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身体拘束は施設の話だと思っていませんか。在宅にもあります

先日、こんな場面がありました。

認知症のあるご家族が退院してご自宅に戻る、というときのことです。車椅子をレンタルしていただきました。

座っていると立ち上がろうとする。じっとしていられない。ご家族は心配されていました。

そして、こうおっしゃいました。

「もう、紐で縛っておこうかしら」

まったく悪気のない、軽い口調でした。困り果てた末の、率直な一言です。

在宅に、身体拘束の認識はほとんどありません。

「施設の話でしょう」と思われている

身体拘束と聞くと、多くの方が病院や施設を思い浮かべます。ニュースになるのも、たいてい施設です。

でも、在宅でも起きます。 そして在宅のほうが、気づかれにくい。

理由は3つあると思っています。

① 見ている人がいない。 施設なら他の職員の目があります。家の中は、家族と本人だけです。

② 悪意がない。 「危ないから」「転ばせたくないから」という善意から始まります。

③ そもそも、それが拘束だと知らない。

3つ目が一番大きいと感じています。

拘束具は、通販で普通に買えます

大手の通販サイトで、車椅子用のベルトも、背中で留めるつなぎも、普通に売られています。

私たち福祉用具を扱う立場からすると、これらは扱いに細心の注意が要るものです。

ところが、商品ページのどこにも「身体拘束」とは書かれていません。

介護に困っているご家族が検索して、良さそうなものを見つけて、買う。届いたら使う。どの段階でも、それが法的にどう扱われるかを知る機会がありません。

だから、責められるべきはご家族ではないと思っています。

私たちのように介護の仕事をしている人間が、見かけたときに説明する。それしかありません。

身体拘束とは何か

念のため整理しておきます。

身体拘束とは、本人以外の者が、本人の行動の自由を制限することです。

介護保険の運営基準では、利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、原則として禁止されています。

そして、適正な手続きを経ていない身体拘束は、高齢者虐待に該当する行為とされています。

「原則」という言葉があるので、例外はあります。ただし、3つの要件をすべて満たす場合に限られます。

  • 切迫性 — 本人や周囲の生命・身体に危険が及ぶ可能性が著しく高い

  • 非代替性 — 他の方法では、生命や身体を保護できない

  • 一時性 — 必要な最も短い時間に限る

3つのうち1つでも欠けたら、認められません。 これは本当に最後の手段です。

これも拘束になります

福祉用具の現場で、実際に判断が必要になる場面を挙げます。

ベッドの4点柵。 ベッドを柵で囲むと、自分で起き上がったり降りたりできなくなります。

これは分かりやすいのですが、壁にベッドを寄せて手前に2点の柵を置くのも、3点柵にして柵のない側に車椅子を置くのも、同じことです。行動の自由を奪っています。

車椅子を置くやり方は、以前は許容されていた時期もあったと聞きます。今は該当すると判断されます。

車椅子のシートベルト。 自分で外せないものは該当します。

背中で留めるつなぎ。 本人の意思で脱げない状態にするものです。

姿勢保持のクッション。 これは以前ネットでも議論になりました。姿勢が安定して楽に過ごせるので、使うこと自体は問題ありません。ただし、本人が外そうとして外せないなら、該当しうるということです。

食事用エプロンをお尻の下に敷く。 席を立てなくするのが目的なら、拘束です。床に食べ物がこぼれないよう受け皿にしているだけなら違いますが、見た目で判断されることもあります。

「動かないでください」も拘束です

もうひとつ、見落とされやすいものがあります。

「動いたらお盆がひっくり返るから、動かないで」

こういう声かけを、スピーチロックと言います。言葉による拘束です。

物理的な拘束(フィジカルロック)、薬による拘束(ドラッグロック)と並ぶ、代表的な拘束行為のひとつとされています。

悪気なく、無意識に出てしまう言葉です。私も気をつけています。

大事なのは、命令や制止ではなく、気持ちを汲み取る言い方や、選択肢を示す言い方に変えることです。「動かないで」ではなく「どうされましたか」から始める。それだけで変わります。

縛る前に、原因を探す

拘束をするのが、私たちの仕事ではありません。

だから、道具を使う前に必ず「これを使わずに済む方法はないか」を考えます。

ベッドからの転落が心配なら、超低床タイプのベッドに変えて、落ちたときのダメージを減らす離床センサーを付けて、起き上がったときに早く駆けつける

もちろん、これで全部が解決するわけではありません。すぐそばに人がいられるとは限らないし、転落した後の引き上げという別の問題も残ります。万能な代替手段はありません。

それでも、先に検討したかどうかが決定的に違います。

そして、これはぜひ知っていただきたいことなのですが——

席を立ってしまう(離席)の原因の9割は、座面が合っていないことです。

お尻が痛い。座り心地が悪い。だから立つ。

私たちだって、1時間座っていれば姿勢を変えます。利用者さんが、どれくらいの時間座り続けているかを考えてみてください。

離席が多いから拘束、ではありません。離席が多いのは、何かが合っていないからです。

車椅子なら、背張りや座面の調整、フットプレートの高さ、クッションの変更。シーティングを見直すだけで、立ち上がらなくなる方はいます。

見かけたら、伝えてください

冒頭のご家族には、事情を説明しました。在宅でも身体拘束にあたること、代わりにできることがあること。ご理解いただけました。

責める必要はありません。 ご家族は困っているから、そうしようとしただけです。

必要なのは、それが何にあたるかを伝えることと、代わりの方法を一緒に考えることです。

ケアマネジャーさん、訪問系の事業所の方、福祉用具に関わる方。ご自宅で「あれ」と思うものを見かけたら、そこが分かれ道だと思います。


厚生労働省や各都道府県が、身体拘束に関する手引きを出しています。判断に迷ったときは、そちらをご確認ください。事業所内で迷ったら、一人で決めずに主任や管理者に相談してください。


介護の現場は、記録も請求も労務も、書類に時間を取られすぎています。ここを軽くしないと、本来やるべき仕事の時間が出てきません。

うちで実際にやったことを、失敗も含めて書いています。

千葉県柏市・我孫子市で介護事業をやっています。

https://note.com/wakiaiai_kaigo

※本noteは個人の発信であり、所属法人の公式見解ではありません。

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