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【第106回】ビジネス書との出会い:他人のせいにするか、成長の糧にするか。自分への「問い」が人生を決める。『すべては「前向き質問」でうまくいく』

この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。


書籍と著者

本日ご紹介するのは、組織コンサルタントでありエグゼクティブ・コーチのマリリー・G・アダムス氏による**『すべては「前向き質問」でうまくいく 質問思考の技術 増補改訂版』**(原題:Change Your Questions, Change Your Life: 12 Powerful Tools for Leadership, Coaching, and Life)です。

  • どんな本か: 私たちが無意識に頭の中で繰り返している「自分への質問」の質を変えることで、人間関係、仕事の成果、そして人生そのものを好転させる「質問思考(クエスチョン・シンキング)」の教科書です。

  • 著者の権威性: 臨床心理学者としてスタートし、現在は「質問」を活用したリーダーシップ開発の第一人者として、フォーチュン500企業から教育機関まで幅広く指導を行っています。

  • 以前紹介した本との関連: 本連載の【第102回】~【第105回】で「他者への良質な質問」を学んできましたが、本書はすべての土台となる「自分自身への問いかけ」を整える、シリーズの総仕上げと言える一冊です。


導入:あなたは頭の中で「誰を」責めていますか?

仕事で大きなトラブルが起きたとき、あなたの頭の中にはどんな言葉が浮かびますか?

「なぜこんなことになったんだ?」 「一体、誰のミスだ?」 「どうして私はいつもこうなんだろう?」

私たちは1日に何万回も、自分自身に「問い」を投げかけています。しかし、著者はこう断言します。 「どんな質問を選ぶかによって、どんな結果を手にするかが決まる。質問を変えれば、人生が変わるのだ」

先ほどのような「誰が悪いのか?」という問いは、私たちを泥沼に引きずり込み、エネルギーを奪います。 本書は、自分を追い詰める「後ろ向きな問い」のループから抜け出し、未来を切り拓く「前向きな問い」へと意図的に切り替えるための、非常にシンプルで強力なフレームワークを教えてくれます。


本書の核:人生を分ける「2つの道」

本書が提唱する最大のフレームワークが「チョイス・マップ(選択の地図)」です。何か出来事が起きたとき、私たちは常に以下の「2つの道」のどちらかを歩んでいます。

  1. 「批判する人(ジャッジヤー)」の道: 防衛的になり、「誰のせいだ?」「なぜあいつはあんなにバカなのか?」「私に何が証明できるか?」と問う状態です。この道を歩むと、行き着く先は「泥沼(行き詰まり)」であり、関係の破壊と停滞しか生みません。

  2. 「学ぶ人(ラーナー)」の道: 好奇心を持ち、「何が起こったのか?」「ここから何を学べるか?」「解決策は何か?」と問う状態です。この道を歩むと、新たな可能性が開き、他者との協調やイノベーションが生まれます。

  3. 「切り替えの質問(スイッチング・クエスチョン)」: 人間である以上、誰もがジャッジヤーの道に落ちてしまいます。重要なのは、自分が泥沼にいることにいち早く気づくこと。そして、「私は今、ジャッジヤーになっていないか?」「今、何を学ぶことができるか?」という「切り替えの質問」を自分に投げかけ、ラーナーの道へ軌道修正することです。


現代ビジネスへの応用 / 実践:自分の「心の声」を監視する

では、私たちは明日からどうすればいいのでしょうか?

  • 「自分の問い」を観察する: イライラしたときや、他人のアラ探しをしている自分に気づいたら、一呼吸置いてください。そして、「今、自分は頭の中でどんな質問をしているか?」を客観的に観察してみましょう。大抵の場合、「なぜあいつはやってくれないのか?」というジャッジヤーの問いになっているはずです。

  • 「ラーナーの問い」に書き換える: そのネガティブな問いを、意図的にラーナーの問いに変換します。 「あいつをどうやってコントロールしようか?」→「この状況で、相手は何を考え、何を求めているのだろう?」この変換作業を繰り返すことが、最強のメンタルトレーニングになります。


まとめ:あなたの「問い」が、あなたの世界を創る

私たちがコントロールできるのは、他人の言動や起きてしまった出来事ではありません。それに対して「自分がどう反応するか(どんな問いを立てるか)」だけです。

魔法はありませんが、この法則を知っているだけで、世界の見え方が変わるはずです。 「誰のせいか?」という犯人探しをやめ、「どうすれば解決できるか?」「何を学べるか?」と自分に問いかける。明日から、頭の中の「ラーナー」の声を少しだけ大きくしてみませんか。


▼ 合わせて読みたい(過去の連載より)

『すべては「前向き質問」でうまくいく』を読んだ方には、以下の過去記事もおすすめです。本書の「ラーナー/ジャッジヤー」という概念と完璧にリンクする名著たちです。

  • 【第76回】『マインドセット「やればできる!」の研究』

    • キャロル・ドゥエック教授の世界的名著。本書の「批判する人(ジャッジヤー)」は「硬直マインドセット」に、「学ぶ人(ラーナー)」は「しなやかマインドセット」に完全に呼応します。この2冊をセットで読むことで、自己変革のメカニズムが立体的に理解できます。

  • 【第83回】『恐れのない組織』

    • エイミー・エドモンドソンの「心理的安全性」。組織の中に「批判する人」の問い(誰のミスだ?)が蔓延していると、心理的安全性は崩壊します。リーダーがいかに「学ぶ人」の問いを口に出せるかが、強い組織をつくる鍵となります。

  • 【第26回】『7つの習慣』

    • スティーブン・コヴィー博士の「第1の習慣:主体的である」。刺激に対して反応(ジャッジ)するのではなく、自らの意志で選択(ラーナーの道を選ぶ)するという哲学は、まさに本書の「チョイス・マップ」そのものです。


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