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不倫相手の妻のインスタに、私は“いいね”を押し続けた

夜になると、彼からの連絡を待つのが日課になっていた。けれど既婚者の彼は、家に帰れば家族の時間を優先する。だから私はスマホを手にしながら、ただひたすら通知が鳴るのを待ち続ける。待つ時間が長ければ長いほど、心の奥に渦巻く孤独は深くなる。そんな時、私はなぜか彼の奥さんのインスタを開いてしまうのだ。そこには、私が決して触れることのできない“家庭”という世界が写っている。夕食の写真、子供との旅行、笑顔のツーショット。見るたびに胸が痛むのに、スクロールする手を止められない。

そして気づけば、私はその写真に“いいね”を押している。彼とつながる唯一の手がかりのように。まるでその行為が、彼と同じ世界に生きている証になるかのように。異常だと分かっている。彼の妻に対して優しさを見せるふりをしながら、実際には夫を奪おうとしているのだから。矛盾しているし、滑稽でもある。それでも私はやめられない。“いいね”を押すたびに、彼の既読を待つ自分の存在を正当化してしまう。

誰も知らない、もうひとつの家庭の影で、私は静かに彼を待っていた。

第1章 出会いの瞬間

彼との出会いは、ありふれたマッチングアプリだった。プロフィールを眺めているうちに、どこか安心感のある笑顔に惹かれた。最初は軽い会話から始まり、趣味や仕事の話で盛り上がった。まさか彼が既婚者だなんて思いもしなかった。けれど数回メッセージをやり取りし、実際に会う約束をしたあとで、彼の口から静かに打ち明けられた。

「実は結婚してる。でも、もう家庭は冷めきってるんだ」

その瞬間、胸の奥に冷たいものが走った。普通なら引くべき言葉。けれど私は、なぜか逃げられなかった。彼の声があまりにも落ち着いていて、誠実そうに聞こえたからだ。「妻とはうまくいっていない」「一緒にいる意味を感じない」と彼は言った。その言葉を信じることで、自分の罪悪感をかき消そうとした。

独身である私にとって、彼を好きになることは禁じられた感情だったはずだ。けれど、彼の視線に捕まった瞬間、自分の中で理性よりも欲望が勝ってしまった。誰かに求められることに飢えていた私は、彼の「君に会えてよかった」という一言に救われてしまった。

私は心のどこかで「二番目でもいい」と思ってしまった。
本当はそんなはずない。愛されたいなら、一番でなければ意味がない。だけど既婚者の彼に惹かれてしまった私は、その矛盾を抱えたまま恋に落ちた。

彼との出会いは偶然ではなく、運命だったと当時の私は信じていた。今振り返れば、ただの危険な入り口に過ぎなかったのに。

第2章 家庭という“壁”

彼と会えるのは平日の夜か、ほんの短い時間だけ。週末は必ず家族に戻る。私はひとりの部屋で彼の既読を待ちながら、スマホを開く。そして気づけば、彼の奥さんのインスタにたどり着いている。

そこには私が絶対に入れない世界があった。旅行の写真、子供と笑う彼、家族で囲む食卓。私はその写真をスクロールしながら、コンビニ弁当をひとりで食べていた。
彼の妻が投稿する“幸せ家族”の写真は、私にとって最大の屈辱であり、同時に唯一の現実確認でもあった。

「この笑顔は、私の知らない顔」
そう思うたびに、胸の奥が焼けるように痛んだ。奥さんの作る料理を彼が食べ、子供と並んで笑っている。その事実に嫉妬しながら、私は彼の妻の投稿に“いいね”を押していた。

まるで敵に手を差し伸べるような行為。それでもやめられなかった。なぜなら、その“いいね”の裏側には、彼のスマホにも通知が届くかもしれないという淡い期待があったからだ。「私がここにいる」ことを彼に気づかせたい一心で、妻の投稿を利用していた。

滑稽だと分かっている。彼を奪いたいはずなのに、私は奥さんのフォロワーのひとりとして存在している。妻のアカウントを開くたびに、嫉妬と依存が交互に押し寄せる。子供が写った写真にすら、私は嫉妬していた。彼が父親として笑う姿を見るのが耐えられなかった。

それでも私は毎回“いいね”を押した。罵倒されても仕方のない行為かもしれない。けれど、その瞬間だけは彼の家族の中に入り込めた気がした。家庭という厚い壁を越えることはできなくても、壁の向こうを覗き込み、その世界に指先だけを忍び込ませる。それが私にとっての愛の証明であり、同時に最大の狂気だった。

第3章 二番目でいいと言い聞かせる私

彼と過ごせるのは、ほんの数時間だけだった。平日の夜、彼が「残業」と嘘をついて私の部屋に来る。その短い時間のために、私は一日中そわそわしながら過ごす。ドアを開けて彼の姿を見た瞬間、全ての不安が消える。けれど、同時にその瞬間からカウントダウンが始まるのだ。数時間後には、彼は“家”に帰ってしまう。その現実を思うと、抱きしめられている最中ですら胸が痛んだ。

彼はよく言った。「君といると落ち着く」「本当はもっと一緒にいたい」。その言葉がどれだけ私を支えたか分からない。けれど同時に、私は知っていた。その言葉のあと、彼は妻の待つ家に帰るということを。

私は何度も自分に言い聞かせた。「二番目でもいい」と。彼が家庭を捨てられないのは当然。子供がいるのだから仕方ない。それでも彼が私を求めてくれるなら、それで十分だと自分をだました。そうやってしか、この関係を続けることはできなかった。

