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写真する主体へ:撮る/撮られる/撮らされる/撮れちゃう――『まなざしのエクササイズ ポートレイト写真を撮るための批評と実践』はじめにだけ読む(#24)

口上

「はじめに/序章だけ読む」シリーズを続けます。新しい本を買う前に、積読の山から“導入部だけ”拾い読みして、いまの自分の〈行為主体性〉=エージェンシーの地図を更新するためです。
ここまで、(1)モノ/技術が主体を動かす話(ANT/STS)、(2)人間そのものが更新される話(ポストヒューマン/存在論/身体)、(3)共同体と欲望(社会のなかの主体)を歩いてきました。
次はいよいよ IV. 写真する主体へ。撮る/撮られる/撮らされる/撮れちゃう——この“ズレ”のなかで、写真は「見たものの記録」以上の社会的装置になっている。今回はその入口として、ポートレイト写真を「見ること/見られること」の問題として扱う本の、導入部を読む。 (Film Art, Inc. Online Shop)


書誌と作者紹介

  • 書名:『まなざしのエクササイズ ポートレイト写真を撮るための批評と実践』

  • 原題:Train Your Gaze: A Practical and Theoretical Introduction to Portrait Photography (CiNii)

  • 著者:ロズウェル・アンジェ(Roswell Angier) (CiNii)

  • 訳者:大坂直史 (CiNii)

  • 出版:フィルムアート社(邦訳版の月は2013年2月表記の資料もあり) (CiNii)

  • 仕様:A5判/約432頁/ISBN 978-4-8459-1206-3 (Film Art, Inc. Online Shop)

  • 位置づけ(出版社説明の要点):ポートレイトを「対象を見る」行為として捉え、写真家の視線(=被写体への向け方)を分析しつつ、技術だけでなく批評的・歴史的視点も取り込めるようにする本。作品例(歴史的ポートレイト)も多数。 (Film Art, Inc. Online Shop)


要約

はじめに

  • ポートレイトを撮りたい動機を、「うまく撮る/盛る」以前に “誰かを見たい(理解したい)”“誰かと関係を結びたい” という衝動として捉える。

  • ただしポートレイトは、風景やモノと違って、相手がいる。だから撮影は 同意・信頼・交渉 を含む出来事になる(撮る側の一方通行ではない)。

  • 写真の見た目(主題・構図・技術)だけでは語り切れない「もう一つの要素」があり、それが写真に生命を吹き込む。ここで言う“まなざし”は、単なる視線ではなく、撮影者の注意・距離・倫理・関係性の総体(=制作の背後にある態度)として立ち上がる。

この本を最大限に活用するために

  • 本書は 批評(考え方)/見方(分析)/実践(撮る課題) を往復できるように設計されている。章末に課題が置かれ、読むだけで終わらせず、実際に撮ることで理解を身体化する(“読む→撮る→見返す→考え直す”)。

  • 構成はテーマ別(年代順の通史ではない)。たとえば「覗き見と監視」「鏡・仮面」「対決」「フラッシュ」「風景の中の人物」「デジタルな人格」といった“まなざしの問題系”に沿って、歴史的実例を参照する。 (Google Books)


論点整理(この導入部が立てる問い)

  1. 「人間を撮る」とは何か
    被写体を“素材”にしてしまう誘惑と、被写体が主体として応答してくる事実(撮る/撮られる/撮らされる/撮れちゃう)をどう扱うか。

  2. 写真の価値は「写っているもの」だけで決まらない
    写真に命を吹き込む“見えない要素”(態度・距離・関係)がある、という前提を置く。

  3. 歴史の語り方:通史ではなく「問題系の系譜」
    章立ては「見方のトレーニング(gaze)」に沿った編集で、歴史は“参照できる実践のアーカイブ”として提示される。 (Google Books)

  4. 批評=実践の補助線
    哲学者/思想家の言葉も交えつつ、撮影行為を概念で支え直す(技術書に閉じない)。 (Film Art, Inc. Online Shop)


用語解説(最小セット)

  • ポートレイト(portrait):単に顔を写すのではなく、「その人」をめぐる表象(関係・役割・仮面・社会)を引き受ける写真実践。 (Film Art, Inc. Online Shop)

  • まなざし(gaze):見る/見られる力学。視線の方向だけでなく、距離、権力、同意、監視、欲望、自己像の演出まで含む。 (Google Books)

  • ヴォワイヤリズム/サーヴェイランス(覗き見/監視):見られる側の同意が揺れる領域。ストリートやSNS時代の「撮れちゃう」に直結する。 (Google Books)

  • 仮面/マスカレード(masquerade):ポートレイトは“素顔の暴露”だけでなく、“演じる自己”を写す回路でもある。 (Google Books)

  • デジタル・ペルソナ(Digital Personae):デジタル環境で生成・編集・流通する「人格」像。撮影は自己設計・他者設計と絡む。 (Google Books)


批判分析(令和人文主義者/行為主体性の観点から)

  1. 強み:ポートレイトを「関係の技術」として捉える
    被写体を“撮られる側の主体”として扱う設計は、あなたの軸である「撮る/撮られる/撮らされる/撮れちゃう」を、倫理と実践の両方から鍛え直す足場になる。特に「見ること」そのものを問題化する点が強い。 (Film Art, Inc. Online Shop)

  2. 強み:歴史が“通史”ではなく“使える問題系”として提示される
    章立て(覗き見/鏡/対決/フラッシュ…)は、写真史を「年代の暗記」ではなく「見方のツールボックス」に変える。これは“教養”を生活実践へ接続する令和人文主義の欲求とも相性が良い。 (Google Books)

  3. 限界:参照枠組みが(必然的に)西洋中心の「代表作」へ寄りがち
    出版社説明にある作例の列挙も、欧米の写真史カノンが太い(ザンダー、アヴェドン、ゴールディン等)一方、日本の写真史的文脈は別途補助線が必要になる。 (Film Art, Inc. Online Shop)

  4. 問い返し:AI時代の「撮れちゃう」は、ここから先どこまで更新できるか
    目次に「Digital Personae」があるのは重要だが、生成AI・ディープフェイク・監視資本主義が極端化した現在の状況では、“見られる側の同意”“人格の編集可能性” の論点を、追加で接続し直したくなる(ここはあなたの連載テーマ=アウラ/捏造とも直結)。 (Google Books)


参考文献(リンク含む)

  • ロズウェル・アンジェ著/大坂直史訳『まなざしのエクササイズ ポートレイト写真を撮るための批評と実践』フィルムアート社、2013年。(CiNii)

  • Film Art, Inc. Online Shop「まなざしのエクササイズ ポートレイト写真を撮るための批評と実践」商品ページ。(Film Art, Inc. Online Shop)

  • Roswell Angier, Train Your Gaze: A Practical and Theoretical Introduction to Portrait Photography, AVA Publishing, 2007(Google Books 書誌・目次)。(Google Books)

  • CiNii Research「まなざしのエクササイズ : ポートレイト写真を撮るための批評と実践」書誌情報。(CiNii)


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