☑岩手に琥珀を掘りに行った日。久慈琥珀博物館🐝📒
・琥珀におさない頃からあこがれていた。時間を閉じ込めた石。黄金の、飴色の、蜜色の艶。太陽の欠片、地中深くの冷たい睡り。
・夏の東北旅。中高からの友人Kと五日間、青森、岩手、宮城、福島を回った。まとめて東北旅の日記もあげたいけど、
今回は久慈琥珀博物館での、琥珀採掘体験に絞って書く。



15:00-16:00の最終枠で採掘をする前に、琥珀博物館内でさまざま学んだ琥珀の美しいところをまず書きます。


学んだこと。
・琥珀の主成分は炭素。そのため、火に当てたり高温を加えれば琥珀もダイヤモンドも燃える。琥珀は燃焼時に機脂特有の香りを放ち、洋の東西を問わず古くからお香や線香として用いられた。
・中世ヨーロッパでは、琥珀が推奨と同じ屈折率(1.54~1.55)なので、水晶やガラスと同様に加工して、顕微鏡レンズ、ルーペなどに用いた。
・世界で今も琥珀採掘が実施される主な産地はバルト、ドミニカ、メキシコ。それぞれ約5000万、3800万、3000万年前が採掘できるが、岩手久慈の琥珀は約8700年前の中生代白亜紀後期恐竜時代に属し、最古年代の琥珀である。
・世界最大の琥珀産地として有名な北欧の地、バルト海沿岸諸国。この地では、1万年以上前の遺跡から琥珀で太陽を形どった円盤状のお守りが数多く発見されている。
・太陽に対する憧れの強い凍てた大地、その海岸から日常的に拾える陽光の輝きの琥珀。琥珀が太陽の象徴とされたことは想像に難くない。琥珀は太陽に纏わる神話や人魚の伝説に多く登場する。
以下、二つの太陽の逸話。
『昔々、空に太陽は1つではなく2つあった。片方の太陽は巨大で重く、ある時、空は片方を支え切れなくなって海に落としてしまった。海に落ちた太陽は冷え固まり、海底の岩に砕かれ小さなかけらになって飛び散った。それ以来、波が海底から湧き上がり、大小の太陽の石のかけらを海岸に運ぶようになった。それが琥珀である。』
・「琥珀」の文字は漢語である。
中国では古くから虎が百獣の王として神格化され、死ねばその魂は地中に入って石になるとじられていた。
虎の魂魄(こんぱく)、それに玉偏を付けて琥珀と書く。
・宝飾に用いる琥珀(Amber)は、数千万年前~約1億年前の地上に繁茂していた樹木の樹脂が、地中に埋もれて化石化したもの。琥珀になる条件として、風化する以前の樹脂の塊が、大雨などで土砂とともに川底や海底まで押し流され、地中深くに密閉保護されることが必要である。
ほとんどの樹脂は風化して無くなり、琥珀として残るのは偶然に選ばれたもののみである。
・館内には琥珀の説明とともに、琥珀を使用した宝飾品や作品が並ぶ。琥珀を使用したチェス盤が美しい。透明な飴色の駒と、半透明な黄金色の駒が戦っており、チェス盤は黄色と茶褐色の琥珀が交互の格子柄になるよう配置されている。闘わせてみたい。相手の指が駒をどこに降ろすかに見惚れてみたい。 『猫を抱いて象と泳ぐ』(小川洋子著)を読んでから、チェスのことを神聖視してしまっている。
虫入り琥珀の展示も多く、大変満足な展示だった。
















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谷川俊太郎は、琥珀を『透き通った時間のかざり窓』と表し、
宮沢賢治は『あけがたの琥珀のそらは 凍りしを大とかげらの雲は浮かびて』という短歌を残している。
館内に琥珀とともに言葉が飾られていた。
透かせば一億年の時が通して見える琥珀。虫入り琥珀からの連想か、夜明けに浮かぶ雲、橙色に染まりゆく空を、大とかげ(恐竜)が閉じ込められた琥珀に喩えた歌。
琥珀は暖色でとろりとして、どうしてもあたたかな印象を持つ。だが、地中深くで冷たく睡る、古い時代が閉じ込められた凍った印象をこの詩と短歌で新たに与えられた。宮澤賢治は、心象スケツチの春と修羅で
『蜂が一ぴき飛んで行く 琥珀細工の春の器械』
とも書いている。これも素晴らしい。


