完璧な合意形成は不可能。他者の意見(変数)に翻弄されず「モック」で人を動かすアーキテクト思考
「色々な人の意見を聞きすぎて、結局どうしていいか分からなくなってしまった…」
そんなふうに、プロジェクトが立ち往生してしまった経験はありませんか?
かつての私は、まさにこの状態に陥っていました。
協調性や傾聴性が高いタイプの方ほど、無意識のうちに周りの意見を聞きすぎたり、考慮しすぎたりしちゃいませんか?
私もそうでしたし、みなさんもご経験あるかもしれませんが、
会議で出た多様な意見(変数)をすべて拾い集めようとすると、議論は発散する一方で、一向に収束しません。
「会議は踊る、されど進まず」(その2)ヽ(´▽`)/ ヽ(´▽`)/ ヽ(´▽`)/
※その1はこちら
結果として、意思決定ができなくなり、私自身が完全に「処理落ち」してしまったのです。
この経験から私が痛感したのは、仕事において「正しい・正しくない」だけで物事は決まらないということ。そして、「完璧な全員の合意形成」など最初から不可能なのだという真理です。
今回は、他者の声という大量の変数に翻弄されずにプロジェクトを前に進めるための生存戦略、「アーキテクト思考」と「モックドリブン」のアプローチについてお話しします。
完璧を諦め、まずは「モック(共通の的)」をドンと置く
他者の意見に振り回されないためには、言葉による「完璧な説明」や「全員の納得」を一旦諦める必要があります。その代わりに、「とりあえずの方向性」を示す現物(モック)をドンと真ん中に置いてしまうのです。
ここで言う「モック」とは、Figmaで作った綺麗なUIデザインのことではありません。
箇条書きのリスト、簡単なフロー図、スライド1枚の構成案など、「私たちは今、これを議論している」ということが一目でわかる**「共通の的」**であれば何でもいいと思います。
言葉だけで「A案とB案、どちらが良いか」を議論し続けると、ただの水掛け論や論破合戦になってしまいます。しかし、「一旦この構成(モック)で走ってみませんか?」と仮置きすることで状況は一変します。
それまで発散していた参加者の意見が、「その的(モック)のどこをどう直せば良くなるか」という、具体的で前向きなフィードバックへと変わるからです。
カオスな意見を分析し、最初のモックを立ち上げるプロセス
とはいえ、情報が散乱し、意見が対立しているカオスな状態の中から、「最初の的(モック)」を描き起こす作業は非常に重たいものです。協調性が高い人がこれを一人で抱え込むと、またしても変数の多さに処理落ちしてしまいます。
そこで私が実践しているのが、生成AIを「客観的な第三者の分析ツール」として使うというプロセスです。
1. 意見の収集(カオスをそのまま集める)
まずは、現場で出た多様な意見や不満、要望などの「変数」を、テキストとしてすべて集めます。ミーティングの文字起こしをとりあえずAIに飲ませて、まずは発言内容をカテゴライズしてもらうでよいです。
2. AIによる客観的分析
カテゴライズされた変数をベースに、さらに「対立構造の整理」や「共通項の抽出」をAIに指示し、意見の全体像を俯瞰します。
3. モックの生成
AIが出力した客観的な分析結果をベースに、もっとも納得感のありそうな「叩き台(モック)」を組み立てます。
4. 現場での提示(実演)
「出た意見をAIも交えて客観的に整理した結果、一旦この方向で走ってみませんか?」と現場に提示し、指差し確認をします。
自分一人でウンウン唸って「正解」をひねり出そうとするのではなく、AIという第三者を間に挟むこと。これにより、他者の感情的なノイズに揺さぶられることなく、極めてフラットに「共通の的」を作ることができます。
もちろんいきなりモックを提示するのではなく、1・2のこのモックになった経緯の説明はした方がよいです。
変数をコントロールし、場を支配するアーキテクトへ
協調性が高いことは素晴らしい才能ですが、それに縛られて身動きが取れなくなっては本末転倒です。
周りの意見に翻弄されるポジションから抜け出し、共通の的を置いて場をコントロールする側に回る。
これが、構造で人を動かす**「アーキテクト思考」**です。
この視点に立つと、他者の意見はもはや「自分を縛る変数」ではありません。「自分が置いたモックをブラッシュアップするための、ありがたい素材」に変わります。
正解のない仕事、カオスな現場。
そこで求められるのは、全員を納得させる完璧な論理ではなく、荒削りでも「最初の的」をドカンと置く胆力なのです。
もしあなたが今、多すぎる意見の板挟みになって動けなくなっていたら、、、
まずはあらゆる意見という変数を直で受け止めて処理するのではなく、
一旦の落とし所としての小さなモックを真ん中に置いてみる。
とりあえずこんな感じで進めてみるのはどうでしょう!?
【次回予告】
次回は今回の続きです。「よし、モックを出そう!」と頭ではわかっているのに、いざ会議の場になるとパッと意見が言えなくなってしまうことはありませんか?
実はそれ、あなたの能力不足ではありません。周りの意図が見えすぎる「器用貧乏」ゆえに引き起こされる『処理落ち』というバグの正体と、そこからの生存戦略についてお話しします。
