2024年の読書録
出だしは調子が良かったものの、年度後半は思ったように本を読む時間が確保できなかった。途中まで読んだ本も沢山あるのだが、ここはルールを遵守して、読破カウントのみでリストを作ることとした。9か月ぐらい放置していたのでまとめるのはすごく大変だった。やはりこういうのはちょこちょこやっておかないといけない。
本年度のテーマは、「文章力の向上」、「人の営みに対する研究~都市、監査制度、カルチャー」に大きく分けられる。文章力の向上の観点から、今まであまり読んでいなかった日本の小説にトライしてみたが、やはり世の中には読むべきものが沢山あると感じた一年だった。
★は私的なMVP作品。
(小説等)20作品
『汝、星のごとく』(凪良ゆう)
『星を編む』(凪良ゆう)
★『シャーロック・ホームズの凱旋』(森見登美彦)
★『パンク侍、斬られて候』(町田康)
『告白』(町田康)
『バスカヴィル家の犬 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ』(アーサー・コナン・ドイル)
★『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(長谷敏司)
★『皆勤の徒』(酉島伝法)
『口訳 古事記』(町田康)
~ここまで第1クウォーター~
★『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈)
本屋大賞受賞作。一見風変りな地方の高校生「成瀬あかり」が、狭くどこか孤独な世界から、成長に伴い世界が広がっていく様子を描いたさわやかな作品。
『成瀬は信じた道をいく』(宮島未奈)
続編。一作目よりエンタメ性の高い作品。キャラが立っているので、そういう方向性もよい。自分は一作目収録の「ありがとう西武大津店」が好き。
★『奏で手のヌフレツン』(酉島伝法)
空洞地球めいた凹面世界、そこでは太陽が歩き、人々はそのエネルギーを使って生活をしている。太陽が生き物なのかどうかは定かではないが、寿命めいたものがあり、太陽が衰えると、恐ろしい月が太陽に取りつき蝕と呼ばれるカタストロフが起こる。
そうした謎めいた世界、そこで過酷な労働に従事する人々の姿、それを独自の造語を理解しながら読み進める体験が独特。物語や世界がだんだんわかってくるのが楽しい。
『旅のラゴス』(筒井康隆)
あまりテクノロジーが普及していない世界をラゴスは旅し、ロストテクノロジーめいたなにかから多くの知識を得て成果をあげる。各地で成功を収め、しかし、ラゴスは旅を続ける。さっぱり読めてロマンのある作品。
『家族八景』(筒井康隆)
人の心が読める主人公、火田七瀬は、お手伝いとして転々と様々な家族のもとで暮らす。ファミリーの裏側にありえるドロドロとしたもの、人間の欲望のようなものを風刺的に描く作品。それでもなお、ぼくらは家族として暮らすことができる。逆にそんな希望を感じた。
『七瀬ふたたび』(筒井康隆)
まさかの続編。話はうって変わって、今回は別の超能力者と出会い、戦う。スリリング。
『エディプスの恋人』(筒井康隆)
まさかの続編。今度は、超越的な力を持つ存在との邂逅を描く。
『モナドの領域』(筒井康隆)
とうとう、超越的な力を持つGODがフィーチャーされる。小説世界において万能の力を持つ存在、それは作者自身なのかどうなのか。
『聖痕』(筒井康隆)
幼い時の事故により、性欲を持たなくなった備忘の主人公は美食に興味を持ち、レストランを作る。実際、聖人のようなメンタルを持った人間が現代にいたら、こんなことになってしまうのだろうか。少し気味悪く感じる。
★『ヴァリス〔新訳版〕』(フィリップ・K・ディック)
超越的存在もの。または狂気か。世界とはなんであるかというのは、おそらく物理学が描くとおりなんだろうと思うが、人間というか個人にとって世界とはなんなのかというのはまた別のお話なのだろう。
『煙か土か食い物』(舞城王太郎)
文字の密度が高くドライブ感のある文体は一読の価値ありと薦められて読んだ。主人公の推理が鋭すぎたり、フィジカルが強すぎるような気もしないではないが、文章のテンションで読めてしまう。なるほど、こういう作品もありだなと。
(他)42作品
『社内政治力』(芦屋広太)
『「権力」を握る人の法則』(ジェフリー・フェファー)(再)
『社内政治の教科書』(高城幸司)
『ルート66をゆく―アメリカの「保守」をたずねて―』(松尾理也)
『口の立つやつが勝つってことでいいのか』(頭木弘樹)
『人生が整うマウンティング大全』(マウンティングポリス)
『世界は経営で出来ている』(岩尾俊兵)
★『RITUAL』(ディミトリス・クシガラタス)
『美学への招待 増補版』(佐々木健一)
『なぜ世界は存在しないのか』(マルクス・ガブリエル)
『ボクの音楽武者修行』(小澤征爾)
『文学とは何か――現代批評理論への招待(下) (岩波文庫)』(テリー・イーグルトン)
『村上朝日堂』(村上春樹/安西大丸)
★『私とは何か「個人」から「文人」へ』(平野啓一郎)
『人間集団における 人望の研究』(山本七平)
~ここまで第1クウォーター~
『はじめての「禅問答」 ~自分を打ち破るために読め!~』(山田 史生)
