見出し画像

「AI活用が進む人・進まない人」の差を、勉強会では埋められなかった—メンバーの提案から生まれた業務効率化フィードバック会

「できるのは分かった。でも、私がそれをどう使えるのか」

先日の社内オフライン会で、AI活用を進めるための新しい試みをやってみました。業務効率化フィードバック会と名づけた会です。

やったことはシンプルで、各メンバーが自分の担当業務をみんなの前で発表し、それを聞いた他のメンバーが「その業務ならAIをこう使える」とフィードバックし、その場で実際に手を動かして試してみる——という流れの会です。1人あたり40分、2グループに分かれて実施しました。

結果が想像以上に良かったので、なぜこの会を企画したのか、実際に何が起きたのかを書き残しておきます。

まず、この会の価値を的確に言い表していた、参加メンバーの言葉から紹介します。

「『AIでこんなことができる』という話を聞くと、すごいと思うんです。ただ、それが自分の業務のどこに使えるのかが分からない。『できるのは分かった。でも、私はそれをどう使えばいいんだろう』というところで止まってしまうんです」

これは会が終わったあとに聞いた感想ですが、まさに私たちが1年以上ぶつかっていた壁を言い当てていました。

これまでやってきたこと:全社導入、AIハッカソン、勉強会

シーラベルでAI活用を全社に広げる取り組みを始めたのは、2026年の3月です。それまでは少人数しかClaudeを使えていない状態だったので、まず全社員にアカウントを共有しました。

そこから最初にやったのがAIハッカソンです。半日4時間ほどを強制的に確保して、「好きなものを作ってみよう」「自分の業務の課題をAIで解決してみよう」というテーマで、全員が手を動かす場を作りました。これを社内で2回開催しています。

並行して、SlackにAI情報共有のチャンネルを作り、日々のナレッジをシェアする運用も始めました。私自身も代表として、事あるごとに「AIを使おう」と発信し、誰がどれくらい使っているかをモニタリングして、活用を促してきました。

この間に、私自身の活用も進みました。全体のタスクが以前の2〜3割の時間で済むようになり、クライアント支援では、これまで工数的に出せなかった解析データや踏み込んだ情報提供までできるようになりました。営業でのお客さまフォローも、より個別に対応できるようになっています。この経験を、社内勉強会で共有してきました。

それでも埋まらなかった、活用レベルの溝

ここまでやっても、活用のレベル感は人によってまったく違ったままでした。

チャット形式で使うところで止まっているメンバーがいる。GeminiやGASは使うけれど、Claudeはどう使えばいいか分からない、というメンバーもいる。AIハッカソンをもう1回やったとしても、「使う人はどんどん使って慣れていくし、使わない人は使わないまま」という構図は変わらなさそうでした。

勉強会で共有した情報についても、同じことが起きていました。人によって担当業務が違うので、聞いた内容を自分の業務に置き換えたとき、どう操作して、どう進めればいいのかまでイメージが持てないのです。

代表として発信を続けても、私自身が主導で企画を立てても、この溝は埋まりませんでした。個々のメンバーの「使えない」「イメージが持てない」というところを、私1人でフォローするのは無理があった、というのが正直なところです。

メンバーの提案から生まれた「業務効率化フィードバック会」

この課題感を社内で相談したところ、あるメンバーからこんな提案が出てきました。

「各自が普段どういう業務をしているかを、みんなの前で発表する。それを聞いた人が『それならこう使えますよ』『Claudeでこう入力すればここまで任せられますよ』とフィードバックする。そして、その場で実際に手を動かして試す」

この提案をもとに設計したのが、業務効率化フィードバック会です。

進め方は、1人あたり40分。

  • 発表 10分:担当しているプロジェクト(今回はなるべくクライアントプロジェクト)をいくつかピックアップし、稼働記録シートをベースに、具体的にどういう業務をどう実施しているかを説明する

  • フィードバック 10分:より効率的・効果的な進め方のアイデアを、聴講側からフィードバックする

  • 実践 20分:フィードバックで出た方法を、実際にその場で試してみる

シーラベルは業務委託を除いたメンバーは社員・役員あわせて11名です。当日は10名が参加し、5〜6人ずつの2グループに分かれて、オンライン部屋とオフライン部屋で並行して実施しました。

設計上の要点は、「実践 20分」を会に組み込んだことです。フィードバックをもらって終わりではなく、その場で手を動かすところまでをセットにしました。

実際に起きたこと:請求書発行業務が、その場で自動化に進んだ

印象的だったのが、バックオフィスで請求書発行を担当しているメンバーの回でした。

発表の内容は、こうです。月次でクライアント収支管理シートから請求書一覧シートを作り、前月分のシートをコピーして当月分を作成し、差分が出たところを手で修正して、担当者に確認を依頼する。確認が済んだら、そのデータをもとに会計ソフト上で請求書を1件ずつ作成し、メールで送信していく——という流れでした。

