『マッチングアプリで、妹と同じ男を好きになった。』
35歳。
仕事は安定、見た目もそこそこ。でも“恋”だけは、いつも私のことを避けて通っていく。
だから、マッチングアプリで出会った彼が笑いながら「年上の女性が、昔から好きなんです」って言ったとき、私は久しぶりに、人として“肯定”された気がした。
「会いたいって、思ってた」
2回目のデートで彼がそう言ったとき、心の中で“もう誰にも渡したくない”と思った。
あのとき、私がその言葉を信じていなければ、
こんな地獄には落ちなかったのかもしれない。
妹は、5歳下の30歳。
美人で要領がよくて、母に似た“人たらし”。
私は、父親似。無表情で、何を考えているか分からないって言われる。
「お姉ちゃん、最近いい人できた?」
「……まぁね」
このやりとりをしたのが、彼と3回目のデートの直後だった。
運命が、私を殴りつけてきたのは、それからわずか2週間後。
妹のインスタに投稿されたストーリー。
うつむいて笑う彼の横顔。ピースする妹の手。
え? え、嘘でしょ?
スクショして、何度も拡大して見た。
タグには《#マッチングで出会った奇跡》《#運命ってあるんだね》と書かれていた。
私は、目の前が真っ白になるってこういうことかと思った。
震える手で彼にLINEを送る。
「今すぐ話せる? 大事なことだから」
返ってきたのは3時間後。
《ごめん、実は…ちょっと複雑な話なんだけど》
“ごめん”の時点で、全部終わってる。
私はすぐに電話した。
「……あの子が、妹って知ってた?」
彼は沈黙した。
息を飲んだ音が、スマホ越しに聞こえた。
「ごめん、気づいたのは付き合ってから。名前が一緒だったから……でも信じて。どっちも、本気じゃなかったわけじゃなくて──」
「ふざけないで」
思わず声が震えた。
「私たち、体の関係まであったよね? なのに、婚約? 妹と?」
「……妹さんの方が、結婚に向いてると思った。君は、すごく魅力的で、でも……なんていうか、大人すぎて」
大人すぎて、結婚には向いてない。
若くて素直な妹の方が、扱いやすいってこと?
この瞬間、私は「女」として、家族にも奪われた。
結婚式は、親からの強制で出席した。
「お姉ちゃん、ちゃんと見ててね。私、幸せになるから」
バージンロードを歩く妹。
その隣には、私に「君と話してると心が落ち着く」と言っていた男。
私だけが知っている彼の癖。
右手の人差し指を、緊張すると軽くひねること。
今まさに、指輪交換の直前、その仕草をしていた。
ああ、私と寝るときも、それやってたね。
妹のことを見てる目で、私の裸を見ていたの?
笑ってはいけないと思いながら、口元が引きつった。
でも、涙は出なかった。出せなかった。
だって、ここで泣いたら、すべて“バレる”。
披露宴の最中、トイレで鏡を見ながら私は自分に言った。
「よかったね、今日で全部終わりだよ」
「彼の一番に選ばれなかった女として、一生、静かに生きていくんだよ」
でも本当は、今でも願ってる。
彼が、いつか妹を裏切ってくれたらって。
そうなったときだけは、私は笑って“地獄にようこそ”って言える気がして。
この物語に教訓なんかいらない。
“家族に奪われた恋”なんて、どんな名言でも救えない。
私が悪かったの?
黙ってたから?
言わなかったから?
妹より年上だったから?
彼がクズだったから?
そんなの、どうでもいい。
ただひとつだけ言えることがある。
「私を傷つけたのは、家族だった」
ってこと。
監修アクアグローバルサポート
