『玉葉集』「出でてのち」作者について、過去の発信の訂正
これまで私が西園寺実兼の歌として紹介してきた和歌の一部について、複数の本を確認した結果、洞院公守の歌である可能性が高いことがわかりました。
出でてのちまだ程も経ぬなかぞらに影しらみぬる短夜の月
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) June 26, 2026
入道前太政大臣
『玉葉集』の「入道前太政大臣」なので、これまで迷わず「西園寺実兼」詠として紹介してきたけれど、
「入道前太政大臣 公」という写本もあり、そちらのほうが正しく、「洞院公守」詠らしい。
訂正しなければ……。
『玉葉和歌集』には京極派歌人西園寺実兼の歌が多く入集しており、
それらは「入道前太政大臣」という名で入っています。
ところが、同じ『玉葉和歌集』に
・入道前太政大臣(西園寺実兼のこと)
・入道前太政大臣 公(洞院公守のこと)
という2名の作者のいることに気づき、
しかも、後者が写本によっては「入道前太政大臣」と、実兼と同じ名で入集していることがわかりました。
中世の和歌集などは写本によって表記の異なることがあり、作者名の記載にも違いの生じる場合があります。
例えば、「九条左大臣女」の詠であることが明らかである和歌について「九条左大臣」詠とする『玉葉集』の写本もあるようです。
その和歌集の校訂者がどの写本を主な下敷きとし、どの写本を参考資料とし、どの程度校訂するか、
は校訂者や出版社によって異なるため、市場に出回る本にも一定の異同が発生します。
私が最近多く参照している岩佐美代子『木々の心 花の心』『玉葉和歌集全注釈 上』などは、
「入道前太政大臣 公」の「公」の字を欠くことなく記載しているので、
後者が実兼と別人であることが明確にわかります。
いっぽう、
もともと長く参照してきた岩波文庫の次田香澄校訂『玉葉和歌集』には「公」の字が書かれていません。
さすがに、それを読んで「これは実兼ではなく公守だ」とまで見抜く目は、私にはありませんでした。
今回私の確認した範囲では、「入道前太政大臣 公」の写本のある歌は洞院公守詠とするのが穏当そうです。
「すると、過去に私が『実兼詠です』と紹介してきた『玉葉集』の和歌のうち、実は公守詠であったものもあったのではないか」
ということで、調べられるかぎり調べたり、削除したりしました。
出でて後まだ程もへぬ中空に影しらみぬるみじか夜の月
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) July 24, 2024
西園寺実兼。
出て間もない月がもう白み始め、夜が明けようとしている。
夏の短夜に惜しい月の美しさ。
×西園寺実兼
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) June 27, 2026
○洞院公守
「入道前太政大臣」のあとに小さく「公」と書いてある本に従うと、これは西園寺実兼ではなく洞院公守詠とのこと。
noteのほうも訂正しました。https://t.co/nNaQcqs5CH
InstagramやFacebookは検索機能が弱いので、調べきれず、もしかすると削除漏れがあるかもしれませんが、
リーチできるかぎりリーチして削除しました。
京極派スペースに至っては、さすがに音声なので、調べきれていません。
視聴者が少ないとはいえ、もし間違って紹介したものがあったら申し訳ないです。
また、現在訂正・削除済みのものであっても、
過去に「実兼詠」として「出でてのち」の歌を紹介した記事やポストを見て「そうなんだな」と思った方全員に「間違いでした」と伝えられるわけではないので、
現実的にこれ以上のことはできないのですが、この記事の公開によって、誤解の拡大が最小限でとどめられたら……と願っております。
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