禅のエピソードはミステリアスでファンタジックである。禅問答というものはどういう理解の仕方ができるのか、これがすべてというわけではなく、読み方の一例を示すことを通じて、禅問答への向き合い方のガイドとなるような本。たぶん。
『大切なことはすべて茶道が教えてくれる』(石川雅俊)
マイブームだった「道」に関する本として。なんでもビジネスに役立つとするのはいかがなものかと思いつつも、まだまだ知らない世界があるものだなと。
『いま、拠って立つべき“日本の精神” 武士道 (PHP文庫)』(新渡戸稲造)
これも「道」ブームを受けて。我々が知らず知らずのうちに当然と思っている価値観にもやはり歴史とルーツがあるのだなと思う。
『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』(町田康)
人間は他人の言葉を聞いて言葉を覚える。そういう意味では、自分の中から出てくるフレーズの多くは手垢のついたものなのだろう。言葉をシチュエーションに応じて自動的に割当て、会話っぽいものをしたり、文章のようなものを作るのが人間なのかも知れない。しかし、それに抵抗する、少なくとも自覚的であることから、書くことははじまるのかも知れない。
『しらふで生きる 大酒のみの決断』(町田康)
酒をやめるという話をここまで膨らませられるものかと感心する。人生の楽しみとはなにか、そもそも人生は楽しまなければならないのか、うだうだ言っているようで、ちゃんと考えさせられる。
『ゲンロン戦記』(東浩紀)
経営者の知人からの薦めで。大学ではなく研究所とも言えない、それでありながら人や社会について考え、議論する場を設け、それを商業的に成り立たせる。とてもエキサイティングに聞こえるが、その裏には、月並みというと失礼かもしれないが、よくある経営の悩みみたいなものもある。哲学者が現場で実践する姿勢から、なにか勇気をもらえたように感じた。
『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』(小林美希)
「スタバは我慢、水筒にお茶」。インターネットではイケてる年収マウンティングみたいなものを見ない日はない。もちろん、努力して成功する人々が否定されるべきではない。一方で、世の中には金銭的に苦しく、心の豊かさの確保がままならない人々も多く暮らしている。そんな苦しさを抱えた人たちの声を集めたもの。いったいなにが悪いんだろう。簡単に答えは見つかりそうにない。
『ひげの殿下日記』(寛仁親王)
「ひげの殿下」こと寬仁親王が生前会長を努めた福祉団体の会報に寄せたコラムをまとめたもの。皇族として生きることがどういうことなのかは想像もできない。しかし、ひとりの人間の生きた言葉として興味深く読んだ。
『創作の極意と掟』(筒井康隆)
文章とか文体について考えるというテーマで選んだ本。PROもいろいろなことを試すのだなと。
『入門 都市計画(第2版):都市の機能とまちづくりの考え方』(谷口守)
多くの人が集積することにより形成される都市を理解することから人間集団について理解を深められないだろうか、という思い付きからしばらく都市計画のようなものを勉強してみた時のテキスト。
『変わり続ける!シブヤ系まちづくり』(渋谷未来デザイン)
谷地形、鉄道、道路、川で分断された巨大都市の再開発。如何にスムーズに人が移動できる場所にするか。未来に向けた街づくりとは。都市の構造のような長期間人々の営み、街の発展に影響する要素を考える面白さ、みたいなものを感じる。
『スマートシティはなぜ失敗するのか 都市の人類学』(シャノン・マターン)
原題は『A City Is Not a Computer』。スマートシティが失敗するとは言っていない。都市が担ってきた様々な役割、様々な機能から、単純な計算可能なものとしては捉えきれない都市の姿を捉えようとする、のようなもの。
『監査文化の人類学―アカウンタビリティ、倫理、学術界』(マリリン・ストラザーン編)
フーコーの『監獄の誕生』が語ったように、現代的な権力は、対象となる人々に可視性を確保することを求め、その過程を監査することで成り立っている、というマイケル・パワー以来の議論を人類学の立場から見たもの。学術界に監査っぽいものが導入されてからというもの、そもそもこれは何なんだ?という議論がされるようになったようである。それは良いことかも知れない。
『監査社会:検証の儀礼化』(マイケル・パワー)
著者のマイケル・パワーは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授。哲学で博士号を持ちながら、イングランドウェールズ勅許会計士として監査人経験もあり、監査の社会的本質についてユニークな議論を展開している。監査とはそもそも何なのか、統治のためのシステムとしてどう機能しているのか、という点については、もっと自由に議論されてもいいじゃないかと個人的には思うところ。ストラザーンの本を読んで、原点に当たろうと思って読んだ。
『マニュアルには載っていない 会計士監査 現場の教科書』(玉井照久)
