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10月2日の日記 映画『みんな、おしゃべり!』、急にカレー化する瞬間篇

映画、ドラマの作曲家です。日本アカデミー優秀音楽賞受賞するなどしています。大学教授でもあります。
作曲について、学生の事について思った事を綴っています。

音楽を担当している河合健監督映画『みんな、おしゃべり!』が、東京国際映画祭「アジアの未来」部門に選出された。
長い時間をかけて小石を積み上げるように制作してきたものが、こうして国際的な舞台で取り上げられる事には、やはり特別な喜びがある。

ただ、この「報われる瞬間」を説明するのは難しい。

これって、例えばカレーをつくるのに似ていないだろうか。
最初は玉ねぎを刻んでひたすら炒めるだけ。玉ねぎから立ち上がる玉ねぎの呪いというか、目に刺さる香りに涙を流して、「これ、ほんとに美味しくなるのか?」と不安になる。
そこに肉や野菜を放り込んでも、味見してみれば「ただの謎スープ」。
でもコトコト煮込んでいくうちに、ある時、突然「あっ、カレーになってる!」と気づく瞬間がくる。
映画祭ノミネートの知らせは、まさにあの「急にカレー化する瞬間」

いや、もしかしたら漫画に近いのかも。
何十巻も続く長編漫画を読み続けて、「これ、ほんとに終わるの?」と心配しながらページをめくる。
伏線ばかり増えて、寄り道エピソードが挟まって、「作者も迷子になってない?」と疑いたくなる。
でも最後の巻で全部がつながり、「このために何年も読んできたんだ!」と鳥肌が立つ。
映画祭のニュースは、まさにその「最終巻の最終ページをめくった瞬間」みたいだった。

或いは学校の式典での校長先生の話。
始まった瞬間に「これは長いぞ」と悟り、時計ばかり気にしながら耐える時間。
「これは永遠に終わらないのでは?」と絶望しかけたその時、不意に「以上です」で締められる。
あの瞬間の解放感と報われ感。映画祭からの知らせは、あの不意打ちの「以上です」にも少し似ている。

でも要するに、長く孤独な時間をかけて作ってきたものが、報われる瞬間を迎えた——ただそれが言いたいのだ。
(例えが「これで終わり」みたいなものになっちゃいましたが、映画興行はこれからがスタートです)

その大きな花火を打ち上げる瞬間を迎えた作品『みんな、おしゃべり!』は、監督自身がコーダであるからこそ書ける力強い台詞と意外ではあるけど鋭く普遍的な視座に溢れている。
また、聾者、聴者、日本人、クルド人の間に立ち上がってくる言語の壁、相互の不理解、コミュニケーションの難しさを逆手にとってコメディにまとめている。ラストの「えっ!」という展開も相まって見終わった後は何故か爽やかな気持ちになる。

予告編映像はこちら。

この映画が、映画祭をきっかけにさらに多くの人に届き、タイトル通り「みんな、おしゃべり!」が広がっていくことを願う。
どうぞ劇場で体験してください。

『みんな、おしゃべり!』
公開日:2025年11月29日(土)よりユーロスペース、シネマ・チュプキ・タバタほか全国順次公開
出演:長澤樹、毛塚和義、福田凰希、ユードゥルム・フラット、Murat Çiçek、那須英彰、今井彰人、板橋駿谷、小野花梨
監督:河合健
脚本:河合健、乙黒恭平、竹浪春花
プロデューサー:小澤秀平
企画・配給・製作プロダクション:GUM株式会社
配給協力:Mou Pro.
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
©2025映画『みんな、おしゃべり!』製作委員会

◎《単発上映》
・東京国際映画祭
https://2025.tiff-jp.net/ja/lineup/film/38003ASF01)
10月30日(木)10:30〜
11月3日(月)18:30〜

・東京国際ろう芸術祭
https://shuwanomachi.jp/program30.html)
11月9日(日)12:45〜


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