EP09 ✟ NO HeavenNO Sanctuary Water born【生る(なる)】ノーヘブン|ノーサンクチュアリ ✟ウォーターボーン:First Contact 初撃四人の役割が揃った瞬間、“門”は、揺れた。そして、羅刹
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First Contact 初撃四人の役割が揃った瞬間、“門”は、揺れた。そして
EX-03。EX-06。EX-04。
敵側の三体のユニットが、一定の間隔を保ったまま海面に並んだ。
それぞれが別の周期で胸部コアを明滅させ、
水圧と流れを、違う“噛み方”で乱している。
ツユリ機《KUSANAGI-R/R-03》が泡幕を広げ、
前面に白いカーテンを張る
その内側で、シラハ機《KUSANAGI-R/R-04》が観測軸を固定し、波形の違和感と圧の偏りを一つずつ拾っていく。
カナネ機《KUSANAGI-R/R-02》の安定核が淡く脈動し、こちらの四機の同期線を静かに整える。
オトワ機《KUSANAGI-R/R-01》は、深緑の影として一歩前に出ていた。
「EX-03、コアに損傷。
……でも、まだ動けているようだ」
オトワが応えた。
水飛沫の向こうで、EX-03の胸部装甲に走った亀裂が、海水を吸い込みながらじわりと形を変えていた。
一問《EX-03(敵機)、自己補完中。
外部からのPULSEが、構造を“押し戻しています》
シラハ「応急の再構成……完全には治っていない。
でも、このまま放置はできない」
モンジュ(副回線)
「時間をかければかけるほど、“上”からの命令が強くなる。
短期決戦で削るしかないってことか」
カグラの声が、主回線に乗る。
「方法は任せる。
ただし──必ず“戻って”こい」
オトワは、その一言に短くうなずいた。
「了解。
先ずは前線を取る」

⸻
|第一波
しかし、先に動いたのはEX-06(敵機)だった。
側面から海をえぐるように滑り出し、
両肩ユニットから緑がかった水圧の刃を展開する。

ツユリ「サイドから、来る……!」
ツユリ機が泡幕を偏らせ、EX-06の刃を受け止める。
水そのものを厚くするように、圧を前面に集める。

刃が泡を裂き、水音が鋭く弾けたが、
しかし、ツユリ機の装甲までは届かなかった。
一問《VENT、効果あり。
圧力値、三割低下》
「痛いってば……!」
ツユリがこぼしつつも、ラインだけは譲らなかった。
その背後で、EX-04(敵機)が静かに身を沈めた。海面近くを滑るように移動しながら、別方向からの侵入角を探っている。
シラハ「EX-04、側面から回り込み。
二体で一体を挟む動き。」
カナネ「四機まとめて、崩される……?」
「崩させはしない」
オトワの声は、静かだった。
⸻
|四機、揃う
オトワ機が前進する。
EX-03(敵機)が、それに応じるように胸の橙光を強めた。
EX-03は、水位と弁を乱しながら、
この湾そのものを“門”に変えようとしている。
シラハ「EX-03、湾口の圧を持ち上げています。
このままだと、水路そのものが“開く”」
モンジュ「それってつまり、
“ここ”がGateになるってことだよな……」
カグラ「そうさせてはいけない。ここは都市の心臓だ」
四機のKUSANAGI-Rが、一列に揃う。
それぞれのコアが、別の色で、同じ周期を刻み始めていた。
ツユリ「外周は私が持つ。
EX-06と04は、こっちで引きつけるよ」
シラハ「流れの“軸”はこちらで取る。
乱される前に、向きを決める」
カナネ「私に流して。やられそうになったら、支えるから」

モンジュ(副回線)
「……いい。数字より先に、“響き”がそろってきてる」
オトワ「……道を作ってくれ。
刺すのは、俺がやる」
一問《四体の器、役割認証──完了》
カグラは、短く息を吐いた。
「それでいい」
⸻
|殴り合い
EX-03のブレードが振り下ろされる。
海ごと叩きつけるような一撃だった。
オトワ機が正面から受ける。
金属が軋み、関節に重い負荷が走る。
水しぶきが二機の間で爆発し、視界が白で埋まる。

カナネ「負荷、急上昇! R-01のフレームに偏ってる!」
「まだいける」
オトワは圧を押し返しながら、
ブレードの角度をほんのわずかだけずらした。
EX-03の軌道が滑り、重心が一瞬前に流れる。
そこへ、ツユリ機が横合いから挑発するように突っ込んだ。
「こっちだよ!バーカ」

