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木の上の軍隊─沖縄戦をウチナンチュが撮ることの意義と山田裕貴に見たウチナンチュのマブイ 沖縄出身平一紘監督作品


沖縄戦から八十年、祖国復帰から53年。

自分の側にいる大切な人に、今は亡き者へ
「マブイ(魂)拾いに行って来ようね。」
と伝えたくなる、そんな映画だった。


生き残っても魂を何処かに落としたまま。
戦後八十年、沖縄は取り残されたまま。

言語化して伝えられないこの感情を、伝えてほしいことを映画が描いている。

沖縄を
沖縄戦を
沖縄出身者が撮った初の映画
本当の死は誰も思い出す人がいなくなった時。
だから忘れてはならんよ。
生きる自分達がマブイグミするよ。

朝起きて息子が布団で寝ている。
それだけでありがとう、幸せなことだと教えてくれた映画だった。


小中学校時代慰霊の日前に図書館に沖縄戦のパネル資料が並ぶ。
銃で撃たれ崩れ落ち折重なる老人、子ども達住民、日本兵の亡骸。
記録写真が実話を基にした映画として再現された映像、正直観るのが苦しい。
僅かな差が生死を分ける残酷さと理不尽さ
観るのが苦しい映画、だからこそ知ってほしい。

観終わってすぐには語彙が見つからない。

安慶名セイジュン(山田裕貴さん)

山田裕貴さん演じた安慶名がどっから見てもうちなんちゅだった。
温厚で無邪気な沖縄のどこにでもいる青年。友達も子どもにも老人にも優しいいちゃりばちょーでーな青年が初めて見せた死ぬ事も厭わぬ怒り。
もしかしたら本土では意味が伝わらないかもしれない。


そのエピソード描かれたものは沖縄の歴史、民俗、生活に根差した今も残る信仰なの。WOWOWドラマ「フェンス」でも描かれていたね。
蔑ろにされた沖縄の心、怒りを山田裕貴さんは表現した苦しい場面だったけど同時に伝えてくれてありがとうね、弔ってもらったそんな気持ちになった。

ヒノカン(火の神)


山田裕貴さんにしか安慶名は出来ん、演じることができなかった。

山田裕貴さんが安慶名たる所以
台詞は書かないけど…
上官に対して安慶名精一杯の敬語

うちなんちゅの心を現す台詞沢山あるけど方言でもない共通語に一番ウチナーグチ、沖縄の心を感じた。

まくとぅそーけーなんくるないさーという言葉が現す
「まくとぅ(真)」
真心そのものだった。

平一紘監督の前作ミラクルシティコザの新垣晋也さんの台詞「越来」が真っ先に浮かんだ。
腹の底から湧く言葉にならない声。
言語化が難しい。山田裕貴さんに感じたうちなんちゅの魂、そこだった。超個人的な伝わりにくい所感だけど、安慶名は山田裕貴さんしか出来ん。

山田裕貴さんの演技に見た言語化できない凄みは既に平一紘監督が答え書いていた。

〝人が生きていく中で心の何処かで無視してしまう『揺らぎ』を、見事に肉体で、そして声で表現しきった裕貴さん。果てしなく濃密な時間を切り取らせてもらいました。〟
https://x.com/project9dainama/status/1866817038381093144?s=46&t=iZUVGIAn6bzHCJ4dYfk9lQ

山田裕貴さんが演じる安慶名に宿るうちなんちゅの心。

5回目の鑑賞で思いを言語化できた。

山田裕貴さんのイントネーション
ただのウチナーイントネーションではない。
二重に練られている。山田裕貴さん自身がこれを考えたのか方言監修があったのか。

恐らく他の出演者や別作品を観たら凄さが分かるはず。監修があってもこれを表現できる人、他にいない。

山田裕貴さん演じる安慶名のウチナーイントネーションはある意味バイリンガル。
沖縄の人が精一杯、本土の人に「共通語」として伝えようとしている言葉なの。
単なる沖縄のイントネーションではない、さらに難易度高い。

これが自然に口から出てくる
安慶名は山田裕貴さんしかできない所以。

そして安慶名の幼馴染与那嶺役の津波竜斗さんのウチナーイントネーション。

与那嶺(津波竜斗さん)


