美容業界を「人のつながり方=統合の仕組み」として抽象化してみる
自由は正しい。けれど自由は、運営のコストを上げます。
シェアサロンを運営する中で、注意しなければならないことです。
自由を常に提案するために、運営のコストがバカ高くなっては、運営も困難を極めます。
また、シェア=自由+コミュニティ、は放っておくと成立しません。
自由は「関係の希薄化」を招きます。だからこそ意識しなければならない設計課題があります。
コミュニティは仲良しではなく、「相互扶助が合理的な状態」のことを指します。
美容業界で「正社員雇用サロン→業務委託サロン→シェアサロン」という流れが強まるほど、働き手は自由になります。
時間も、場所も、価格も、やり方も、自分で決められる。
これは間違いなく進歩だと感じています。
しかし一方で、自由が増えるほど「同じ方向を向く力」は弱まります。
価値観が割れ、協力の理由が薄れ、トラブルの処理が難しくなる。
ここを見誤ると、自由は「成長のエンジン」ではなくなり「分断の加速装置」になりかねません。
この分断を越える鍵として、社会の設計思想には三つの言葉があります。
国民教育、市民教育、そしてフラタニティ(友愛・連帯)です。
今回はこの三つを、美容業界のビジネスモデルに置き換えて整理してみます。「Solonはフラタニティを設計する装置である」という結論が出るまで考えてみます。
【結論から】
Solonはフラタニティを設計する装置である。
自由を最大化するだけでは足りない。
自由が生む個別のバラバラを越える設計まで含めて、はじめて次のサロンモデルになります。
もしあなたが経営者なら、次の競争軸は「席数」や「広告費」だけではありません。自由を前提にしながら、連帯が回る場を作れるか。ここで勝てるモデルは、景気にも流行にも揺れにくい。自由を守るために、連帯を設計する。これが次のスタンダードです。
そしてその設計が、働く人の尊厳と、事業の持続性を同時に押し上げます。Solonが目指すのは、自由の先にある共同体です。
ここが今後のサロンモデルの分岐点になります。
【国民教育・市民教育・フラタニティとは何か】
まずは言葉の整理です。国民教育と市民教育、フラタニティとはなんでしょうか?
国民教育とは、「同じ人をつくる教育」です。
共通のルール、共通の価値観、共通の「正しさ」を教え込み、集団としての一体感をつくります。良く言えば強い結束、悪く言えば同調圧力とでもいうのでょうか。
組織が大きくなるほど、同じ品質を出すために必要になります。
今回はここを「教育サロン」に見立てて考えていきます。
市民教育とは、「自律した個人が、ルールを理解して共同体を運営できるようにする教育」です。
ここで言う「市民」は、偉い人ではありません。契約やルールを理解し、権利と義務のバランスを取り、衝突が起きても手続きで解決する人のことです。多様性が前提で、「みんな同じ」を目指しません。
市民教育は「業務委託サロン」として考えます。
フラタニティとは、「横の連帯」です。
同じ価値観で揃えるのではなく、違いを残したまま助け合う関係です。
困ったときに支える、情報や機会を回す、相手の成功を喜べる。こうした“関係の資本”が、集団の強さになります。フラタニティは精神論になりがちですが、本質は「相互扶助が起きる仕組み」です。
ここは「Solon 」シェアサロンよりもさらに厳密にSolon とします。
なお、この三つは歴史的には「自由・平等・友愛」というスローガンとも響き合います。ここでの「平等」は、結果を揃えるというより「参加や挑戦の機会が偏りすぎない状態」に近い理解が実用的と解釈しています。
美容業界で言えば、良い設備や良い情報にアクセスできる土台が整っているほど、連帯は起きやすくなります。
この三つは、言い換えると「人をどう束ねるか」のOS(基本ソフト)の違いです。
・国民教育:価値観で束ねる(同じ方向を向く)
・市民教育:ルールと手続きで束ねる(衝突を処理する)
・フラタニティ:横の連帯で束ねる(助け合いが回る)
ここから美容業界に移します。
ー なぜいま「フラタニティ」なのか。。。
自由を増やす改革は、なんとなく正しい方向に見えます。
ところが自由は、個人の幸福を増やす一方で、集団の運営コストを上げます。
理由は単純です。人がバラバラに動くほど、意思決定の回数が増え、調整が増え、説明が増えます。取引コスト(調整にかかるコスト)」が増えるということです。要するに、「すり合わせの手間が増える」理解です。
