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風待ち/Grapevine #読むバイン vol.69

 まるで夏のような陽気だった本日2026年5月13日(水)。東京は突如ゲリラ豪雨に襲われて、 XとYouTube上で、「風待ち from GRAPEVINE LIVE 2001 "NAKED FILM" and More」が配信された。間も無く限定発売される2001年の"Whitewood Tour" のライブDVD デジタルレストア版から、『Circulat∞r』、そしてGrapevineの代表作である『風待ち』が先行公開された形だ。

 若い。

というのが、一見の感想だろう。なんせ25年前だ。蘇るあの日の感傷。そして気付かされる。僕らもまた若かったのだ。

季節はずれの雨が好きな あなたに悪いけど
晴れたの日の空の下で わりとうまくやれてる

たまに会う友達は 昔の話ばかり
あの頃見てたもの あれもこれも遠すぎて

みんな知らぬ前に時を過ごしたのかなぁ
思い描いたとおり? ちょっと違う
今 夏の香りがしました 涙が出なかったのは それのせいかなあ

『風待ち』田中和将/Grapevine

 若かりし田中和将。そして匂い立つような2001年夏の雰囲気。ひどく奇妙なのは、そこで歌われている感傷が、まさに今日の東京の、久しぶりに仕事が早く終わって明るい空の下の住宅街を歩いて帰る、僕自身のものであるように聴こえてくることだ。なんで2001年の田中和将に、2026年の僕の気持ちが歌えるのだろう。この、余りにも不思議でありながら、余りにも馴染み深い魔法こそが、名曲の名曲たる所以なのだろう。きっと僕が還暦になるような五月晴れの日にでも、或いはもうほとんどの記憶さえ失われしまった老衰の最後に日にさえ、この魔法はまた蘇る気がする。

 −−なぜ僕のこの今の気持ちを、2001年27歳の田中和将は歌えるだろう?

目指すのもののカタチは 少しずつ変わってく
まわりが思うほど じつはそんな器用じゃない

あれ いつの間にこんなに疲れたのかなぁ
まだいけるつもり ちょっとはつらい

また花は咲き 枯れました
たまにはあなたの顔 見れないもんかなあ

街の色に染まって ときに何も思い出せなくて
今ここに何が足りないのか わかってない わかっちゃいない

 気のせい。

というのが、この『風待ち』という曲の本質なのだろうと思う。

みんな知らぬまに 時を過ごしたのかなあ
思い描いた通り? だったかなあ

また夏の感じがしました
明日も晴れだったなら
会いに行こうかな

 けれど気のせいと知りつつも、「わたし」は風を待っている。「あなた」に会いに行きたくて。

風のせいかなあ

と、知らばっくれつつ。結局のところ、僕らの寄る辺ない心は、いつも頼るべき何かを探しているのだ。言い訳を、夏の香りがする風を、いつも幾つになっても待ち続けているのだ。

 「大人」になると、もっと何も感じないんだと思っていたよ。でも、そんなことはない。涙が出なかったのは、何も感じなかったからじゃない。風が吹いたからでもない。じゃあ、一体何のせいなのだろう。

【著作権について】
 本記事では、日本のロックバンドGrapevineの音楽、主にその歌詞を考察していきます。Grapevineは、歌詞については、ギターとボーカルを担当する田中和将氏が書いています。そのため、歌詞の一切については著作権者は田中和将氏にあるものと考えております。ただ、日本の著作権法には以下のような一文があります。

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)

 本記事は、公表された著作物について、引用して批評・研究しようとするものであり、著作権者の権利を侵害するものではないと考えています。また、その意思はありません。万一、引用の仕方や分量について、著作権を侵害するような部分があると感じられた場合、ご指摘いただければ改善に努めます。
 なお、本記事の文につきましては、先に述べました著作者Grapevine及び田中和将氏の権利を害さない限り、転用して構いません。その際、ご一報頂けると嬉しく思います。


#Grapevine #Circulator #風待ち #魔法

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