これまた逆で、難しい匙加減が要求される。

顔も姿も純うちなーんちゅな津波竜斗さん、沖縄の歴史偉人顔な津波さんがまるまるウチナーイントネーションで喋る訳にはいかない。

津波竜斗さん 
琉球の歴史本に載っていてもおかしくない面構え


https://x.com/matecha7/status/1936358655475302700?s=46&t=iZUVGIAn6bzHCJ4dYfk9lQ

津波竜斗さんは山田裕貴さんのウチナーイントネーションに合わせている。
本土の人達にも聴き取りやすいように共通語のニュアンス入れている。
本当はムル(全て)ウチナーイントネーションで出来たはず、山田裕貴さんのウチナーイントネーションとの掛け合いの自然さを優先しているように思う。


安慶名の台詞で一番沖縄を感じたシーン。

堤真一さんが演じる上官の命を繋ぐ為に安慶名がついた

「優しいウソ」

バカ正直で真っ直ぐな安慶名は幼馴染の親友与那嶺にそれができなかった。
あの過酷な中で出来るわけがない、自己犠牲や献身の心を引き裂き命を奪うのが戦争という残酷さを突き付けた。


息子8歳と鑑賞したが…
このあと起きるガマの悲劇から怖くなり退場した。


山田裕貴さんの
ウチナーイントネーションの凄み


安慶名が「本土の人が頑張って沖縄イントネーションに似せようとしている安慶名」だったら沖縄の映画館にお客さんこんなにいないはず。

沖縄の人は言わんだけで厳しい。

似せている、ならまだマシ
偽物やしぇ、沖縄利用しないでって。


安慶名の幼馴染、与那嶺(津波竜斗さん)

与那嶺(津波竜斗さん)
木の上の軍隊 沖縄俳優陣!

平一紘監督は仲がいい、馴染み。そんなの抜きでキャスティングしてるのではないか。

「沖縄の縁故採用社会の圧、関係無し。
良い作品を創りたい、そこに自身を高めるべく研鑽を積む俳優が集う。
同窓会的な再集結じゃない、撮るべくして撮った沖縄戦。」

公開前にTwitterでこう書いちゃったけどファンの実際の気持ちは複雑である。
好きな監督が羽ばたく大作のチャンス、ネームバリューが沖縄出身俳優では足りないのだろうか、圧が掛かったのでは?頭の中にはネガティブな考えが浮かぶ。

沖縄出身実力もあるのに何で津波竜斗さんが主役じゃないかねーって思ってたけど…


平一紘監督作品に通じるもの

沖縄の日常、アメリカ世時代、あの世、グソーの世界。
ジャンルは多岐に渡り作品ごとに撮られるカラーは違えど沖縄のごくありふれた日常の大切さ、美しさを教えてくれる作品ばかり。

沖縄だからこその映像や文化をオーバーも過不足もなくありのままに撮れる平監督の手腕。

一本の糸、何気ない日常や、交わした言葉、忘れさられるような小さなやり取りが繋がり編みこまれ一本の紐、綱となる。
そこに怖さや希望、愛を見出し観た人の心を揺さぶる。

これから二人でケアンを置きに
琉球トラウマナイトレジェンド2023
琉球トラウマナイトレジェンド2023
琉球トラウマナイトレジェンド2023
琉球トラウマナイトレジェンド2023
琉球トラウマナイトレジェンド2023
ミラクルシティコザ
ミラクルシティコザ
ミラクルシティコザ
釘打ちのバラッド(予算7万円自主制作)
琉球トラウマナイトレジェンド2022
琉球トラウマナイトレジェンド2022


平一紘監督の映画、ドラマ全ての根底にあるもの。
人と人の繋がり。繋がりに絶望し足掻き苦しむ人、救われる人。フィクションの中の登場人物なのに感情移入してしまうのは「何処かにもしかしたら存在する誰か」を丁寧に描いているから。

観たら分かった。

安慶名は山田裕貴さんしかあり得んし、与那嶺は津波竜斗さんしか出来ん。

キャスティングに出身は関係ない、が自論だけど与那嶺の辿る運命、これは絶対に津波竜斗さんしか出来んかった。
観たら分かる、沖縄出身の津波竜斗さんが主人公の安慶名ではなく幼馴染与那嶺を演じたか。

沖縄戦の映画だが主演俳優は県外出身
県出身の俳優にという声。

堤真一さん、山田裕貴さん
映画に懸ける熱量。実話の映画化、戦争体験者への敬意。
虫を食べ飢えをしのぐエピソードはCGじゃなかった。
撮影と言えど蛆虫を実物を食らう。
体験者の苦しみを知ろう、伝えようとする思い、心の底から湧き出る台詞から伝わるシーンの数々。

https://x.com/project9dainama/status/1935658671188644204?s=46&t=iZUVGIAn6bzHCJ4dYfk9lQ

上官山下(堤真一さん)
堤真一さんが演じる上官。

上官山下(堤真一さん)