肩部ユニットから発生させた圧縮泡を、
EX-03の側頭部に叩きつける。
衝撃で巨体がわずかに傾き、海面に不規則な波紋が走る。
一問《外装損傷、局所的。
しかし、姿勢制御に乱れ》
シラハ「今の揺れ、固定します」

シラハ機がFLIPを起動する。
EX-03の足元の水流が、
“足場”のような形で一瞬固まる。
巨体の逃げ道が、ひとつ奪われた。
カナネ「こっちで引き受ける……!」

安定核が光を増し、
四機にかかっていた微細な振動がカナネ機に集まる。
膝が一瞬、きしむ音を立てたが、倒れはしなかった。
モンジュ「今、四機の動きが“ひとつ”になった……オトワ、行けるぞ!」
オトワは答えず、一呼吸だけ置いた。
青いリングが強く明滅する。
「──刺す」
KUSANAGI-Rが海面を蹴った。
水飛沫をほとんど立てない加速。
EX-03の懐に潜り込み、
ブレードを胸部コアへ突き立てる。

鈍い手応えがする。
重く、深いものを貫いた感覚だ。
EX-03の橙光が、大きく乱れた。
⸻
|崩れ、それでも終わらない
EX-03が声のない咆哮を上げるように、
胸部から異様な水煙を噴き上げた。
巨体が後ろへと倒れ、海へ沈む。
シラハ「EX-03、機能停止……!」
一問《PULSE/β、出力急減》
ツユリ「やった……?」
カナネ「……でも、まだ、変よ」
モンジュ「PULSEが……完全に消えない。
値が“どこか”へ流れている」
EX-06とEX-04が、一度だけ動きを止めた。
まるで何かの合図を待つように、海中で姿勢を固定する。
湾口の波が、一瞬だけ外側へ吸い出されるように引いた。
水平線の輪郭が、熱を帯びた空気越しのように揺らぐ。
一問《PULSE/β、本来の“送信方向”を検出。
──外ではなく、“上位”》
カグラ「……嫌な感じだな」
火の星で、一度だけ聞いた“いやな静けさ”の記憶が、
カグラの背筋をかすめていった。
次の瞬間、海が静まり返った。
波音さえ遠ざかるような、異様な沈黙。
ツユリ「……音が、しない」
シラハ「観測値も……“空白”です。
流れが、読めません」
カナネ「揺れはあるのに、数値にならない……」
オトワは剣を構えたまま微動だにしない。
胸元のリングだけが、ひどく静かに震えていた。
モンジュが、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「……いやな感じ、なんて言葉じゃ足りない。
“奇妙な揺れ”が、こっちに降りてくる」
⸻
火輪
海面が、縦に裂けた。
光でも色でもない、何か奇妙な、“存在の圧”だけが真っ直ぐに押し寄せてくる。
裂け目の奥から、黒と紅の機体が歩み出た。
装甲に炎の裂紋を刻み、
胸部コアは血のような紅光を静かに灯している。
後に4人の生徒たちはその名前を心に刻み込むこととなる。四観・火輪《ラセツ》と言う名を。
その気配だけで、海風が止まった。
モンジュ「……なんだ、よ……これ……」
カグラは一歩前へ出る。
その瞳の奥には、四人が知らない戦場の残像がよぎっていた。
「間違いない。
四観・火輪……《ラセツ》。」

短い沈黙。
それは驚きではなく、“確認”の間だった。
カグラ「……あいつ、この時間軸から存在しているのか。」
ツユリが息を呑む。
カグラは苦く笑う。
迷いのない者の顔で。
「まさか……他の四観も?
“時の秘密”を知るもの……か。
……やれやれ。エクレシアにいた頃聞いた事があったが、あれは本当のことだったのか」
本当なら、もっと先の戦場で再会するはずの相手だった。

四人は言葉を失う。
それでも、何かとてつもない事が起きているであろうことだけは理解した。
──カグラは知っている。
人が未来と呼ぶ時間軸で、火輪と戦ったことがある。
そして火輪は、あの時代(時間軸)でも消えていない。
ラセツが、赤い残光をまとって四機を見渡す。
胸部の紅光が、嘲りにも似た周期で脈動した。
火輪「──なんだ?お前たちは。」
その声が落ちた瞬間、
海全体が、赤く低く鳴った。
──EP09 END
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