「守破離」上達の流れ 成長の過程 #12
どんなに外観が素晴らしい建物でも、基礎がいい加減であれば、いずれ歪みが生じ、最悪の場合は倒壊してしまいます。
建物における基礎とは、自重やさまざまな荷重を地盤へと伝え、建物全体を支える下部構造の総称です。
目には見えにくいけれど、最も重要な部分。それが基礎です。
このことから転じて、物事の土台となるものを私たちは「基礎」と呼びます。

「基本」とは何か
よく似た言葉に「基本」があります。
基本とは、物事を成り立たせる論理的な基軸。
そして、その基本を繰り返し積み重ねることで、揺るぎない「基礎」が築かれていくのだと私は考えています。
たとえば武道の世界。
初心者同士、あるいはまだ経験の浅い段階では、基本の習得度合いによる実力差は見えにくいものです。
多少のセンスや体格差、力の強さだけで勝ててしまうことも少なくありません。
「基本をやらなくても勝てる」
そう感じてしまえば、基本をおろそかにしてしまうのも、ある意味自然なことなのかもしれません。

基本を軽んじた先にあるもの
しかし、そこには大きな落とし穴があります。
基本の稽古は単純な動作の繰り返しで、決して派手でも面白いものでもないかもしれません。
けれど、算数で九九を覚えなければ複雑な計算が解けないように、基本を身につけなければ高いレベルに挑戦することはできません。
やがて、こうした差ははっきりと現れます。
以前は勝てていた相手に、気づけば勝てなくなる。
それは相手が成長したからでもありますが、それ以上に、自分が成長していなかったという現実であることも多いのです。
基本を積み重ねてきた人と、そうでない人。
その差は、時間が経つほどに大きく広がっていきます。
これは、ビジョナリーカンパニー2の「弾み車の概念」にも通じることだと思います。
守破離という成長の道筋
武道の世界には「守破離(しゅはり)」という言葉があります。
これは、千利休の
「規矩作法 守り尽くして破るとも 離るるとても本を忘るな」
という言葉に由来するとされています。
• 守(しゅ)
まずは教えられた基本を忠実に守り、徹底して身につける段階。
• 破(は)
身につけた基本をもとに、応用し、工夫を加えていく段階。
• 離(り)
基本と応用を土台に、自分独自の境地へと発展させる段階。
守があってこその破。
破があってこその離。
順番を飛ばして「離」に行くことはできません。

成長したいなら、まず足元から
何事も、目的や目標があるからこそ成長できます。
けれど、基本を学ばずに好き勝手に進んでしまえば、どこかで必ず成長は止まります。
経験が浅いのであれば、無理に背伸びをする必要はありません。
まずは先輩や指導者から教わる基本を、徹底的に身につけること。それが最短の近道です。
もちろん、時には手厳しい言葉を受けることもあるでしょう。
現代ではすぐに「ハラスメント」と捉えられてしまうこともあります。
当然、理不尽な言動が許されるわけではありません。
しかしその言葉の奥に、「成長してほしい」という願いが込められていることもあるのではないでしょうか。
そして同時に、先輩や指導する側もまた、後輩の姿を通して自らを省みるべきです。
基本を忘れていないか。
初心を見失っていないか。

見えない土台こそが、未来を支える
華やかな成果や目に見える実績は、人の目を引きます。
けれど、本当に人を支えているのは、誰にも見えない「基礎」です。
今日の地道な基本の積み重ねが、
数年後の揺るぎない土台になります。
遠回りに見えるその一歩こそが、
実は、最も確実な近道なのかもしれません。
