9月から生活道路が30km/hになります。訪問の移動時間、足りますか
来月から、私たちが毎日走っている道の制限速度が変わります。
令和8年9月1日、生活道路の法定速度が時速60キロから時速30キロに引き下げられます。
対象は、センターラインや中央分離帯がなく、道幅5.5メートル未満の道路です。速度標識が立っていない道が該当します。
住宅街の細い道を思い浮かべてください。訪問介護、訪問看護、定期巡回。私たちが利用者さんのお宅に向かうとき、毎日通っている道の多くが対象になります。
これは「安全運転の話」で終わりません
ニュースとしては「安全のために速度を下げる」という話です。それはその通りで、異論はありません。
ただ、訪問系のサービスを運営している立場で考えると、これはシフトと移動時間の問題です。
住宅街を時速30キロで走る。今までと同じ時間では、同じ件数を回れません。
1件あたり数分の差でも、1日に何件も回れば積み上がります。定期巡回のように1日に何度も訪問するサービスなら、なおさらです。
そして、時間が足りなくなったとき何が起きるか。スタッフが焦ります。
焦った運転は、事故につながります。速度を落とすためのルールが、現場に無理をさせて逆の結果を生む。これが一番避けたい形です。
だから、9月までにやるべきなのは注意喚起ではなく、移動時間の見直しだと考えています。
うちがやったこと
まず、研修動画を作って全スタッフに配りました。
9分ほどの動画です。安全運転の内容と、これから変わるルールをまとめました。
自動車を5台以上使っている事業所には、安全運転管理者を選任する義務があります。運転者への指導も、その業務に含まれます。うちも該当します。
ただ、集合研修は現実的に難しいのが正直なところです。訪問系のスタッフは、そもそも全員が同じ時間に事務所にいません。
そこで動画にしました。空き時間に見てもらえます。
動画に入れた3つの話
① 「だろう運転」から「かもしれない運転」へ
歩行者は渡らないだろう。前の車は急ブレーキを踏まないだろう。
こうした思い込みによる安全不確認や発見の遅れが、**事故原因の43.8%**を占めるとされています。
「歩行者が飛び出してくるかもしれない」と予測しておけば、ブレーキの準備ができます。その準備が、心の余裕になります。
② 無意識運転に気づく
こういう経験はないでしょうか。
気がついたら、利用者さんの家に着いていた。
毎日同じ道を走っていると、運転が筋肉の記憶になります。意識は運転から離れています。慣れた道ほど危ないのは、このためです。
対策として、ドライブレコーダーの映像を自分で見返すことを勧めました。自分の癖は、自分では見えません。
③ セルフチェック
具体的な癖をいくつも挙げました。
走り出してからシートベルトを締めていないか
首を振らず、目だけで左右を確認していないか
ハンドルに近すぎる、前のめりの姿勢になっていないか
ブレーキに足を乗せる準備ができているか
クリープを使わず、いきなりアクセルを踏み込んでいないか
これをチームで共有し合うのが大事だと伝えました。 一人で気づける癖には限りがあります。
動画には、テストをつけました
ここが一番の工夫かもしれません。
動画の最後にQRコードを出し、Googleフォームで10問のテストを受けてもらうようにしました。
理由は単純で、見ただけでは残らないからです。
研修動画を配って「見ておいてください」で終わると、再生しただけの人が必ず出ます。私も逆の立場ならそうします。
テストがあると、まず見たかどうかが分かります。 そして、どの問題を間違えたかで、伝わっていない部分が分かります。
Googleフォームなら、集計は自動です。誰が受けたか、正答率がどうかが一覧で出ます。受講記録としても残ります。
義務のある研修は、やったという記録が要ります。動画を見せるだけでは、その記録が作れません。
守るのは、免許でもある
動画の冒頭で、こう言いました。
私たちが守るべきものは、ご利用者様の笑顔、スタッフである皆さん自身の命、そして生活の糧である運転免許です。
3つ目を入れたのには理由があります。
訪問系のサービスは、免許がないと仕事になりません。 事故を起こして免許を失えば、その人はこの仕事を続けられなくなります。
安全運転の研修は、たいてい「利用者さんのため」「地域のため」と語られます。それも本当ですが、一番身近なのは、その人自身の生活が守られるかどうかです。
そこを最初に言うかどうかで、聞き方が変わると思っています。
9月までにやっておくこと
① 自分の事業所の訪問ルートで、対象になる道を確認する
センターラインがなく、道幅5.5メートル未満の道です。住宅街の訪問なら、かなりの割合が該当するはずです。
② 移動時間を見直す
現在の設定に無理がないか。特に、訪問が連続している時間帯です。
③ スタッフに伝える
「気をつけて」ではなく、**「時間の設定を変えたから、焦らなくていい」**という形で伝えるのが理想だと思っています。
ルールが変わったのに時間だけそのままでは、現場に矛盾を押し付けることになります。
一次情報はこちらで確認できます。
https://www.gov-online.go.jp/article/202606/radio-3618.html
なお、自転車に関するルールもここ数年で大きく変わっています。こちらは別の機会に、一次情報を確認したうえで書きます。
介護の現場は、記録も請求も労務も、書類に時間を取られすぎています。ここを軽くしないと、本来やるべき仕事の時間が出てきません。
うちで実際にやったことを、失敗も含めて書いています。
千葉県柏市・我孫子市で介護事業をやっています。
https://note.com/wakiaiai_kaigo
※本noteは個人の発信であり、所属法人の公式見解ではありません。
