#17 今日もこの店、あけときます。
~扉を開ける、合言葉~
この店には、
いろんな人が訪れる。
店を開ければ、
たくさんの人との出会いがある。
だから僕は、
毎日この店を開け続けている……
カランコロン♪
「こんにちは。」
今日一人目のお客さんだ。

一見、
どこにでもいそうな男性だった。
「いらっしゃい。」
「いきなり来て、すみません。」
「どんなご用ですか?」
男性は少し困ったような顔をした。
「あの……
少し、お時間ありますか?」
「どうぞ。」
ソファを勧めると、
そのあっけなさに少し驚いた様子で
男性はゆっくり腰を下ろした。
「実はね、
いやっ‼︎……はぁ〜。。。」
話しにくいのかな?
何かを言いかけるが、
出てくるのは、ため息ばかり。
「でも、
いやっ……はぁ〜」
「………」
「いやっ、はぁ〜」
「………いやっはぁ? 」
静かな店内に、
「いやっはぁ〜」
だけが響く……
………ふふ。
やっぱり、
なんだかおもしろい笑
いっそのこと、
このリズムに合わせて踊っちゃおうか?
とか、
一瞬思ったけど
あまりにもつらそうだったから
僕だけ踊ってる場合じゃないな
……と、黙って待つことにした。
しばらくすると、
今度は黙って下を向いてしまった。
やがて、
ふふっと笑った。
えっ!?
「なんだか……
少し楽になりました」
ええっ!!?
でも。
いやっはぁーのリズムに乗って、
大切な何かを
取り戻したのかもしれない……
そういうことも、
あるのかもしれない……
いや、ないだろ笑
男性は、
立ち上がると
深々と頭を下げた。
「ありがとうございました。」
カランコロン♪
店の外へ出る男性。
さっきより、
少しだけ背筋が伸びて見えた。
僕は見送りながら、
「いやっはぁー」と
声に出してつぶやいてみる。
────その時だった!
カチャ
僕は振り向く。
……今。
奥の扉が、
ほんの少しだけ動いた気がした。
「え?」
慌てて見る。
でも、
奥の扉は閉まったままだった……
もう一度大きな声で言ってみた。
「いや〜〜〜!
はぁっ!!!」
…………シーン。
その後、
奥の扉が開くことはなかった……
「違うか……ふふ。」
扉を開ける合言葉が
「いやっはー」なわけないよね。
その日の夕方。
カランコロン♪
「こんばんは」
朝と同じ男性だった。
「おかえりなさい。」
男性は照れくさそうに笑う。
「少しだけ話せるようになりました。」
「どうぞ。」
「今日は長くなりそうですね。」
僕もつられて笑った。
続く
✅僕の曽祖父は、遠い異国で花火を上げていたという……
