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EP19✟ NOHeaven NO Sanctuary Water born ✟ 【生る(なる)】最終戦争①last Water WAR 水の星の「最後の一滴」をめぐる戦いが始まる。高校生と港湾局 VS エクレシア中枢――これは、未来の火の星へ繋がる最終戦争の一歩目だ。

あらすじ


 Gate-E をめぐる攻防は、いよいよ最終段階に入る。
 蒼環高校と雪浦港湾局は、水の星 SEED-04 自らの意思として Hydr­a 計画の心臓部に殴り込みをかける。
 一方、エクレシア本部の“四観”もまた、SEED-04 を「実験場」として最後まで使い切ることを決める。
 水を支配する正義と、水を自分で選びたいと望む側。
 最初で最後の「水の戦争」が、静かに始まろうとしていた。



エクレシア本部・構文ホール


エクレシア本部・構文ホール

 白で塗りつぶされた空間に、海の色だけが浮かんでいた。

 立体マップの中心には、青い輪がある。
 SEED-04──循環湖と湾岸都市をひとつのユニットとして描いた、水の星のモデルだ。
 Gate-E の周囲だけが、ノイズのようにちらついていた。

「……波形が、また跳ねたね」

 空華が、頬杖をついたまま言った。
 子どもめいた顔に、退屈と興味が半分ずつ乗っている。

「Gate-E 外周、二%開き。
 蛇口ラインからの逆流七%。
 高校生機四機、港湾兵器と完全に同期」

「Phase-II の配管を、現場で勝手に組み替えていると?」

 火輪が、スクリーンに一歩近づく。
 腰の剣が、わずかに揺れた。

「蛇口を握るのは、エクレシアだ。
 この原則を崩した時点で、世界はまた“奪い合い”に戻る」

「数字で見よう」

 識然が指先を払う。
 別ウィンドウが開き、世界水系全体のグラフが展開した。

《Hydra Phase-III 進捗:62% → 48%》
《世界平均 Care-Index:0.72 → 0.65》
《SEED-04 依存度:モデルラインからマイナス 20》