大半の沖縄県民がクソ上官だと思いながら観ていたのではないか。山田裕貴さん演じる安慶名と過ごす中で明かされる過去や胸の内を知るにつれそんな思いは払拭される。

堤真一さん演じる日本兵の上官。伊江島の人達を酷い扱いしてクソ上官ひゃーと思いながら観ていた。戦後80年。
沖縄と日本兵、本土。隔たり。
そんな日本兵の役を堤真一さんが引き受け演じた。正直日本兵の思い知ろうとも、知りたいとも考えた事はなかった。

堤真一さんが演じた上官、日本兵。
一人の人間だった。
日本兵は立派だった、そんな日本賞賛映画じゃない。
ましてや沖縄が舞台で沖縄戦を撮った映画。完全アウェイ、ホームじゃない。

大変な、重たい役を引き受けた堤真一さん。
沖縄と本土の隔たりを残酷さを表現しながら、その隔たりを安慶名と山下上官「二人だけの軍隊」が繋いだ。

息子に私自身の息子を重ねて震えて泣く。
拙い、出来が悪い息子と謙遜なのか本気で思っているのか上官は言う。

映画のあの子に我が子が重なる
息子もあぁして呼んでいたよ。

上官の呼ぶ「安慶名」の名を聴きたくて何度でも映画館に足を運ぶよ。

沖縄の映画館 実際着用した衣装


戦争映画としての木の上の軍隊

2000ヤードの凝視」を描いた従軍画家トム・リーの作品
Wikipediaより


山田裕貴さんの演技。映像の世紀第2集の「大量殺戮の完成 塹壕の兵士たちはすさまじい兵器の出現を見た」で塹壕兵が度重なる砲撃の神経の疲労症状で全身が震えている実際の映像そのままで戦慄した場面がある。

山田裕貴さんの演技にみた
「1000ヤードの凝視」
https://ja.wikipedia.org/wiki/1000%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%89%E3%81%AE%E5%87%9D%E8%A6%96


日本兵を演じている三人は沖縄出身の俳優である。

沖縄出身の中尉・松尾(尚玄さん)
池田中尉(岸本尚泰さん)
上官以上に酷い日本兵。いざとなったらサバニで…
上官の部下(山内和将さん)

映画を5回観たがいまだに彼ら日本兵の安否が分からない。
振り向いたら死んでいた。立ち上がった瞬間狙撃された。昼間だった原っぱがいつのまにか夜にり暗闇の中どんどん死にゆく。

本島から伊江島へ徴兵された
長田(玉代㔟圭司さん)

長田(玉代㔟圭司さん)

「木の上の軍隊」山田裕貴さん演じる安慶名への台詞、さらっと言っているが恐ろしい。
長田の執念、彼は自身の悲劇すらさらっと言ってしまう。

平監督が玉代㔟さんに演じてほしいと配役したのも納得だった
https://x.com/project9dainama/status/1929738085606236497?s=46&t=iZUVGIAn6bzHCJ4dYfk9lQ


沖縄の信仰 心

地域の火の神 
自治会や近隣の人により拝所は守られています。

映画公開前に地域の火の神、水の神に御願した。
沖縄戦の実話を元にウチナーンチュ、コザの監督が作った映画。
この映画は沖縄戦や沖縄の歴史、民俗や信仰を知る機会や命を繋ぐ大切さを教えるきっかけになるはずだから、どうか映画の成功を見守ってくださいとお願いした。

沖縄と御願(ウガン)
若い人はやらないけど…今も御願所は自治会や地域子孫により守られている
沖縄に根付く信仰、風習
なぜ温厚な安慶名が怒ったのか
山田裕貴さんの演技はそれを知らなくとも大切なものを奪われた、踏み躙られた事を表現していた。沖縄を知るきっかけになってほしい。


朝起きて台所のヒノカンを見て、仏壇の位牌を見て気付いた。

捨てられた位牌、トートーメーが意味するもの。
踏み躙られ捨てられた沖縄の心

だけじゃなかった


風習遠のく現代沖縄、うちなんちゅでさえこのシーンが示す沖縄戦の過酷さを読み取るのは難しいかもしれない

山田裕貴さんの演技がそれに気付かせてくれた

糸満市一家全滅の屋敷跡 仏壇


糸満市 一家全滅の屋敷跡【戦跡を歩く】
https://www2.nhk.or.jp/archives/movies/?id=D0001860074_00000



追伸

ロケ地今帰仁の海
一度見たら忘れられない。
カメオ出演 山西惇さん演じる宮城さん
異常な完成度のエキストラさん
好きなシーンのメイキングです

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