが、筒井康隆の本はほとんど読んでいますし、小林泰三のホラーも好きでした。
しかしここのところ、起伏のある物語よりも静かな抒情性への嗜好が特に強まったように思います。今月はクレジオの「黄金の魚」やヴェーソスの「氷の城」を読んだのですが、圧倒的に「氷の城」が気に入りました。もちろん後者にもしっかりとした物語があります。しかし、惹かれたのは物語そのものよりもその語り口のほうです。物語そのものは対した話ではありませんしね。一方「黄金の魚」のほうは起伏の激しい物語でした。悪くはありませんが、抒情性はほぼ皆無です。
さてこの傾向が強まったのは歳のせい?
うん、たぶん歳のせいでしょう。。。
なんかよくわからない話ですみません(笑)
