Discord/grapevine #読むバイン vol.68
Grapevine 2026 spring tour at LINE CUBE SHIBUYAに参戦してから5日。余韻はまだ冷めやらない。かねがね告知されている通り8月からは『Circulat∞r』のリビジットツアーが開かれる。嬉しい。細々とGrapevineのが曲について書い続けておりますが、ちょうどGrapevine4枚目のアルバム『Circulat∞r』についてああだこうだと書いておりますので、まあそんな聴き方もあるんかと、楽しんでいただければ幸いです。
では、『Discord』。
Grapevine、10作目のシングルである。この時、当時は一時的であるにせよ、バンドのリーダーであり発起人の西原誠がジストニアの治療に専念するために一時離脱、3人体制として初の楽曲でもあった。AIによると、この曲は5/4拍子でありボーカルの田中和将とリードギターの西川弘剛のツインギターが調和と不調和を……、まあそういうことらしい。そうそう、『Discord』とは和訳すると【不協和音】のことである。
そう考えると、Grapevineはずっと不協和音を鳴らしてきたバンドである。分かりやすいメジャーコードのアガる曲を避けて、驚きと、混乱と、錯綜を聴くものに与えてきた。甘いスイーツよりは、苦渋を。それがGrapevineだ。
リーダーの脱退、バンドの再出発。そんな決意が、この『discord』には見える。俺たちはこれで行くという宣言であり、そしてメインストリームへとしっかりと突き立てた中指である。
裏切れ 世界を 手に入る程度の明日を売れ
裏切れ 世界を 信じないもんね この道の上
それが正解なんです
Grapevine、そして田中和将は、ただ天邪鬼な訳ではない。違う。世界の誰よりも誠実なのだ。それがGrapevineと田中和将の最大の美点だ。聞こえのいい美辞麗句は嘘だ。人間はそれほど正しくないし、世界はそれほど道理的でない。全てが善な訳でもなく、全てが悪な訳でもない。全てが無軌道な訳でもなく、全てが整っている訳でもない。この世はdiscord。当たり前だ。けれど多くのJロックはそのことを省いていきた。言うまでもなくなく、その方が売れたからだ。今では様相が少し違うにせよ、『discord』がリリースされた当時2001年は、分かりやすいことが正義だった。CDは毎週のようにミリオンセラーが生まれる時代だった。人は分かりやすいことが好きだ。安心できるし、考えなくていい、だから楽だ。
本当を求めることは、いつだってハードで、タフで、何よりも殆どの場合徒労に終わる。本当を求めない人々の中で、本当を声高に叫ぶことは、甚だ迷惑で、鬱陶しい。だからガリレオは殺された。けれどそれは何よりも誠実で、気高いことだ。僕はそう思う。だからバインを聴く。
何もかも嫌になることがある。この世界の不誠実さについていけなくなったり、人々の欺瞞に顔を背けたくなることがある。嘘を付いていれば楽だ。騙されてしまえば生きやすい。いじめっ子の周りには、いつもへつらい顔の取り巻きがいる。彼らのように生きる方が、人類は、本当は楽に生きられるのではないか。いじめに立ち向かうバカな正義漢よりも。
この曲は、言っていることとしては
世界中が敵だと感じたなら
選ばれたってことさ
呆れるほど独創的なプレイスタイルで
今ひっくり返しちまえ
という2023年の『Ub(You bet on it)』にとても近い。これはこの不合理な世界の中で、生きにくい人々への応援歌だ。それでいい。間違ってない、と。
振り切れ世界を 目の前の迷路にケツを振れ
裏切れるだろ いってしまえよ あの未知のウェイ
それが正解なんです
バカでいいじゃないか。世界に馴染めないこと、それが正解なんです。
【著作権について】
本記事では、日本のロックバンドGrapevineの音楽、主にその歌詞を考察していきます。Grapevineは、歌詞については、ギターとボーカルを担当する田中和将氏が書いています。そのため、歌詞の一切については著作権者は田中和将氏にあるものと考えております。ただ、日本の著作権法には以下のような一文があります。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)
本記事は、公表された著作物について、引用して批評・研究しようとするものであり、著作権者の権利を侵害するものではないと考えています。また、その意思はありません。万一、引用の仕方や分量について、著作権を侵害するような部分があると感じられた場合、ご指摘いただければ改善に努めます。
なお、本記事の文につきましては、先に述べました著作者Grapevine及び田中和将氏の権利を害さない限り、転用して構いません。その際、ご一報頂けると嬉しく思います。
