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僅かな差が結果を決める構造 ― ウィニングエッジ理論 #85

実力が拮抗した状況下では、その多くの勝敗は、大きな実力差ではなく、わずかな差で決まります。
そしてその僅差は偶然ではなく、日々の判断・行動・基準設定の積み重ねによって生まれます。

つまり成果とは、「どれだけ優れているか」ではなく、どれだけ僅差を積み上げたかの結果です。
ここで重要なのは、結果の差は直線的ではないという点です。
僅かな差が、最終的に大きな成果差へと増幅されます。

■ なぜウィニングエッジが生まれるのか

そのような「僅かな差」によって、勝敗や成果分ける考え方を「ウィニングエッジ理論」といいます。

競馬のレースで、1位と2位の差が、鼻の差の僅かであったとしても、その賞金の金額は10倍も20倍も違ってきます。

この構造は本質的に重要です。
* 僅差は結果ではなく“格差”を生む
* わずかな優位性が報酬を独占する
* 勝者と敗者の差は比例しない

ここから、事象としては大きな差がなくても、結果は大きな差を招くという意味となります。

ウィニングエッジは偶然ではなく、構造的に生まれます。
その源泉は次の4つに分解できます。

① 判断基準の差
同じ状況でも、どの水準を「良し」とするかで結果が変わる。

② 妥協ラインの差
どこで満足するかが、積み上がる成果を決める。

③ 行動量の差
僅かな実行回数の差が、長期では大きな差になる。

④ 継続性の差
続けるかやめるかが、最終的な分岐点になる。

この4つはいずれも小さな差ですが、積み重なることで最終結果を大きく分けます。

■ スポーツにおける“同じ結果の意味の違い”

オリンピックでは、同じ銅メダルでも評価は大きく異なります。

ある選手は達成として受け止めます。
一方で別の選手は、同じ銅メダルでも悔しさを抱えます。

この差は能力ではなく、どの水準を目標としていたかという基準差です。
結果そのものよりも、基準が体験の意味を決めています。

また、スポーツでは「1点差なら惜しい」という表現がよく使われます。
しかし記録としては、1点差でも敗北は敗北です。
ここで重要なのは、内容評価と結果評価を混同しないことです。
ウィニングエッジの視点では、見るべきなのは感情ではなく構造的な差分です。

■ 僅差を設計するのが目標設定である

100点満点のテストで80点を目標にすると、思考は80点で止まりやすくなります。

一方で100点を目標にすると、結果として80点以上に到達する可能性が高まります。

これは能力ではなく、
思考と行動の上限設定の違いです。

目標は結果ではなく、行動の質を規定します。

ここで重要なのは、目標設定の役割です。

目標は単なるゴールではなく、次を決めます。

* 行動の基準
* 妥協の許容範囲
* 思考の深さ
* 継続の強度

つまり目標とは、ウィニングエッジを生み出す設計装置です。

この構造を実務的に説明する概念が現実的な目標を設定するのではなく、敢えて高い目標を設定するという「ストレッチゴール」の考え方です。

■ 現実的な目標の方が合理的ではないか

これは、確実に目標を達成させるために、実際の目標よりも高く設定することで、行動基準そのものを引き上げる考え方です。
バッファマネジメントともいえるかと思います。

重要なのは次の2点です。
* 非現実的な目標は機能しない
* 継続できなければ意味がない

成功者に共通するのは能力ではなく、やめなかったという事実です。
過度に高い目標は挫折を生む可能性があります。

しかし本質は「高さ」ではなく、次の違いです。
* 行動を引き上げる目標
* 行動を止める目標
合理性は達成率ではなく、最終的な結果水準で評価されるべきものです。

それだけに、ウィニングエッジを実務に落とす場合、目標は二層構造で設計されます。
* 最低達成ライン(守る基準)
* 勝ちライン(競争に勝つ基準)
この構造により、現実性と挑戦性を両立できます。

■ 勝敗は僅差の設計で決まる

さらに重要なのは、結果ではなく、行動水準がどこまで引き上がったかです。
ウィニングエッジとは才能の話ではありません。

それは、日々の僅かな判断・基準・行動の差です。
その僅かな差の積み重ねが、最終的に大きな結果差として増幅される構造です。

そしてその差は偶然ではなく、設計できます。
僅かな違いが、すべてを分ける。
その前提に立ったとき、目標設定も行動も変わってくるはずです。






将来の望ましい状態を実現するために目標を掲げます。
目標とは、決して、漠然と取り組んでいては実現させることはできません。
また、実現させようと努力したところで、実現が保証されているものでもありません。
それだけに、如何にして、実現の可能性を高めた取り組みをするのかもマネジメントでは重要となります。

オリンピックのマラソン競技で、銅メダルを獲得して絶賛され喜びの涙を流した選手がいました。
そして、柔道競技では、準決勝で敗れ、銅メダルとなり罵声を浴び、悔し涙を流した選手がいました。
どちらも同じ銅メダルです。
しかし、目指すもの、期待されるものによって評価は大きく違ってきます。

あるセミナーを受講した際に、その冒頭で、ウィニングエッジ理論という考えを教えていただきました。

競馬のレースで、1位と2位の差が、鼻の差の僅かであったとしても、その賞金の金額は10倍も20倍も違ってきます。
ここから、事象としては大きな差がなくても、結果は大きな差を招くという意味となります。

高い目標を掲げてしまうと、プレッシャーを感じてしまうので、妥協して低い目標を設定してしまう人がいます。
しかし、人は、妥協した目標を掲げると、努力も妥協してしまう傾向があります。
目標を、確実に達成するには、更に高い目標を掲げる必要があります。

例えば、100点満点のテストで、80点を取ることを目標に勉強した人は、理論上、100点を取ることはありません。
更に、80点を取ることを目標に勉強したからと言って、80点を取れる保証はありません。

しかし、100点の満点を取ることを目標として勉強した場合は、80点を取れる確率が高まるはずです。
結果的に、80点を目標とすることと、100点を目標とすることでは、大きな格差を生むことになります。

政府が歳出削減を目指して、2009年に実施した施策に事業仕分けがあり国民からも注目を浴びました。
その中で、次世代スーパーコンピューター開発費用について、文部科学省などの担当者らが「世界一を取ることで(国民に)夢を与えるのが、プロジェクトの目的の一つ」と説明しました。
対して、「仕分け人」であった国会議員が「世界一になる理由は何があるんでしょうか?」と聞いた後、「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言しました。

まず、この様な費用対効果を論じる場に、夢という感情的なものを目的として掲げてしまった担当者側も問題だったかもしれません。

実際、質問した国会議員は、当時を振り返り、「1位になればどんな研究ができるのか、国民のメリットは何か、2位になる不利益は何かと問う質問だった」と説明しています。

実際、この事業仕分けを契機に、従来の漠然と1位を目指すという主観的な考え方から、客観的な成果を追求する研究に繋がったとされています。実際、その後の後継機は、2020年に計算速度世界1位を獲得し、他の指標でも1位となり4冠に輝いたそうです。

更に、その後の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて飛散シミュレーションを高い汎用性と優れた計算速度から迅速に行い社会へ大きく貢献しています。

その意味でも、起爆剤となった、「2位ではダメなんですか?」はある意味、名言だったのかもしれません。

成長するためにも、決して妥協を許さないウィニングエッジ理論は、常に意識していたいと思います。

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