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正しい人材育成が、なぜ組織を疲れさせるのか~この連載を始める理由


人材育成に関わる仕事をしていると、ふと立ち止まりたくなる瞬間がある。
研修は増えている。制度も整ってきている。
1on1も、キャリア支援も、以前よりずっと丁寧だ。

それなのに──
現場はどこか疲れていて、人事はどこか報われない。
「やるべきことは、ちゃんとやっているはずなのに」
そんな違和感を、これまで何度も目にしてきた。


多くの場合、この状況は誰かの怠慢や能力不足が原因ではない。
人事は真剣に考え、現場マネジャーも懸命に向き合っている。それでも噛み合わなくなる。
このとき起きているのは、対立ではなく感覚のすれ違いだ。

人事は「設計した」と感じ、現場は「押し付けられた」と感じる。どちらも本心であり、どちらも間違っていない。


さらに厄介なのは、このすれ違いが 「正しいこと」を積み重ねるほど大きくなる という点だ。
新しい施策を入れる。理論的にも妥当だ。他社事例もある。経営からの期待も高い。
それでも、現場では「また増えた」「結局、現場任せだ」という感覚が残る。

人事から見れば、「ここまで整えたのに」「なぜ使われないのか」という徒労感が残る。
正しさが、少しずつ人を消耗させていく。


この連載では、人材育成を「施策が良いか悪いか」で語ることはしない。
代わりに、なぜそれが噛み合わなくなるのかを構造として捉え直していく。

  • なぜ人材育成は「点」ではうまくいっても「線」にならないのか

  • なぜ正しい研修・制度・1on1が同時に人を疲れさせてしまうのか

  • なぜ人事と現場で、同じ言葉が通じなくなるのか

答えを断定することが目的ではない。考えるための地図を共有することが、この連載の目的だ。


ここで扱うのは、特定の理論や手法の解説ではない。

Instructional Designも、キャリア支援も、1on1も、人材マネジメントも、すべて「人材育成を構成する要素の一部」として扱う。

どれか一つを正解にするのではなく、どう組み合わさると“回らなくなるのかを見ていく。
その上で、毎回ひとつだけ、小さな一手を提示する。

制度を変えるような話ではない。明日から完璧にできる話でもない。

ただ、人事と現場が同じ方向を向いて話すための視点の置きどころを少しだけ動かす。


人材育成は、どちらか一方が頑張れば解決するものではない。人事と現場マネジャーが同じ地図を見て、同じ前提で会話できて、初めて「線」として動き出す。

この連載は、誰かを説得するためのものではない。手を取らないとうまくいかない人たちのための、共通言語として書いていく。


次回は、
なぜ人事は「設計した」と思い、現場マネジャーは「押し付けられた」と感じるのか。その構造から話を始めたい。

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