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【第43回】ビジネス書との出会い:「パーパス」はただの宣伝だ。『仕事ではなく世界を変えよう』が暴く欺瞞

この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。


書籍と著者


本日ご紹介する書籍は、元広告代理店のストラテジストであり、現在は社会活動家としても活動するシャーロット・クレイマー氏による**『仕事ではなく世界を変えよう「パーパスの神話」に騙されないために』**(原題:The Purpose Myth)です。


導入:なぜ、マヨネーズが「世界を救う」のか?


ここ数年、猫も杓子も「パーパス(企業の存在意義)」を語るようになりました。

「世界をより良くするために」 「持続可能な未来のために」

そう語る企業のCMを見て、違和感を覚えたことはありませんか? 「いや、あなたが売っているのはただのマヨネーズでしょ?」と。

この連載でも、シネックやステンゲルを通して「理念(パーパス)」の重要性を学んできました。しかし、それが流行するあまり、今や多くの企業が「商品を売るための“見せかけ”の正義」としてパーパスを利用しています。

この本は、そんな「パーパス・ウォッシュ(うわべだけの理念)」に騙されるな、と警鐘を鳴らす、現代人にとっての「解毒剤」のような一冊です。


本書の核:「消費」で世界は変わらない


著者は広告業界の内部にいたからこそ、その「からくり」を冷静に暴きます。


1.「パーパス」は免罪符である

  • 真実: 多くの企業にとって、パーパスは「マーケティング戦略」に過ぎません。

  • 心理: 消費者は、モノを買うことに少なからず「罪悪感(環境負荷など)」を持っています。企業はそこに「この商品は世界を救います」というストーリーを付与することで、「消費の免罪符」を与え、買わせようとしているのです。


2.「スラックティビズム(怠惰な社会活動)」の罠

  • 現象: 私たちは、「環境に優しいスニーカー」を買っただけで、「自分は良いことをした」と満足してしまいます。

  • 警鐘: これにより、本来なら投票やデモ、ボランティア活動に向かうはずだったエネルギーが、「買い物」によってガス抜きされてしまいます。「消費で世界を変えられる」という幻想が、かえって本当の社会変革を遅らせているのです。


実践:仕事(Job)に「救世主」を求めるな


では、私たちはどうすればいいのでしょうか? 著者のメッセージは明確です。

「会社のパーパスに依存するな。自分で動け。」

多くの人が「仕事を通じて世界を変えたい」と願い、企業の美辞麗句(求人広告のパーパス)に惹かれて入社します。しかし、現実は利益追求が最優先であり、失望することになります。

著者は提案します。 会社に「世界を救う」という過度な期待をするのはやめましょう。 その代わり、「仕事以外の時間(サイドプロジェクト)」を使って、あなたが本当に解決したい問題に直接取り組むのです。

  • 会社は「生活の糧を得る場所」と割り切ってもいい。

  • その代わり、あなたのスキルと情熱を、週末のボランティアやNPO活動、個人的なプロジェクトに注ぐ。

それこそが、広告代理店が作った「神話」に踊らされず、地に足をつけて「世界を変える」唯一の方法だと説きます。


まとめ:お題目の「パーパス」に騙されるな


「社会課題を解決する」「世界をより良くする」 今や企業のウェブサイトを開けば、どこもかしこも美しい「パーパス(存在意義)」やSDGsの理念で溢れかえっています。

しかし本書は、冷水を浴びせるように私たちに問いかけます。 「それは本当に世界を変えるための行動か? それとも、ただ商品を売り、優秀な人材を安く採用するための『マーケティング・ツール』に過ぎないのではないか?」と。

パーパスという言葉自体は素晴らしいものです。しかし、行動を伴わないパーパスは、ただの「洗脳(プロパガンダ)」であり、社会に対する欺瞞です。 企業が発信する美しい言葉に酔わされることなく、その裏にある「本当の狙い」を冷静に見極めること。そして、もし自分たちがパーパスを掲げるなら、言葉遊びではなく「泥臭い行動」でそれを示すこと。

綺麗事にまみれた現代のビジネス界に、強烈な一石を投じる必読の一冊です。


▼ 合わせて読みたい(過去の連載より)

『仕事ではなく世界を変えよう』で学んだ「パーパス・ウォッシング(偽善)」を見抜き、企業が発信するメッセージの裏側にある意図を読み解くための必読リストです。

【第25回】『プロパガンダ:広告・政治宣伝のからくり』 [選定理由:企業の美しい嘘を見抜く] 行動を伴わないパーパスは、大衆を操るための「プロパガンダ(政治宣伝)」と全く同じ構造を持っています。企業がどのようにして「社会に良いことをしている」というイメージを捏造し、私たちの感情(システム1)を操作しているのか、その恐ろしいからくりが学べます。

【第158回】『信頼はなぜ裏切られるのか』 [選定理由:偽りの信頼のメカニズム] なぜ私たちは「世界を変える」と語る企業の美辞麗句を、いとも簡単に信用してしまうのでしょうか。人間が他者を信用する基準がいかに適当であるかを科学的に証明し、言葉の裏に隠された「本物のサイン(行動)」を見抜くための防衛術を教えてくれます。

【第30回】『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』 [選定理由:パーパス神話の崩壊] 「崇高なパーパスを掲げれば、顧客はブランドを愛し、商品を買ってくれる」というマーケターの幻想を、膨大な購買データで完全に論破した一冊。「消費者は企業のパーパスなど気にしていない」という残酷な真実から、真のマーケティングとは何かを再定義してくれます。

【第26回】『7つの習慣 人格主義の回復』 [選定理由:真のパーパスのあり方] もし企業(あるいは個人)が、本気で社会に貢献するパーパスを持とうとするならどうすべきか。表面的なテクニック(個性主義)で自分を良く見せるのではなく、内面からの誠実さ(人格主義)に基づいた行動でしか、本当の信頼は得られないことを教えてくれる普遍のバイブルです。


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