「この世界が、全体の安定を削っているのは事実だ」

「自分たちで水を守れると思っている」

 火輪が鼻で笑う。

「蛇口を握る“感覚”を知った子どもは、二度と手を離さない。
 戻せなくなる前に、折るしかないだろう」

「折る、ね」

 黙照が、静かに口を開いた。
 長い金髪が、スクリーンの青を受けて揺れる。

「折り方を間違えると、何も残らない。
 この世界は、まだ使える」

「どう“使う”?」

 空華が問い返す。
 その声には、残酷さより好奇心のほうが強かった。

「Hydra の完成は、“水の安定”だけが目的じゃない。
 揺らぎ方そのものをモデル化する。
 限界まで追い詰めたとき、人は何を選び、何を諦めるのか」

 識然が、別のログを呼び出す。

《SEED-04 ローカルログ──》
《蛇口ライン:雪浦港湾局による独自制御》
《蒼環高校:未登録機体四機/Gate-E 近傍にて交戦記録》

「……そして、もうひとつ」

 識然の視線が、上空の別グラフに移った。

「Gate-E 周辺で、観測モデルに乗らない“影”が検出されている」

「名もなき者か?」

 火輪の声が少しだけ低くなる。

 黙照は、首を横に振った。

「像としてはまだ立っていない。
 ただ、“名づけられていない揺れ”があるだけだ」

「だからこそ、ここで試す価値がある」

 空華が微笑む。

「鍵と門と導きが揃った星。
 水が足りなくなりかけている星。
 そこまで追い込めば、“外側”の何かが反応するかもしれない」

「祈りに頼るつもりはないが」

 火輪が剣の鞘に手を置いた。

「この星を最後まで使い切るという点では、俺も同意だ。
 自分で蛇口をこじ開けた子どもたちに、
 “水の終わり方”を見せてやろう」

「作戦名は?」

 識然が問う。

「last Water WAR」

 火輪は、ためらわずに答えた。

「この世界が、水を最後まで使い切る戦争だ。
 我々は、その終わり方を観測する」

「戦争、ね」

 黙照が目を閉じる。

「こちらの手は、ひとつでいい」

 彼女は短く息を吸った。

「Gate-E 封鎖。
 SEED-04 水系コアに対する一次照準攻撃。
 太陽光凝縮兵器《SUNFALL》の使用を提案する」

 構文ホールの空気が、わずかに変わった。

 空華が、目を丸くする。

「本気だね。
 循環湖はほとんど干上がる。
 港も、都市も、ほぼ壊滅。
 それでも」

「世界水系全体は守られる」

 識然が静かに補う。

「SEED-04 の“終わり方”は、
 他の星への教材になる」

「教材にされる側の気持ちは?」

 火輪の口元に、少しだけ苦い笑みが浮かんだ。

「知らない。
 だが、あいつらも選んでいる。
 水を“自分で”守る道を」

「なら、こちらも選ぶ」

 黙照が言う。

「水を“世界側”に取り戻す道を」

 数秒の沈黙。
 やがて、構文ホールの中央に承認のリングが浮かび上がる。

《作戦承認:last Water WAR/SEED-04 処理戦》

《第一次行動:Gate-E 封鎖》
《第二次行動:SUNFALL 照準準備》

 識然が最後のウィンドウをひらく。

《補足観測項目:》
《“名づけられていない揺れ”/Gate-E 近傍》

「……これは、誰の提案だ?」

 空華が首をかしげる。

「俺は入れていないが」

「私でもない」

 火輪が眉をひそめる。

 黙照は、その一行をじっと見つめた。

「提案者:不明、か」

 白い空間に、記録されない誰かの視線だけが、かすかに残った。

蒼環高校・ハンガー

蒼環高校・ハンガー

 鉄骨剥き出しの天井から、冷たい光が落ちている。
 戦闘で焼けたパーツの匂いが、まだ空気の中に残っていた。

 四基の機体が並んでいる。
 泡幕展開に特化したツユリ機。
 Gate 位相整合ユニットを背負ったシラハ機。
 同期安定用のコアを胸に抱えたカナネ機。
 突入と刺突を任されたオトワ機。