だからこそ、自由を活かすには「連帯の設計」が要る。ここでフラタニティが出番になります。
さらに、自由な環境では「協力しない方が得に見える瞬間」が増えます。
残念ですが、シェアサロンの運営でも感じることが多々あります。
例えば、共有部を自分だけ片付けない、ルールをギリギリ守らない、情報を出さずに自分だけ得を取る。本人は合理的でも、全体では疲弊します。
これはゲーム理論で言う囚人のジレンマに近い状態です。
皆が少しずつ自分優先になると、全体の成果が落ちる。自由は、こうしたズレを生みやすいのです。
【正社員雇用サロン=国民教育(思想のつながり)】
正社員雇用サロンは、国民教育に近い仕組みと仮説します。
なぜならば、技術だけでなく「店の流儀」を教えるからです。
たとえば、接客の言葉づかい、提案の順番、カウンセリングの型、カラー理論の扱い、クレーム対応の姿勢。これらはマニュアルで決まっている場合もあれば、空気で伝わる場合もあります。
いずれにせよ「うちはこうだ」という「正しさ」が共有され、同じ方向を向きやすいと感じます。
このモデルの強みは、品質を揃えやすいことです。
教育投資を長期で回収でき、店としてのブランドがつくりやすい。若手にとっては、基礎を反復しながら上達できる安全な道にもなります。
現場では「迷いが少ない」という効用もあります。型があるから、忙しい日でも動ける。結果として店の回転が守られます。
ただし副作用も考えています。
価値観で束ねる力が強いほど、変化への適応が遅れることです。
「うちはこうだから」が学習を止める。外の世界が変わっても、内側の正しさが更新されにくい。また、独立の局面では、思想で守られていた人ほど「自分で意思決定ができない」ことがあります。
組織の力学が働きやすい。。。このように感じています。
国民教育は強い。けれど、強い分だけ硬い(柔軟さに欠ける)。これが第一のポイントです。
【業務委託サロン=市民教育(目的のつながり)】
次に業務委託サロンです。ここは市民教育に近づきます。
正社員と違って、関係の中心は「契約」です。つまり、権利と義務が前に出ます。
歩合率、材料の扱い、予約の取り方、キャンセル、指名のルール、営業時間、清掃。こうしたルールが明確で、透明で、公平であるほど、働き手は安心して成果に集中できます。ここでのつながりは、思想よりも「目的(成果)」です。数字が共通言語になります。
このモデルの強みは、自律性です。
自分の働き方をある程度、自分で設計できる。店側も固定費を抑えやすい。両者が「目的」で合理的に結びつきます。上手くいくと、働き手はプロとして成熟し、運営側はプラットフォームとして強くなる。役割分担がはっきりします。
しかし、ここにも落とし穴があります。
目的でつながる関係は、目的が弱まると一気に離散します。
(自ら弱まることもあれば、競合サロンの条件が良くなったり、新しいプレイヤーの条件が良いと、「目的は弱まる」と言える)
さらに、目的が同じに見えてもそもそもズレています。働き手は短期の手取りの最大化(条件:報酬)、運営は長期の治安とブランド。目的の時間軸が違います。
これを放置すると「ルールはあるのに揉める(理解し合えない)」状態になります。
だからこそ、市民教育が必要になります。
衝突を「気合い」ではなく「手続き」で処理する。
ルールを一方的に押し付けるのではなく、参加と合意で更新できる状態をつくる。説明責任が果たされ、例外処理の道筋がある。これができると、業務委託は単なる寄せ集めではなく、「運営できる共同体」になります。
最近、Solon でも業務委託の打ち手をすすめていますが、報酬の条件と運営の設計がリンクしていないのが、旧来の業務委託と感じます。
単なる寄せ集めのサロンから、運営できる共同体への作り込みが重要だと感じます。
【シェアサロン=自由、そしてフラタニティの必要】
そしてSolon(シェアサロン)です。ここで自由は最大化されます。
場所と設備というインフラを共有し、働き手は事業主として動く。店に所属するというより、その場の環境を利用する。働く人同士は、同じ会社の同僚ではない。
このモデルは、今の時代に合っているのではないでしょうか。
SNSの発達で個人が集客できる。多様な世界観が許容される。
仕事、プライベートの両立がかなりの確度で実現できます。自由のメリットは非常に大きい。自分のブランドを自分で育てられます。
ただし、問題があります。
自由は、放っておくと関係の希薄化を生みます。