これに対してフィードバックしたのは、普段はコンサルティングや企画分析を担当しているメンバーでした。バックオフィス業務とは接点のない立場です。

「会計ソフトのMCPとClaudeを連携させれば、請求書の作成自体をチャットで指示できます。それに加えて一括作成の機能をClaudeに指示すれば、Claudeが自動で操作してくれる。送信のタイミングで人が目視チェックを入れる形にすれば、手入力は完全になくなって、チェックだけになります」

そして、実践の20分でどうなったか。

その場でClaudeにカスタムコネクターを設定し、会計ソフトのMCP連携を通し、テストデータを用意して、請求書の作成までを実際に走らせました。1件のテスト請求書が、想定どおりのフォーマットで生成されるところまで確認できました。

「メールの宛先とCCも自動で入れられるようにしたい」という追加要望に対しても、その場でClaudeに指示を出し、Excelに項目を追加すれば対応できることまで確認できています。

会が終わったあとに聞いた、参加者の声

会の終わりに、発表したメンバーに感想を聞きました。

「会計ソフトで1件1件作っていた請求書が、Claudeにお願いしたらExcelの内容から一括で作ってもらえる。それがすごいと思いました」

続けて、こんな話も聞けました。

「勉強会でもAI活用の話は聞いていたんですが、自分の業務でイメージしやすかったのは別の領域でした。今回は『クライアントに関する業務でやりましょう』ということだったので、初めてこの請求書業務を議題に上げたんです」

「『AIでこんなことができる』という話を聞くと、すごいと思うんです。ただ、それが自分の業務のどこに使えるのかが分からない。『できるのは分かった。でも、私はそれをどう使えばいいんだろう』というところで止まってしまうんです。今回はもう、『ここを押すんだよ』『ここだよ』という指差しでやってくれたから、そこがちゃんとカチャっとハマりました」

「指差し」という言葉が、この会の価値を的確に表していると思います。

見えてきたこと

この会をやってみて、3つ気づいたことがあります。

① 代表が主導するだけでは、届かない層がある

これまでは、私自身が主導して「AIをやりましょう」と発信し、勉強会でも率先して自分の活用内容を共有してきました。それ自体は間違っていなかったと思いますが、「使えていないメンバーへの個別フォロー」までは、私1人ではやりきれませんでした。

メンバー同士が相互にフィードバックする形にしたことで、私が思いつかなかったアイデアや、個別のフォローが自然に生まれるようになりました。

② 業務の壁を越えたフィードバックが、機能する

バックオフィスの請求書業務に、コンサルティング担当がアドバイスする。ディレクション業務で経験のあるメンバーが、別事業で走っている若手の詰まりポイントを解きほぐす。

普段はまったく違う業務をしているメンバー同士でも、お互いの業務プロセスには興味があるし、フィードバックできることがある。むしろ、普段の業務が違うからこそ「その進め方はこうできる」という視点が出てくる場面が多かったように感じました。

日々一緒に働いていても、他のメンバーが具体的にどういう手順で業務を回しているかは、意外と把握できていないものです。その解像度が一気に上がる場にもなっていました。

③ 「実践20分」があるかどうかで、結果が変わる

フィードバックをもらうだけなら、勉強会と同じで「聞いて終わり」になります。その場で手を動かし、実際に動くところまで確認したからこそ、「カチャっとハマった」という感覚が生まれたのだと思います。

設定作業の細かいところ——どのボタンを押すのか、どこに何を貼り付けるのか——は、口頭の説明では伝わりません。隣で「ここだよ」と指差してもらえる環境が必要でした。

AI活用の社内推進は、諦めずに企画を変え続けること

社内のAI活用を進めるうえで、AIハッカソンをやればいい、勉強会をやればいい、という単発の施策では届かないところがある——というのが、この1年で分かってきたことです。

それぞれのメンバーが今どれくらい使えていて、何で困っているのか。そこを見ながら、みんなで活用できるようになる企画を、諦めずに設計し続ける。そして、企画を作るのも自分1人ではなく、メンバーの知恵を借りる。

今回の会は、まさにメンバーからの提案で生まれたものでした。私1人では思いつかなかった設計です。

この会は継続していく予定です。次回以降の様子も、また書き残していければと思います。


シーラベルでは、月額制BtoBマーケティング伴走サービス『マーカス』のメニューのひとつとして、マーケティング組織へのAI導入・活用推進支援もご提供しています。「ツールは導入したが、社内で活用が広がらない」という状態は、多くの企業で起きているのではないかと思います。

社内のAI活用をどう進めるか、体制側から一緒に組み立てていきたい方は、ぜひご相談ください。

▼マーカス(BtoBマーケティング伴走サービス)


いいなと思ったら応援しよう!