 その横に、ひとつだけ空いたスペースがある。
 《YAGARASU》の係留位置。
 フックにはリング型ペンダントだけが残されていた。

 決戦前だが、ここにいる全員が、どうしても感傷的になってしまう。

「泣くのは、全部終わったあとでいい」

 モンジュがタブレットを閉じた。
 声はいつも通りだが、手の甲には細かいペンだこの跡が増えている。

「これは先生のためだけの戦いじゃない。
 Hydra の蛇口を、
 本当にこっち側に持ってくる戦いだ」

「蛇口を握るって、そんなに悪いこと?」

 ツユリが、機体の脚部に寄りかかりながら言葉を発した。

「エクレシアは、“奪い合いになるからダメ”っていうけどさ。こっちは奪い返したいんじゃなくて、
ただ“止められたくない”だけなのに」

 シラハが、コンソールに指を走らせる。
 Gate-E の立体モデルが、空中に浮かんだ。

「Gate の外から、強制的にかけられた圧を、
 先生が一回だけ剥がしてくれた。
 今は、そこに細い隙間ができてる」

 Gate と蛇口ラインの間に、淡い光の筋が一本見えた。

「ここを、もう一度握れるかどうかが、今日の勝負」

「握る側が増えるほど、争いになるってあっちは言う」

 ツユリが、少し肩をすくめる。

「どう返す?」

 オトワは、一問の端末を見た。

「一問。港湾側は?」

《雪浦港湾局──》
《斎藤・麻耶より:全蛇口ラインの一時開放許可》
《港湾兵器:対艦・対軌道兵器ともに起動準備》

《斎藤ログ:『あんたらが“水を守る”って言うなら、港は“通す”方向で付き合う』》

 モンジュがふっと笑う。

「大人が、正面からそう言ってくれるだけでもう反則だな」

「じゃあ、こっちはあいつらに世界の言い分を通す」

 オトワが言った。

「エクレシアは、“安定”って言葉で、
 蛇口を絞ってきた。
 世界全体のためって理屈も分かる。
 でも、その“世界”に、うちらの喉の渇きは含まれてなかった」

 カナネがうなずく。

「選ばれた人の数字で、
 あたし達の水の量が決まるのは、
 やっぱりイヤだ」

 一問の HUD に、新しいログが開く。

《作戦名:last Water WAR/SEED-04 自主防衛戦》

《指揮:IMON・Monju》
《主戦力:蒼環高校防衛機四機/雪浦港湾局》

《目的:Hydra Phase-III 指令系の完全遮断》

 一問が、一行を追加する。

《備考:この戦闘中に観測される“名づけられていない揺れ”は、すべて別枠で記録する》

「それ、誰のアイデア?」

 モンジュが目を細める。

《提案者:未登録》

 一瞬だけ、ハンガーの空気が冷えた。

 ツユリが、首筋をさすった。

「……誰かに見られてる感じ、しない?」

「Gate の向こうからか、
 それとももっと外からか」

 シラハが、立体モデルを閉じる。

「どちらにせよ、やる事は決まっている」

 その言葉に、モンジュが笑った。

「じゃ、記録係はいつも通り俺ってことで」

 オトワは、ペンダントのほうを一度だけ見て、背を向ける。

「先生。あんたの開けた隙間、今日は俺たちが使うよ?」

「使い方、間違えないでよ」

 ツユリが、軽く拳を突き出した。

「生きる場所を守るために」

「分かってる」

 オトワは、その拳に自分の拳を合わせた。

「行くぞ」

 四人は、それぞれのコクピットに駆け上がる。
 機体の起動音が、ハンガーに重なっていった。

Gate-E 外周・開戦前

 Gate-E の上空は、雲より先に「線」が走っていた。

 蛇口ラインの集約ノード。
 循環湖から雪浦港へと水を送る巨大な中継塔。
 その真上に、光の輪が幾重にも重なっている。

 蒼環高校の四機は、その輪の少し外側の軌道を取っていた。

《IMON:最終チェック》
《ツユリ機──外周泡幕ユニット:VENT/フル展開可能》
《シラハ機──位相反転 SEAL/逆流 FLIP:安定》
《カナネ機──同期コア:蛇口ラインとの共鳴率 0.93》
《オトワ機──刺突フレーム:Gate-E コアまでの貫通ベクトル確立》

「聞こえる?」

 ツユリの声が、共通回線に乗る。

「ちょっと心拍数上がってるようだけど、平気」

「数えようか?」

 シラハが重ねる。

「余計に早くなるからやめて」

 カナネが笑う。
 いつも通りだ。

「……でも。怖いのは、ちゃんと怖い」

 オトワは、視界に Gate-E をロックしたまま言う。

「怖いままで行こう」

「そうそう」

 モンジュの声が、別チャンネルから入ってきた。

「怖くないって言い出したら、それはどっか壊れてる。
 怖いってちゃんと観測できてるうちは、まだ大丈夫」

《Monju:港湾局との回線確認》

《雪浦港湾局/斎藤:こちら Gate-E 下の蛇口群。
 全ラインの一時開放準備完了》

《麻耶:EX-Unit のカウンター来た場合、
 こっちは“水圧”で押し返します》

「心強いね」

 ツユリが、港の方向をちらりと見る。
 湾岸から伸びる蛇口ラインが、脈のように光っていた。

《IMON:作戦概要・最終共有》

《第一段階──Gate-E 外周の圧を VENT/SEAL で拡散・固定》
《第二段階──蛇口ラインから逆流を FLIP/ROUTE で送り込み、
 Hydra 指令系 BRIDGE を切断》
《第三段階──残った指令系は、港湾兵器で物理的に破壊》