大手監査法人を退職したベテラン会計士が語る、監査基準やマニュアルとは異なる視点での監査実務に関するノウハウ。若手会計士向け。制度的に語られる監査ではない「監査現場は」まごう事なきビジネスのフィールド。そこには現場を円滑に運営するための無限のノウハウがある。そのすべてを著者が紹介するものではないだろうが、そうした視点を持つことの重要性や、その工夫の面白さ、というものが伝わる作品。
『わかる!使える!うまくいく! 内部監査 現場の教科書』(浦田信之)
現代のディスクロージャー制度やそのインフラである監査制度を成り立たせるうえで、被監査組織内部においても自らの組織体制や業務運営の適切性を説明(アカウント)する機能を持つことの重要性は増している。監査を受ける側からすると嫌なものと思われる内部監査部門の仕事について、その魅力が伝わるような作品。著者の明晰さと「伝える」ことに対する丁寧な向き合い方が伝わってくるような文章が良い。
『ファミリー企業のガバナンス』(アレキサンダー・ケーベル=シュミット他)
上場企業に比べてなにか「劣る」ようなイメージのある家族経営であるが、当然ながら社会に価値をもたらす意義深い企業も多数ある。コーポレート・ガバナンスは上場企業を中心として議論されがちな分野であるが、ステークホルダーの構造等が異なるものの、ファミリービジネスにもガバナンスがある。それを学ぶことは、上場企業等のガバナンスをより理解するうえでも重要だろうと思う。
『バッタを倒すぜアフリカで』(前野ウルド浩太郎)
若きサバクトビバッタ研究者によるフィールドワークのREALを描いた笑いあり、おどろきあり、感動あり、のれっきとした学術書。異国の地で奮闘する若者の姿には勇気づけられる。また、発信を通じて、日本では地味な研究内容について広め、支持を集めるというのも現代的で面白いなと。
『ネット怪談の民俗学』(廣田龍平)
ネットの普及により現れた参加的なホラー。それがどのように発生し、どう広まったのか、そして人々が動画メディアを用いるようになって、どういうものが流行ったのか。人々はなぜ、どのようにネットの怪しげな話を楽しむのか、それを考える最初の本としていいのではないかと思う。
『あなたを陰謀論者にする言葉』(雨宮純)
最近、おもしろおかしく話すのもややためらわれる感じになりつつある陰謀論。その流れを俯瞰するもの。昔からエンタメ感覚でウォッチしてきた分野ではあるが、こういうものの知識もまじめに必要になってきたのかなと思う昨今。
『本をだしたい』(佐藤友美)
2024年に本を出した尊敬する知人が執筆に際して参考にした本ということで。本を出版するのは、言うまでもなくビジネスであり、文章をいかに書くかということだけでなく、真剣に「本を出す」ことを考えるのであれば、こういう知識も必要かもしれない。
『消費文化理論から見る ブランドと社会』(吉村順一編著)
断片化し多様化する消費者の消費パターンを文化の観点から考える「消費文化理論」のフレームワークを用いて、ノマド、ミニマリストといった現代的な消費カルチャーの分析等を行う論考を集めた本。消費者は機能だけを買っているわけではない、という視点は、多少あやしい部分もあるものの、ビジネスマンの日々の活動を考えるうえでは、あって良い視点ではないかと思う。
『パンクの系譜学』(川上幸之助)
パンクとはなにか。そのルーツともいえるアナキズム、コミュニズムといった思想からどのようにパンク・ムーブメントが生まれ、どのような人たちに受容されてきたかを論じる。個人的に、自分の考え方や価値観がこういったものに大きく影響を受けてきたんだなと考えさせられた。装丁がめっちゃカッコいい。
『反コミュニケーション』(奥村隆)
2023年から引き続く、コミュニケーションとはなにかという私的な問いを補強すべく。思想界の巨人が語るコミュニケーション論を架空の対話(コムにケーション)を通じてコンパクトに描く。読みやすいが、内容は必ずしも簡単ではない。
『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(プチ鹿島)
70年代後半から80年代にかけての「テレビ」とはどういうものだったか。「川口浩探検隊」のようなものが半笑いのエンタメとして視れた時代と今のテレビはなにが違うのだろうか。懐かしさと共に、現代で言えば「インターネット」が変わっていく姿のようなものと重なり、考えさせられる部分がある。
『業務プロセスとつながる IT統制とIT監査 現場の教科書』(中雄俊和)
中央経済社の「現場の教科書」シリーズであるが、本書はITや監査と縁遠い人が読むのは少々苦しい、わりと専門的な書籍。IT統制に関わることになったら読んで損はしない。注意深く読むと随所に配慮が行き届いていることが感じられ、著者の若さから今後にも期待ができる。
『「盛り」の誕生』(久保友香)
ヤマンバ、デカ目、女子の「盛り」はどのように生まれ発展していったのか。リアル世界とバーチャル世界が組み合わさった若年女性たちのコミュニティとそこにおける「美」意識とは。とても面白かった。
まとめ
以上、2024年は62冊となった。2022年が32冊、2023年が40冊と、増えては来ているので、読書リストをつけている効果はあるのかも知れない。
2025年も何かテーマをもって読書ができればと思う。良いお年を。
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