見出し画像

PTL番外編その1 ジャン・ジュネ読書ガイド

◎ジャン・ジュネ全集 新潮社 1967.5〜1968.2(再版 1992.10)
第一巻 長編小説
 葬儀…平井啓之訳
 泥棒日記…朝吹三吉訳
第二巻 長編小説
 ブレストの乱暴者…澁澤龍彦訳
 花のノートルダム…堀口大學訳
第三巻 長編・詩・その他
 詩篇…平井啓之・小島俊明訳
  死刑囚
  葬送行進曲
  ガリー船
  パラード
  愛の唄
  シュケの漁夫
 薔薇の奇蹟…堀口大學訳
 綱渡り芸人…曽根元吉訳
 犯罪少年…曽根元吉訳
 ジャン・コクトー…曽根元吉訳
 ジャコメッティのアトリエ…宮川淳訳
 倒錯者の断章…平井啓之訳
第四巻 戯曲
 死刑囚監視…一羽昌子訳
 女中たち…一羽昌子訳
 バルコニー…渡邊守章訳
 黒んぼたち…白井浩司訳
 屏風…渡邊守章訳
 演出家ブランへの手紙…曽根元吉訳
 ※ジュネは四巻本の全集が出ている。これは散々口を酸っぱくして注意喚起したガリマール社版全集の添削済みテキストだが、まとまって読めるのはありがたい。
 ただし、第三巻の「倒錯者の断章」は抄訳で、全訳は《ユリイカ》1992年6月号『ジャン・ジュネ特集号』に「同性愛についての断章」として掲載。元は単なる"Fragments"と言う題を、わざわざ「倒錯者」などと措定していることに時代を感じ、翻訳者の責任を感じる。翻訳者は作者の代弁者であるべきなのに、勝手に倒錯などと決めつけてはいけない。

◎小説(文庫を中心に紹介する)
◯花のノートルダム
  堀口大學訳…新潮文庫(1969.9)
  鈴木創士訳…河出文庫(2008.12)
  中条省平訳…光文社古典新訳文庫(2010.10)
◯薔薇の奇蹟(跡)
  堀口大學訳…新潮文庫(1970.2)
  宇野邦一訳…光文社古典新訳文庫(2016.11)
◯ブレストの乱暴者
  澁澤龍彦訳…河出文庫(2002.12)
◯葬儀
  生田耕作訳…河出文庫(2003.2)
◯泥棒日記
  朝吹三吉訳…新潮文庫(1968.9)
 ※長編小説の文庫本は、河出文庫が品切れているが、入手は困難ではない。新潮文庫の『花のノートルダム』と『薔薇の奇蹟』と戯曲集も絶版。

◎戯曲・脚本
◯黒んぼたち・女中たち
  白井浩司・一羽昌子訳…新潮文庫(1972.6)
 ※収録は、「死刑囚監視」「女中たち」「黒んぼたち」「アダム・ミロワール」。
◯アダム・ミロワール
  一羽昌子訳…コーベブックス(1977.1)
◯女中たち・バルコン
  渡辺守章訳…岩波文庫(2010.12)
◯ヘリオガバルス
  宇野邦一・鈴木創士訳…河出書房新社(2025.5)
 ※『花のノートルダム』以前に執筆された幻の戯曲。アントナン・アルトーの『ヘリオガバルス あるいは戴冠せるアナーキスト』(多田智満子訳…白水社Uブックス、鈴木創士訳…河出文庫)を踏まえていると考えられる。

◎詩集
◯ジャン・ジュネ詩集
  中島登訳…国文社(1995.2)
 ※全集の「詩篇」と同じく、「死刑囚」「葬送行進曲」「ガレー船」「ラ・パレード」「愛の唄」「シュケの漁夫」と、6編の詩が収録。
◯ジャン・ジュネ詩篇『愛の唄』
  松本完治訳…エディシオン・イレーヌ(2005.12)


