令和7年隠岐後鳥羽院和歌大賞 「漁火」詠の出来るまで ~和歌の推敲記~
令和5年隠岐後鳥羽院和歌大賞にて古事記編纂1300年記念大賞を頂いたのちも、梶間和歌、大会の盛り上がりを祈念しつつ和歌大賞への応募を続けております。
(大賞関係の記事はこちらに連載しております)
このたび令和7年隠岐後鳥羽院和歌大賞に「漁火」題で応募、入選の報を頂きました。
掲載歌、投稿歌、その形に至るまでの推敲の様子などをこちらのnoteにて公開いたします。
和歌をお詠みになる方の参考や刺激としてはもちろん、
歌詠みさんでなくとも、いち歌人が歌を詠み、推敲する過程に触れてみたいという方はぜひお楽しみくださいませ。
「漁火《いさりび》」詠の出来るまで ~和歌の推敲記~
令和7年隠岐後鳥羽院和歌大賞入選歌
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影 梶間和歌
#隠岐後鳥羽院和歌大賞 、今年は入選でした。
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) November 3, 2025
ありがとうございました。
題詠和歌への正しい努力の仕方がようやく見えてきたなかで、少々意外な結果ではありましたが、
これからも弛むことなく惑うことなく、私の確信する和歌の美、及ばぬ高き姿を追い続けてまいります。
引き続き応援くださいませ。 https://t.co/WT6UajOzyY pic.twitter.com/VyykDzpJlq
おおまかな推敲過程
・題の発表とあわせて付された、冷泉貴実子先生の解説を読み込む
・定数和歌を中心に「漁火」の先例を読み込む
・「漁火」題で用いるべき語や歌枕、頻出する掛詞などを把握する
・完成度を気にせず歌を詠む、詠みまくる
・推敲と削除を繰り返す
第1段階
明けそめて薄き煙のなびく沖にはや影消ゆる海人の漁火
暮れにけり蘆屋の里に旅寝してむかしを思ふ漁火の影
ふけにけり沖つ波風いとまなみ見えかつ消ゆる夜半の漁火
須磨の浦や霞の間より漁火の光もうすき春のしののめ
漁火の煙ののこる有明の与謝の浦廻に千鳥鳴くなり
月ははや入りぬる夜半に冴え冴えて志賀の浦路に燃ゆる漁火
沖つ風時雨れもやする和歌の浦の影やや曇る海人の漁火
暮れかかる志賀の浦風吹き分けて霧の波間の漁火の影
蛍飛ぶ芦屋の浦に数見えて星に紛れぬ漁火の影
更けにけり志賀の浦風冴え冴えて月に迷はぬ漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
季節の制約もあまりないようです。
春には春らしい、夏には夏らしい漁火詠を詠もうと努めました。
第2段階
暮れにけり蘆屋の里に旅寝してむかしを思ふ漁火の影
月影の入りぬる夜半に冴え冴えて志賀の浦路に燃ゆる漁火
沖つ風時雨れもやする和歌の浦の影やや曇る海人の漁火
暮れかかる志賀の浦風吹き分けて霧の波間に漁火の影
蛍飛ぶ芦屋の浦に数見えて星に紛れぬ漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
「漁火の光もうすき……しののめ」だと漁火よりしののめにフォーカスしているように見える、
「月に迷はぬ漁火の影」は「迷はぬ」と言いつつも月の存在感が目立つ、
などと判断し、削ってゆきました。
聞こえますか……いまあなたの心に話し掛けています……締切までちょうど1ヶ月です……歌を、歌をいい加減絞り始めるのです……。#私な#隠岐後鳥羽院和歌大賞 https://t.co/jbDumC9Ywk
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) June 30, 2025
第3段階
暮れにけり蘆屋の里に旅寝してむかしを思ふ漁火の影
月影の入りぬる夜半に冴え冴えて志賀の浦路に燃ゆる漁火
沖つ風時雨れもやする和歌の浦の影やや曇る海人の漁火
暮れかかる志賀の浦風吹き分けて霧の波間に漁火の影
蛍飛ぶ芦屋の浦に数見えて星に紛れぬ漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
夕まぐれ芦屋の浦に風吹きて霧間にまよふ漁火の影
須磨の浦の海人のたく藻の燃えわびて煙にまよふ漁火の影
夜は更けぬ浦より沖を見わたせば島伝ひゆく漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋に仮寝して漁火うすき春のしののめ
蘆の屋の里よりをちを見わたせば蛍数添ふ夜半の漁火
絞れとつぶやいたこの日漁火詠が5首増えたのはなぜ。
— 梶間和歌@令和の京極派 (@WakaKajima) July 1, 2025
第4段階
暮れにけり蘆屋の里に旅寝してむかしを思ふ漁火の影
月影の入りぬる夜半に冴え冴えて志賀の浦路に燃ゆる漁火
沖つ風しぐれにけらし和歌の浦に影やや曇る海人の漁火
暮れかかる志賀の浦風吹き分けて霧の波間に漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
夕まぐれ芦屋の浦に風吹きて霧間にまよふ漁火の影
須磨の浦の海人のたく藻の燃えわびて煙にまよふ漁火の影
蘆の屋の里よりをちを見わたせばほたる数添ふ夜半の漁火
増やした5首を3首に絞りましたが、その前の5首は絞られない……。
第5段階
暮れにけり蘆屋の里に旅寝してむかしを思ふ漁火の影
月影の入りぬる夜半に冴え冴えて志賀の浦路に燃ゆる漁火
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
夕されば芦屋の浦に風立ちて霧間にまよふ漁火の影
須磨の浦の海人のたくなは燃えわびて煙にまよふ漁火の影
「海人のたく藻」を「海人のたくなは」とするなど、削りつつ微調整。
第6段階
暮れにけり蘆屋の里に旅寝してむかしを思ふ漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
夕されば芦屋の浦に風すぎて霧間にまよふ漁火の影
須磨の浦の海人のたくなは燃えわびて煙にまよふ漁火の影
ここまで来るとあとは「えいや」ですね。絞った結果がこちら。
令和7年隠岐後鳥羽院和歌大賞投稿歌
暮れにけり芦屋の里にかり寝してむかしを思ふ漁火の影
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影
地名であれば「蘆屋」より「芦屋」のほうがよいのでは、というChatGPTの助言を受け入れ、表記を微調整し、この2首を投稿しました。
前者は『伊勢物語』、後者は『源氏物語』や定家「花も紅葉も」を踏まえていますが、明確に「これを本歌・本説取りして云々」というより、これらの地名に染みついたイメージに自然に沿った形で詠んだという意味です。
もう一度、令和7年隠岐後鳥羽院和歌大賞入選歌
須磨の浦の海人の苫屋もうら寂びてふたつみつなる漁火の影 梶間和歌
和歌をお詠みになる方の参考になりましたら幸いです。

おまけ
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