見出し画像

近くの川から水を取るときに知っておきたい「水利権」の基本

人口80人ほどの小さな集落で、「地域で使う浄水場をつくりたい」という計画が持ち上がったとします。

これまで各家庭が井戸や沢水などを利用していたものの、将来の維持管理や水質への不安から、集落で共同の浄水施設を整備するケースです。

近くには川があり、そこから1日50m³程度を取水したい。

このとき、浄水場を建設する前に考えなければならないのが、「その川から水を取ってよいのか」という問題です。

「水道法」と「水利権」は別の話

まず重要なのは、水道法と水利権は別々に考える必要があるということです。

給水人口80人であれば、一般的な「水道事業」とは異なる扱いになります。ただし、水道法の対象外だからといって、川から自由に水を取れるわけではありません。

河川から水を取る場合には、河川法上の「流水の占用」、一般にいう水利権について確認する必要があります。

つまり、

「小規模な施設だから水利権は関係ない」

とは限りません。

まず「河川管理者」を探す

計画が具体化したら、最初に確認したいのが河川管理者です。

河川管理者とは、その河川のその区間を法律上管理している行政機関のことです。

実際の窓口は、国土交通省の河川事務所、都道府県の土木事務所や河川担当部署、市町村の河川・土木担当部署など、河川によって異なります。

分からない場合は、地元の市役所などに、

「○○川の○○地点から生活用水として取水を検討しています。河川管理者と担当窓口を教えてください」

と聞けばよいでしょう。

その川には、すでにどんな水利用があるのか?

河川管理者が分かったら、次に確認するのが既存の水利です。

上流や下流で、

  • 農業用水

  • 水道用水

  • 工業用水

  • 発電用水

  • その他の取水

などが行われていないかを調べます。

また、古くから地域で利用されている慣行水利権が存在する場合もあります。

ここで重要なのは、「水利権があるか、ないか」だけではありません。

どこで、誰が、どれくらいの水を、どのような条件で使っているのかを見る必要があります。

「水利権がない」なら簡単なのか?

必ずしもそうではありません。

たとえ既存の許可水利権が見つからなくても、その川に十分な水があるとは限りません。

特に重要なのが渇水時の流量です。

例えば、普段は十分な水が流れていても、夏の渇水期には川の水量が大きく減るかもしれません。

今回の計画では50m³/日、毎秒にすると約0.00058m³です。

この数字だけを見ると小さく感じますが、渇水時に川自体の流量が非常に少なければ、集落の取水が川や下流の利用者に大きな影響を与える可能性があります。

そのため、

「50m³/日取れるか?」ではなく、「渇水時にも既存の水利用や河川の機能を守ったうえで、50m³/日取れるか?」

という視点が必要になります。

誰と協議するのか?

既存の水利に影響する可能性があれば、関係する水利権者などとの調整が必要になります。

例えば、下流の農業用水や水利組合、土地改良区、漁業関係者などです。

ただし、最初から集落側で関係者をすべて探して交渉する必要はありません。

まず河川管理者に、

「今回の取水について、関係河川使用者として協議が必要なのはどこでしょうか?」

と確認することが重要です。

そのうえで、必要な相手と具体的な協議を進めます。

水量だけでなく「水質」も調べる

もちろん、浄水場ですから水質も重要です。

河川水を原水にする場合は、濁度や色度、微生物、有機物、鉄・マンガンなど、地域の状況に応じてさまざまな項目を確認します。

水量が十分でも、水質が大きく変動する河川なら、それに対応できる浄水方式が必要になります。

つまり水源調査では、

「必要な水量があるか」

「安全な水に浄化できる原水か」

を同時に見ていくことになります。

浄水場の計画は「水利権」だけでは完成しない

最終的には、

  1. 必要な水量を決める

  2. 候補河川を調べる

  3. 河川管理者を確認する

  4. 既存水利を調べる

  5. 渇水時の流量を確認する

  6. 水質を調査する

  7. 関係者と必要な協議をする

  8. 水利使用に必要な手続きを進める

  9. 取水施設・導水管・浄水場を計画する

  10. 集落で維持管理できる体制をつくる

という流れになります。

小さな浄水場だからこそ、「水を取れるか」だけでなく、誰が施設を管理し、将来にわたって安全な水を供給できるのかまで考えることが大切です。

水利権というと大規模なダムや農業用水の話をイメージしがちですが、実際には、このような小さな集落の水源確保にも関係する身近な制度です。

本記事では80人・50m³/日のモデルケースを使って概要を紹介しましたが、実際の案件では河川の種類や管理者、既存水利、地域の条例などによって必要な手続きが変わります。

もっと詳しく知りたい方へ

当社の公式ブログでは、今回のモデルケースをもとに、河川管理者への相談から、既存水利の調査、関係者との協議、水利使用の手続き、取水施設・浄水場の計画まで、実際に案件を進める際の流れをより詳しく解説しています。

ぜひあわせてご覧ください。


いいなと思ったら応援しよう!