《目的は、“蛇口をこっち側に戻す”こと。
 エクレシアを完全に壊すことではない》

「壊したいけどね、正直」

 ツユリが小さくこぼす。

「それも、言ったって、ログに残るからな」

 モンジュが返す。
 全員が笑う。

「ま、“壊したい”って思ったことは消さなくていいけどね。ただ、どこで止めるかも一緒に残しておかないとね」

「……了解」

 オトワは、スロットルに手をかけた。

「一問。合図を」

《IMON:Gate-E 外周──HYDRA:PULSE/β 変調開始》

《0.10Hz の先行拍に、こちらのリズムを重ねる》

「音、合わせに行くよ」

 シラハの言葉とともに、
 四機の姿勢制御スラスターが、一斉に火を噴いた。


Gate-E 上空・接触


 Gate-E の輪郭が、視界いっぱいに広がる。

 白い装甲。
 内側で青く光る水系コア。
 そこへ向かって、別の光が落ちてきた。

《警戒:EX-Unit 02, 03, 06 反応》
《EX-05《ラセツ》──上空より接近》

「……来た」

 オトワの喉が、ごくりと鳴る。

 真上から、赤い筋が落ちてきた。
 機体の輪郭そのものが、熱の線で描かれている。

 ラセツ。

 かつて《YAGARASU》と交戦した、火輪の専用機。
 青白い空に、赤だけが異様に濃く浮かぶ。

《公開回線:エクレシア戦術コマンドより接続要求》

「繋げ」

 オトワが言うより早く、一問が回線を開いた。

 音が落ちてくる。
 冷たい、だがよく通る声だ。

『SEED-04 防衛機──聞こえるか』

 火輪。


「聞こえてる」

 オトワは、視線を逸らさずに答えた。

「Gate-E の外側からね」

『外側に立つのは、いつも子どもだな』

 火輪の声に、僅かな嘲りが混じる。

『この世界は、そうやって何度も自分の首を絞めた。
 蛇口を奪い合い、汚染し、戦争を呼んだ。
 それを止めるために、Hydra はある』

「“止める”って言って、
 今は誰の首を絞めてる?」

 オトワが返す。

「うちらの循環湖だろ。
 雪浦の港だろ。
 先生が、命賭けでひねったあの“喉”だろ」

『理解しているはずだ』

 火輪の声は、揺れない。

『世界全体の水は増えていない。
 蛇口だけが増え続ける。
 ならば、少数の蛇口に集中させ、
 管理された安定を保つしかない』

「じゃ、質問」

 ツユリが、口を挟んだ。

「その“少数の蛇口”に、
 私たちの喉の渇きは含まれてる?」

 短い沈黙。

『……今は、含まれていない』

 火輪はあっさり認めた。

『だが、構造が完成すれば、
 SEED-04 にも“正しい”配分が戻る』

「それ、いつ?」

 カナネが言う。

「明日? 十年後? 百年後?
 それまで、あたしたちはどのくらい我慢すればいいの?」

『我慢の量は、世界全体で測られるべきだ』

 火輪が応じる。

『お前たちの不満だけを基準にするわけにはいかない』

「じゃあ」

 シラハが静かに言葉を継いだ。

「世界全体の“安定”って、
 誰が決めてる?」

 構文ホールで聞いたのと同じ問いが、
 別の場所から投げられる。

『エクレシアだ』

 火輪の答えは、迷いがなかった。

『揺らぎを測り、配分を決めるのは我々だ。
 それがこの時代の役目だ』

「その“揺らぎ”の中に、
 私たちの怒りも、恐怖も、
 “イヤだ”も入ってるの?」

 ツユリが言った。

「それとも、
 最初から“雑音”として削られてる?」

 わずかに、火輪の気配が変わる。

『……揺らぎを、全否定はしていない』

 別の声が割り込んだ。
 識然だ。
 構文ホールからの声が、直接戦場に重なる。

『ただし、測る必要がある。
 どの揺らぎが“世界全体”を壊し、
 どの揺らぎが、新しい構造へつながるのか』

「なら見ててよ」

