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アルカイック/Grapevine #読むバイン vol.75

 『Circulat∞r』の発売された2001年という年は、僕の父が膵臓癌で命を落とした年でもあった。44歳だった。
 僕はその年大学生となり、一人暮らしを始めていたが、父が入院していた大学病院は同じ福岡市内にあった。だから父の見舞いに行くことは全く大変なことではなかった。少なくとも、物理的には。ただ文庫本をめくったり、CDウォークマンでGrapevineを聴いたりして西鉄バスに揺られていればよかった。それは退屈な日常にさえ思えた。その日々の最中にいる時には。
 でも、会うたびに父は確実に痩せほそり、理性を失い、生きる者から死んでいく者へと変容し続けていた。まるで窓辺に置いた果物が、誰にも手をつけられることがないまま傷んでいってしまうように。
 8月2日にGrapevineは4枚目のフルアルバム『Circulat∞r』を発売し、8月16日に父は死んだ。その間がたった2週間しかないからか、父の見舞いをしていたあの夏の西鉄バスの車窓と『Circulat∞r』の楽曲は、あまり結びつかない。同じ年の2月に発売されたくるりの『TEAM ROCK』の方が、あの大学生活の最初の3ヶ月により結びついているかもしれない。『Circulat∞r』というアルバムは、むしろ父が死んだ後の、やけに心ががらんとした、うつろな晩夏がよく現像されている。

理由は尽きるさ 君がいれば 君がいれば

『アルカイック』田中和将/Grapevine

 実家の、僕と母が二人で過ごすにはちょっと広すぎる1階のLDK。そこで脱力してソファに横になっている母。どちらかと言えば、Grapevineがあまり好みではない偏屈な母。だけど、この『アルカイック』だけは、その田中和将の歌う単純なリフレインを聴き流しながら、静かに泣いていたのを覚えている。

理由は尽きるさ 君がいれば 君がくれた
理由はいいさ 理由はいいさ

 25年前の母。それはもうアルカイック遠い昔といっていいだろう。母は、43歳だったんだな。今の僕と同じだ。(嘘だろ) 僕は当時19歳。誕生日を迎えたばかりだった。2026年7月の終わり、あとほんの数日もすればまたバカみたいに律儀に誕生日が来て、僕は44歳になる。父が死んだ歳だ。(マジか)

日々の涙を 日々が優しく笑い 時には歌を 意味のない歌を 風が奏でるんです

 僕らは意味のない物語を生きている。意味のない風サーキュレイターが心をくすぐって、何故だか涙が出る。そんなことを、最近気付いた気でいたよ。なんのことはない。遥かアルカイック古代からGrapevineはそのことを歌っていて、僕は感じ入っていたのだ。やれやれ。ねえファザー、マザー、ザ・ガール。

日々に讃美歌を

 誰がくれたんだっけ? 一体、なんでくれたんだっけ?

https://www.uta-net.com/song/20180/


【著作権について】
 本記事では、日本のロックバンドGrapevineの音楽、主にその歌詞を考察していきます。Grapevineは、歌詞については、ギターとボーカルを担当する田中和将氏が書いています。そのため、歌詞の一切については著作権者は田中和将氏にあるものと考えております。ただ、日本の著作権法には以下のような一文があります。

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

 本記事は、公表された著作物について、引用して批評・研究しようとするものであり、著作権者の権利を侵害するものではないと考えています。また、その意思はありません。万一、引用の仕方や分量について、著作権を侵害するような部分があると感じられた場合、ご指摘いただければ改善に努めます。
 なお、本記事の文につきましては、先に述べました著作者Grapevine及び田中和将氏の権利を害さない限り、転用して構いません。その際、ご一報頂けると嬉しく思います。


#Grapevine #Circulator #アルカイック #44歳 #父の記憶 #母の記憶 #ファッキンマイバースデープレゼント

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