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46歳になりました。そして「家」ではなく「庭」の話を

【46歳になりました……。そして1年ぶりに本を出します。渾身の一冊です!】

来月、1年ぶりの新刊を発売することになりました。

タイトルは『庭の話』ですが、情報社会論の本です。「プラットフォーム化した資本主義とどう付き合っていくのか」という大きな話を、消費とか労働とかケアとか制作とか、そういった小さな身近なものごとを手がかりに考え抜いています。「群像」で1年半連載したものを、丸1年かけてブラッシュアップしました。たぶん、今までの僕の本の中で一番遠くまで行けた本だと思います(自分でも、今までで一番納得のいく内容に仕上がったと思います)。『遅いインターネット』から4年、その完全な続編にして(かなり変わったかたちでの)アップデート版だと考えてもらえればいいと思います。

この「庭」とは比喩です。何の比喩かというとプラットフォームの比喩の「及ばない場所」のことです。それは一般的には地域「共同体」の見直し、だったり新しい都市型の「共同体」(◯◯教とか、◯◯友の会とか)だったりします。しかし、僕はそうは考えない。あくまで、個人が個人のまま社会とかかわる回路をプラットフォームとは違うかたちで考えています。「家庭」という言葉があり、現代社会ではいま「家」をどう再構築するかを左右を問わず考えがちなのだけど、僕は「庭」を考えたい。それは「家」=共同体から離れたかたちでしか救えない弱い立場の人がいることや、こぼれ落ちてしまう価値があることを確信しているからです。「家」のことばかり話す人は、そのことを忘れていると考えています。

前半のハイライトは國分功一郎『暇と退屈の倫理学』『中動態の世界』に対する情報社会論からの応答というか、「社会思想家」としての國分功一郎を「取り込む」仕事に挑戦したところです。國分さんのこの二作はこの十年で一番「読まれた」哲学書であるにもかかわらず、その「応答」がほとんどない……という変わった受容のされかたをしています。しかし読んだ人は直感的に理解していると思うけれど、これらの國分さんの仕事は情報社会を生きる僕たちに大きな示唆を与えてくれるものです。そこで、今回は「國分功一郎、その可能性の中心」を書くつもりで、國分理論とプラットフォーム資本主義論を正面から接続させています。

後半は……目次を見ると「あれっ?」と思うかもしれないですが、かなりアクロバティックな展開を見せています。たぶん、第一章の問題設定を読み、この展開が予測できる人はほぼいないと思います。

実はこれ、『群像』連載時からはガラッと構成を変え、ほぼ書き直しています。リフキン、オストロム、柄谷行人、吉本隆明、アーレント……といったあたりが主な登場人物です。「では、どのようにプラットフォームの与えるゲームと、僕たちは付き合っていくのか」という問題をちょっと変わった角度から、しかし逃げずに最後まで論じきっています。

強いて言うなら、「真の恋人を探すこと」が後半のテーマです。もちろん、この「恋人」も比喩です。じゃあ、何の比喩なのか……はぜひ、本を読み、確かめてください。小説を読むように読める批評を書く、というのが後半の僕の目標で、それが実現できていると思います。(実際、小説のようにスラスラ読めると思います!)

帯は國分さんと、そして安宅和人さんにお願いしました。それは、この二人が僕が最も信頼する少し年長の知性の持ち主であることと、そしてこの二人の読者に手にとって欲しいと考えたからです。國分さんの読者には、哲学や社会思想といった人文知がこのような角度から「も」情報社会と切り結ぶことができることを知ってもらって、そして一緒に考えて欲しいですし、安宅さんの読者には『シン・ニホン』的な最適化と成長戦略を世界観や歴史観のレベルで基礎づける「思想」の強みを共有できたらと考えています。

残念ながら、いま「批評」の読者のうち、アクティブな人ほどきちんと対象を読み込むこともなく、業界内の力関係に媚びた文章を書いたり(このひとに好意的に紹介されるためにこの人を批判する……みたいなどうしようもないことをする)、表面的なイメージ(「中年男性」や「若い女性」だからこのテンプレートで攻撃すれば、それっぽく見える……といった状況)に甘えた文章を書く人が多く、まさにプラットフォームの「汚染」をもっとも強く受けた分野になっています。

なので、僕はこの本はもっと広範な読者層に手にとってもらいたいと考えています。SNSで誰かを貶めて自己を賢く見せるゲームのようなものに興味がなく、純粋に書き手と一緒にものを考えてくれる人……そういった読者に出会いたい。それが僕がこの本を「出版」することの目標です。

そして偶然時期が重なったのですが、今日(11月17日)で46歳になりました。この数年は自分の仕事の仕方を根本から見つめ直したり、今まではあまり考えてこなかった自分の「人生」について考えることが増えました。最近ご無沙汰してしまっているみなさんも、これを機会に久しぶりにお話したいです。(一冊でも売れるなら無限に無料で稼働します。ぜひお声をおかけください!)

46歳の宇野も、よろしく、お願いします!

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宇野常寛 僕と僕のメディア「PLANETS」は読者のみなさんの直接的なサポートで支えられています。このノートもそのうちの一つです。面白かったなと思ってくれた分だけサポートしてもらえるとより長く、続けられるしそれ以上にちゃんと読者に届いているんだなと思えて、なんというかやる気がでます。