◎評論・エッセイ・ルポルタージュ
◯恋する虜
  鵜飼哲・海老坂武訳…人文書院(1994.4)
 ※1986年の死去直後に刊行された未完のルポルタージュ長編。「パレスチナへの旅」という副題。
◯アルベルト・ジャコメッティのアトリエ
  鵜飼哲・編訳…現代企画室(1999.11)
 ※全集未収録「レンブラントの秘密」を含む芸術論集。
◯シャティーラの四時間
  鵜飼哲・梅木達郎訳…インスクリプト(2010.6)
 ※1982年9月、パレスチナ難民キャンプでの虐殺事件に取材したルポルタージュ。
◯公然たる敵
  鵜飼哲・梅木達郎・根岸徹郎・岑村傑訳…月曜社(2011.3)
 ※ガリマール社ジュネ全集第六巻の全訳。晩年の政治的テクストの集大成。ジュネは晩年、パレスチナ解放軍PLOや黒人解放組織ブラック・パンサーに帯同した。
◯判決
  宇野邦一訳…みすず書房(2012.10)
 ※『恋する虜』の原型となったマラルメふう散文集。

◎評伝・作家論
◯聖ジュネ 殉教と反抗 ジャン=ポール・サルトル
  白井浩司・平井啓之訳…新潮文庫[上下](1971.8)
 ※原著1952年。
◯ジャン・ジュネ ジャン・マリー・マニヤン
  宮原庸太郎訳…思潮社(1969.5)
 ※原著1966年。
◯ジャン・ジュネの世界 リチャード・コー
  沢村灌・諏訪部仁訳…思潮社(1970.12)
 ※原著1968年。
◯ジャン・ジュネ伝 ジャン=ベルナール・モラリー
  平井啓之監修・柴田芳幸訳…リブロポート(1994.2)
 ※原著1988年。
◯ジュネ伝 エドマンド・ホワイト
  鵜飼哲・根岸徹郎・荒木敦訳…河出書房新社[上下](2003.12)
 ※原著1993年。
◯ジャン・ジュネ 身振りと内在平面
  宇野邦一…以文社(2004.3)
◯嘘つきジュネ タハール・ベン・ジェルーン
  岑村傑訳…インスクリプト(2018.1)
 ※原著2010年。

 再刊改訂されたものは、一番新しい版を記した。一部にジュネ論を含む著作(一例、バタイユ『文学と悪』、澁澤龍彦『ホモ・エロティクス』等)は膨大になるので割愛した。

 雑誌《ユリイカ》は、三度にわたってジュネを特集している。
◯1976年2月号『特集ジャン・ジュネ 神なき薔薇の神学』
◯1992年6月号『特集ジャン・ジュネ 牢獄・同性愛・政治』
◯2011年1月号『特集ジャン・ジュネ ”悪”の光源・生誕100年記念特集』

 最後に、ジュネの文学的変遷を記しておく。
 ジュネの詩の時代は、1942年の『死刑囚』の秘密出版に始まり、1948年、ラルバレート社から全6編の『詩集』が出るまで。
 小説の時代は、1944年の『花のノートルダム』、1946年の『薔薇の奇跡』、1947年の『葬儀』と『ブレストの乱暴者』、1949年の『泥棒日記』までの期間。
 劇作の時代は、小説と重なるが、1947年の『女中たち』に始まり、途中、中断時期を経て、1961年の『屏風』まで。
 1964年春、十年来の恋人だった綱渡り芸人のアブドッラーが自殺。1967年春には、英語圏での代理人翻訳家だったフレッチマンが自殺。数日後、ジュネ自身、イタリアで薬物自殺を図る。
 政治的テクストの時代は、1968年「集まった人々」から没年の1986年『恋する虜』まで。この時期の文章・発言は1991年刊行の『公然たる敵』に収められている。
 今ではフィクションのみならず、この最後の段階、政治に関する文章や対話、インタビューの類が再評価されようとしている。サルトルに倣い、アンガージュマンの作家となったジュネは、PLOやブラック・パンサーを擁護し行動を共にした。
 そして、最後まで、男たちを愛し続けた。母なるものを探究し、天使を罵り、嘘をつき続けた。哲学者のサルトルやデリダに分析される屈辱と名誉を味わい、定住せずに放浪の一生を送った。

いいなと思ったら応援しよう!