 オトワが遮る。

「今日の戦いを。
 SEED-04 が“自分で水を守る”って、
 どういう揺れ方をするのか」

『……それを、観測しに来ている』

 黙照の声が重なった。

『ただし、観測の後に“処理”が続く。
 Gate-E 封鎖。
 SEED-04 コア水系に対する一次照準攻撃《SUNFALL》。
 その結果も含めて、記録する』

「この世界を、焼く気?」

 カナネの声がわずかに震えた。

『違う』

 火輪が言う。

『お前たちが選んだ“戦い方の結末”を、
 そのまま突きつけるだけだ』

「だったら──」

 オトワは、わざとゆっくりと言葉を選んだ。

「こっちも“結末”を突きつける。
 Hydra の蛇口を、
 お前らの手から引き剥がす結末を」

『子どものまま、世界に噛みつくか』

「子どもだから、噛みつけるんだろ」

 オトワの声は静かだった。

「大人みたいに、“諦める方法”なんてまだ覚えてないからさ」

 数秒の沈黙。
 やがて、火輪の機──ラセツの剣が、微かに動いた。

『よかろう』

 火輪が言う。

『SEED-04。
 お前たちの“水の戦争”を、
 最後まで見届けてやる』

 その言葉と同時に、
 Gate-E の外周に並ぶ EX-Unit の砲門が一斉に開いた。

《警告:HYDRA 指令系より Gate-E 周辺へ一斉火力集中》
《第一波:圧縮水柱+高エネルギービーム混合》

「ツユリ!」

「分かってる!」

 ツユリ機の外装パネルが展開し、
 循環湖から引いた水が、薄い膜となって広がる。

「泡幕──VENT、フル展開!」

 透明な幕が、Gate-E と四機の間に膨らんだ。
 次の瞬間、EX-Unit から放たれた白い柱がそれを叩く。

 音が消える。
 圧だけが、機体の骨を通じて伝わってきた。

「シラハ!」

「入口は押さえた。……今度は出口」

 シラハ機のセンサーフレームが光る。
 Gate-E の輪郭に沿って、逆位相のラインが走った。

「SEAL──Gate-E 外周の“締め付け”を凍らせる。
 FLIP──蛇口ラインに、逆流の道を作る」

《IMON:蛇口ライン側──逆流ルート確立》
《港湾局:全蛇口、開放!》

 斎藤の声が回線に響く。

「お前たち!今だ!!開けろ!!!」

 湾岸の蛇口群が一斉に開いた。
 水が、Gate-E に向かって逆流する。

「……これが、うちらの“圧”」

 オトワが、機体を前に押し出した。

「Hydra の喉元に、
 SEED-04 の水を突っ込む」

 四機が一斉に加速する。
 Gate-E の輪が、目の前で歪んでいく。

 そのときだった。

《IMON:異常観測──Gate-E 軸上に“未ラベル揺れ”発生》

《Hydra ログ:該当データなし》
《Gate ログ:該当データなし》

《第三観測:ソース不明》

「……誰?」

 カナネがつぶやく。

 Gate-E の中心、
 水と光と圧がぶつかる一点に、
 薄い影が立ち上がり始めていた。

 像と言うには形を持たず、
 ノイズと言うには、あまりに静か。

「一問?」

《IMON:ラベル提案──”Nameless”》

 一度だけ、その文字が HUD に浮かぶ。
 すぐに、入力は打ち消された。

《備考:まだ、決めるには早い》

 次の瞬間、EX-Unit の第二波が泡幕を貫いた。

《警告:Gate-E 外周、圧上昇》
《Hydra 指令系:SUNFALL 搭載衛星の位置調整を開始》

 オトワは、スロットルを最後まで押し込んだ。

「ここからは──SEED-04 のやり方で行く!」

 四機と蛇口ラインの逆流が、
 Gate-E の中心へと突き刺さっていった。

つづく

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