自由は「責任が個人に在る」ことでもあります。すると、善意の余白が減ります。
・自分の売上が最優先になる
・共有への貢献が後回しになる
・困っている人に手を差し伸べる理由が薄い
・問題が起きても「当事者で解決して」が増える
これが積み重なると、場は乾きます。乾いた場は、運営できる共同体からはほど遠くなります。
そして最悪の形が、ただの「箱貸し、面貸し」です。
情報が共有されない。困ったときに助け合わない。トラブルの火種が見えない。誰かの迷惑が、誰かの利益になる。こうなると治安が悪化し、優秀な人ほど去る。自由が、自由を壊します。
だから、シェアサロンの中核は「フラタニティ」になります。
フラタニティとは、仲良しではありません。相互扶助が合理的に起きる設計です。
違う世界観のまま共存し、必要なところで協力できる。
ここができると、自由は分断ではなく、分業と共創を生みます。
(ここにSolonが個人を尊重してコミュニティとしてのスケールを活かす。ということに表れています。)
【フラタニティを起こしやすくする設計を考える】
フラタニティは、気持ちだけでは生まれません。仕組みにする必要があります。その考え方の軸を「関係資本」と考えています。
人と人の信頼が、情報や機会の流通を生む資本です。美容業界で言えば、紹介や学び合い、緊急時の助け合いが自然に回る状態です。
設計の要点は三つです。
第一に、交換が起きる導線をつくる。
顧客紹介、集客だけでなく、外注の融通、商材の知恵、撮影やSNSの協力、道具トラブルの貸し借り。小さな交換が回り始めると、助け合いは特別な善意ではなく「普通:通常運転」になります。
第二に、治安を手続きで担保する。
自由を守るための最低限のルールが必要です。重要なのは透明性です。禁止事項を増やすのではなく、困ったときの相談ルート、調停、裁定という段階を用意する。これにより、感情の衝突を制度で受け止められます。市民教育の要素を、シェアすることに混ぜるということです。
第三に、共通言語を短く持つ。
価値観まで揃えない。しかし、最低限の倫理と品質の線は明文化する。「自由のための規律」を短く、強く。長い憲法は誰も読まないからです。短い言葉は、現場で使われます。
この3つは、Solon にいる入居者の皆様にはご理解いただけるのではないでしょうか。実際に、運営の軸となっています。
【同化→契約→コミュニティへ】
正社員雇用サロンは、国民教育に置き換え、強い結束と品質をつくってきたと伝えました。
業務委託サロンは、市民教育の装置として契約と手続きによる自律として伝えました。
そしてSolon:シェアサロンは、自由を最大化しました。
ここで終わらないのが重要です。
自由は個別だからこそ、バラバラになります。だから「バラバラ」を越える設計(フラタニティ)がビジネスの中核になる。
この視点がないと、シェアサロンはただの箱貸し、面貸しに落ち、価格競争に吸い込まれます。
反対に、フラタニティを設計できれば、シェアサロンは「コミュニティ」になります。
違う人が共存し、学びが循環し、機会が回る。自由が、個人の成長と共同体の強さを同時に生む。ここまで来ると、サロンは“雇う・雇われる”の器ではなく、独立した個人が集まって価値を増やす場になります。
【まとめると】
Solonはフラタニティを設計する装置である。
自由を最大化するだけでは足りない。
自由が生む個別のバラバラを越える設計まで含めて、はじめて次のサロンモデルになります。
もしあなたが経営者なら、次の競争軸は「席数」や「広告費」だけではありません。自由を前提にしながら、連帯が回る場を作れるか。ここで勝てるモデルは、景気にも流行にも揺れにくい。自由を守るために、連帯を設計する。これが次のスタンダードです。
そしてその設計が、働く人の尊厳と、事業の持続性を同時に押し上げます。Solonが目指すのは、自由の先にある共同体です。
ここが今後のサロンモデルの分岐点になります。
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読んでいただきまして、ありがとうございます。
・The Apartment of Solon 運営
美容師をちょっと良くするシェアサロン
・W&Co.株式会社 代表取締役
美容室の経営、コンサルティング、教育事業
・fio ヘアメイク 代表
訪問美容の立ち上げプロデュース
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