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『南朝の真実――忠臣という幻想』覚え書き ~和歌の読書記録~


南朝信奉者に冷ややかな目を向けてしまう私としては心地よい読書でした。
もちろん、著者は北朝信奉者でもない。フェアな姿勢で書かれたものは読んでいて気持ちがよいです。




『南朝の真実――忠臣という幻想』覚え書き ~和歌の読書記録~

いつもご支援ありがとうございます。


小説やエッセイはともかく、こういう本は目次だけである程度、読むべき本かそうでもないかの判断が付きますよね。ある程度。


「私は時代や環境に影響されずに私個人の考えや個性を育んできた」という考え方は傲慢だし、人間理解として非常に浅い。
「私という個人」という概念自体が近代的なので、そのような自分理解・人間理解をしてしまうこともその人の文脈を考えると致し方ないのだが(入れ子構造)

無意識に受けてきた影響に自覚的であること、それ自体がそもそも困難なのだが、
「人間、どうやらそうらしい。私もそうなのだろう」ぐらいの認識は持つようにしていたい。


たしかに、歴史学がその方向に進んだのは、前時代の常識を考えると望ましいことなのだが、
その結果前時代の反省が不十分になり、前時代の影響を受けた大人たちが学会以外の一般社会で大きな声のまま生存している、と考えると……。


私は、
「持明院統の政治センスの弱さをそのとおり認識したとしても、京極派のすばらしさが毀損するわけではない」
と知っているので、持明院統や京極派の欠点や弱点にも言及できるけれど、

「自派や自分の推しの欠点や弱点を認めると、そのものの尊さが毀損される」
と考える人たちは
「尊さを毀損してはいけない→欠点や弱点も認めるわけにはいかない、なかったと言い張らねばならない」
という形で振る舞う。

なにとは言わないが、ある時期首相を務めた方のある発言は、「日本という国家に対する真の信頼や自信がないからこそ生まれたものである」と私は見ています。




こういう本は序章と目次だけである程度(略)


意外でした。



二度見しました。


「護良親王の母は北畠親子ちかこ」説、現在では疑問視されているようで、良かった。

国文学の、京極派研究の文脈で考えると、
あの結束の堅い京極派の、伏見院の子まで儲けた、自身優れた京極派歌人である北畠親子が、その後大覚寺統の後醍醐に寵愛されるということは、まずないと思う。

年齢的にもさすがに無理では?
伏見院と同年代と考えると、護良の誕生時に40代前半ということになるので。
絶対にないとは言わないが(例外は常にあるもの)、初産でないとはいえ中世日本で40代での出産というのは一般的とは言えないと思う。





ホモサピムーブ。



日本語むずかしい。





ホモサピムーブ。


司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読んでいた学生時代、右寄りの先輩に「いまの日本人の竜馬像、ほぼ司馬遼太郎だからなあ」と言われたのち、
左寄りの先輩に「だとしても、その人のなかに司馬遼太郎の竜馬が生きて、強く働き、その人生に影響するのなら、事実ではないとしても真実だと言える」と言われたのだが。

その右寄りの先輩の敬愛する楠木正成公は、いったいどこまで事実なのでしょうね。
彼の人生に大きな影響を与えている以上、真実であることは、上記のとおり否定できないでしょうが。


山田五郎のオトナの教養講座での圀府寺こうでら司先生のエピソードもあわせてお楽しみください。

圀府寺先生の感動したゴッホは、実はゴッホではなかったとあとからわかったけれど、「あの時の私の感動は本物だ」とご本人もおっしゃっているということ。
だからといってゴッホの贋作がゴッホ作品と見なされるわけではないということ。

この点をきちんと分けて、両方をきちんと見るようにしたい。


逆に、こうした研究を踏まえたうえで・・・・・・・南朝信奉者の皆様がどのように南朝を擁護するのか、聞いてみたい。
南朝信奉に都合の悪い研究を「でたらめだ」と言い張る人は論外として。


著者のフェアネスは後半に至ってもブレない。
建武政権についても、評価すべき点は評価していらっしゃる。


×政策に反対する者か
○政策に反対する者が


逆に、こうした研究を踏まえたうえで・・・・・・・(略)


しかし、史実で確定しているその結末に至るまでの、史実のわからないところに、漫画作者様の創造性が働いているはずなので、
史実でネタバレしたとしても問題……なし!
(それにしてもそこそこ重要なネタバレを受けてしまった。わーい)



京極派を勉強して持明院統皇族に詳しくなると、時々出てくる大覚寺統の皇太子や親王の名前に「仁」が入っていないことに気づいて「あ、そちらはそうなんだ」という気持ちになる。
持明院統では入っているのが当たり前なので。

康仁親王についてはたしかに、「仁」が入っていて持明院統みたいだなと思った記憶があるが、
なるほど、持明院統が大覚寺統嫡流の康仁を自派に取り込もうとした表れとして見ることもできるのか。



ですので、先に挙げた元首相さんの……。


以上です。ありがとうございました。

現代の政治と結びつけて語る箇所には少々留保したい気持ちがありましたが、全体をとおして気持ちのよい読書でした。
ご興味を抱かれた方は、ぜひ本文をお楽しみください。


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この記事を書いた人

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