でも、夜中にスマホを開くと、全ての嘘が崩れていく。奥さんのインスタに並ぶ写真は、彼が「冷めきっている」と言った家庭が、むしろ温かさに満ちていることを突きつけた。旅行先での笑顔、誕生日ケーキを囲む家族、ささやかな食卓。それは、私が絶対に得られない場所だった。

スマホの光の中で、涙がにじんで画面が滲んだ。嫉妬と悔しさで呼吸が苦しくなる。彼が奥さんと子供の隣で笑っているその瞬間、私はひとりきりでコンビニ弁当を食べていた。「二番目でいい」と言い聞かせても、心は嘘を許さなかった。

それでも彼に会える日は、私は全てを忘れてしまう。彼の腕の中にいると、世界で一番愛されているように錯覚する。だからまた同じ言葉を心の中で繰り返す。「二番目でもいい」。でも本当は、誰よりも一番になりたかった。

「次に彼が笑う相手は、どうか私でありますように」
その願いは決して叶わないと知りながら、涙で濡れたスマホを握りしめ、奥さんの投稿にまた“いいね”を押していた。

第4章 抜け出せない理由

彼が家族に戻る時間になると、部屋の空気は一気に冷める。玄関のドアが閉まる音を聞くたびに、私の世界は闇に落ちていった。彼の足音が遠ざかるたび、私は自分の存在が消えていく気がした。私は、彼の生活にとって“いなくても困らない女”なのだと。

けれど、その事実を突きつけられるほど、私は彼を求めずにはいられなかった。連絡が来ない夜、私はスマホを何度も握りしめる。通知の音が鳴らないことに苛立ちながら、それでも彼を待ち続ける。まるで中毒のように。

奥さんのインスタに投稿が上がるたび、胸が締めつけられた。旅行先の夕景をバックに微笑む彼の横顔。子供の誕生日を祝う笑顔。私の知らない日常に、彼の全てが詰まっている。その現実を見せつけられるたびに、私は崩れていった。

「いっそ終わらせれば楽になれる」そう思ったこともあった。けれど次に彼からメッセージが届いた瞬間、全てが無に返る。「会いたい」の一言で、私はまた立ち上がってしまう。涙で枕を濡らした翌日に、笑顔で彼を迎える自分。それが惨めで、同時にどうしようもなく幸せだった。

彼と過ごす時間は、確かに幻だったのかもしれない。けれど、その幻こそが私にとって唯一の救いだった。彼と出会う前の私は、誰にも必要とされていないように感じていた。女としての自分を諦めていた。けれど彼の視線に捕まった瞬間、再び生きている実感を取り戻してしまったのだ。

だから私は、どんなに傷ついても彼を手放せなかった。家庭に戻る彼を憎む自分と、それでも愛してしまう自分が、心の中で激しくぶつかり合う。この矛盾が苦しくて、泣きながらも彼の既読を待ち続ける。

「次は私を一番にしてほしい」
その願いが叶わないことは、誰よりも私が知っている。けれど、それでも願わずにはいられなかった。彼の未来に私がいないと分かっていても、心は勝手に叫んでしまう。

そしてまた私は、奥さんの投稿に“いいね”を押す。矛盾と嫉妬と依存が絡み合い、そこにしか存在できない自分を証明するかのように。

夜明けまで押し続ける“いいね”

夜が深まっても、スマホの画面は沈黙したままだった。LINEの通知は鳴らず、既読もつかない。時計の針が進むたびに、胸の奥で何かが軋む音がする。私は息をするように彼の奥さんのインスタを開いた。

そこには、家族で囲む食卓の写真が投稿されていた。テーブルの真ん中には湯気を立てる鍋。彼が椀を持ち上げて笑っている姿が写っていた。画面を見つめるうちに、涙が止まらなくなった。私の知らない彼の笑顔が、そこにはあった。

私は震える指で“いいね”を押した。まるで儀式のように、涙で滲む画面に親指を当てた。敵に手を差し伸べるような、滑稽で哀しい行為。けれど、それが私にとって唯一の救いだった。彼の妻の世界に紛れ込むことでしか、彼とのつながりを確かめられなかった。

暗い部屋でひとり、私はスマホを胸に抱きしめた。外の世界はもう眠っているのに、私の心だけが眠れない。彼が妻の隣で眠る時間、私は“影”として存在していた。

窓の外に月が浮かんでいた。静かな光に照らされながら、私は心の中で必死に言い訳を探した。「二番目でもいい」「彼に必要とされるだけで幸せ」…けれど、その言葉がどれだけ虚しいものか、涙がすべて教えてくれた。

私は彼に愛されたいのではなく、彼の人生の中で“一番”になりたかった。
それが叶わないと分かっていても、どうしても諦められなかった。

画面を閉じても、また開いてしまう。既読はつかない。彼の妻の投稿だけが更新されていく。私はそのたびに“いいね”を押した。まるで自分の存在を証明するために。

夜明けが近づいていた。空が白み始める中、私は声を殺して泣いた。彼は家族と眠り、私は孤独とともに目を覚ます。それでも私は、また彼を待ち続けるのだろう。

それでも押してしまう“いいね”

それでも押してしまう“いいね”

好きだから続けてしまう。
時間も気持ちも注いできたから、途中でやめるなんてできない。
それがどれだけ苦しい結末に向かうとしても、人は簡単には手放せないものです。

もしあなたが同じように「やめられない恋」に迷い込んでいるなら、少し立ち止まって考えてみてください。
本当にその先に幸せはあるのか、それとも過去への執着があなたを縛っているだけなのか。

選ぶのは、あなた自身です。
けれど、気持ちを抱え込んだまま一人で苦しむ必要はありません。
あなたが声を出すだけで、今より楽になる道もきっとあります。

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◎監修アクア編集部

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