以下は、炎天下に照らされながらスコップと鏨(たがね)で地層を黙々と掘った感想。
・博物館から送迎バスが出ており、数分で『採掘体験場』という黄色に青字の立て看板が掲げられた山奥に着く。小さな小屋があり、その横に25mプールより広い空間にブルーシートが貼られた剥き出しの地層がある。深さは5mくらいだろうか。丁寧に整えられた体験施設というより、本物の採掘場面にお邪魔しているという感じで大変嬉しい。軍手と靴カバーを嵌め、採掘場に降りスタート。
当たり前に暑いが、どうしても自らの手で掘った琥珀を持って帰りたい。鏨を土に差し込み、起こす。スコップで土を払う。
全く見つからないでいると、解説員の方が寄ってきて、地層の黒い線を指してここを掘るといいと教えてくれる。ここでは琥珀のほかにジェット(黒い琥珀とも呼ばれ、樹木の化石で喪服に纏われることが多い漆黒の宝石)も採掘される。樹脂と樹木はともに眠ることが多いため、地層に黒い線があれば近くに琥珀がある可能性も高いというわけだ。
掘る。見つからない。掘る。全然見つからない。
普段リモートワークにかまけ、大手町地下直結オフィスで働く会社員なので太陽光線で朦朧としてくる。


邪魔なのでポニーテールではなく三つ編みにすべきだった。
見つからない、とこぼすと、友人Kが「ここに来てみて」と呼んでくれる。隣に行くと、2,3回鏨を掘っただけで小さな琥珀が転がってきた。驚く。更に掘り進めると、小粒ではあるがどんどん見つかる。



スポットでこうも違うのか。
Kの見つけた場所なので実質Kの琥珀では、と思うが、遠慮せず掘るよう言われ有難く黙々と掘る。
とろっとした飴色の琥珀や、小さいが透明度の高いかけらの琥珀がいくつも見つかったところで時間になる。
全く見つからなかったときも、2㎜ほどの欠片が参加賞として数粒貰えるのだが、やはり自分の手で地中から見つけたかったからここに来たのだ。
Kに何度もお礼を言う。Kも透明度の高い琥珀を掘り、二人満足して帰りの送迎バスに乗り込む。

・ショップで琥珀を買おうかな、とも思ったが自分の掘った琥珀に満足しすぎてやめた。
物語のようだけど、博物館併設のショップの中に琥珀色の猫がうろついていた。黄色がかった茶虎で、床に長く伸びており、常連さんに撫でられている。ショップの事務所で飼われている猫らしい。猫に別れを告げ、その日の宿へ。
宿にて、風呂上りの手遊びに琥珀の土を払って濯いでいると、Kが髪を乾かそうかと言ってくれた。
私の髪は長く、膝を抱えて座れば床につく。乾かしてもらっている間、Kの琥珀も丁寧に濯いで土と選り分け、袋に詰めた。
Kは尾てい骨まで触るような髪をすっかり乾かして梳かし、三つ編みにして遊んでみてくれた。明日の朝もしてほしいと頼む。
自分でもできるが、後ろに回す三つ編みは人にやってもらった方が綺麗だ。
なんていい日だろう、と思った。
私は中高で文芸部の副部長だったが、卒業前の最後の部誌のなかで琥珀を題材にした小説を書いた。なつかしい。憧れが最もよい形で現実に持ってこれた。
ふかふかのベッド、広い部屋。少し良い宿。
その日は深く眠った。
補足:
♢琥珀の世界三大産地。
バルト海沿岸、ドミニカ共和国、久慈市
♢日本の三大琥珀産地。
岩手県久慈市、福島県いわき市、千葉県銚子市
いわき市アンモナイトセンターの採掘体験や銚子の海岸での琥珀拾いもありますが、琥珀に絞って言えば岩手久慈の発掘体験がもっとも可能性が高いと思います。
202604追記:
御徒町をぶらぶら歩いてたらコパル(Copal)(見た目は色が薄い琥珀)を見かけた。
コパル(Copal)と琥珀(Amber)はどちらも樹木の樹脂が固まってできた「樹脂の化石」だが、
一般的に、数千万年以上経過したものを「琥珀」、それよりも若く(数百万年〜100万年以内)、完全な化石化が進んでいないものを「コパル」と呼ぶらしい。3,000万年以上経過しないと完全に化石化しないから、「半化石状態でまだ樹脂の性質が残っている琥珀」を指すらしい。
ヤングアンバーとも呼ばれ、柔らかいからアクセサリー加工には向いてないらしい。へー。
博物館内展示にも書いてあったかな?読み飛ばしたかも。御徒町を散歩すると石の学びがあってうれしい。
