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【第90回】ビジネス書との出会い:チームは「名詞」ではない。「動詞」として使いこなせ。『チームが機能するとはどういうことか』

この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。


書籍と著者

本日ご紹介するのは、ハーバード・ビジネス・スクール教授エイミー・C・エドモンドソン氏による『チームが機能するとはどういうことか ― 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』(原題:Teaming: How Organizations Learn, Innovate, and Compete in the Knowledge Economy)です。

著者は【第83回】『恐れのない組織』で「心理的安全性」を世界に広めた第一人者ですが、本書はその概念をさらに発展させ、「変化の激しい現場で、どうやって人は協力し合うのか?」という実践プロセスに焦点を当てた、マネジメントの集大成的な一冊です。


導入:「チーム作り」をしている暇はない

かつての「チーム」は、スポーツチームのように固定メンバーで、長い時間をかけて阿吽の呼吸を育てていくものでした。 しかし、現代のビジネスは違います。 「このプロジェクトのために、営業、開発、マーケから1人ずつ集まってくれ。期限は3ヶ月だ」

このように、専門家が一時的に集まり、課題を解決したら解散する。 著者はこれを、固定的な「チーム(Team)」ではなく、動的な「チーミング(Teaming)」と呼びます。

チーミングに必要なのは、時間をかけた信頼構築ではありません。 「出会った瞬間に、互いの専門性を引き出し合い、学習しながら走る技術」です。


本書の核:2つの「実行」を使い分ける

チームが機能不全に陥る最大の原因は、「工場の論理」で「研究所の仕事」をしてしまうことです。 著者は、仕事を2つのモードに分けます。

  1. 効率重視の実行(Execution-as-Efficiency):

    • 目的: 決まったことを、ミスなく繰り返す。

    • 失敗: 悪。減らすべきもの。

    • リーダーの役割: 正解を指示し、管理する。

    • (例:工場のライン、定型業務)

  2. 学習重視の実行(Execution-as-Learning):

    • 目的: 新しい解決策を見つける。

    • 失敗: データの獲得。早めにすべきもの。

    • リーダーの役割: 仮説を立て、実験を促す。

    • (例:新規事業、手術、ソフトウェア開発)

現代の仕事の大半は「学習重視」の領域にあるのに、私たちはつい「効率重視」のマネジメント(失敗を許さず、計画通りに進めようとする)をしてしまいます。 これが、イノベーションを殺す元凶です。 チーミングとは、「走りながら実験し、失敗から学び、軌道修正し続けるプロセス」そのものなのです。


実践:「失敗」を分類せよ

「学習重視の実行」では、失敗が不可欠です。 しかし、すべての失敗が良いわけではありません。著者は失敗を3つに分類します。

  1. 予防可能な失敗(悪い失敗):

    • 不注意やスキル不足によるミス。これはプロセスを改善して防ぐべき。

  2. 複雑な失敗(仕方ない失敗):

    • システムが複雑すぎて起きた予期せぬトラブル。早急な対処と共有が必要。

  3. 知的な失敗(良い失敗):

    • 新しい知識を得るために、意図的に行った実験の結果。 これこそが賞賛されるべき失敗です。

あなたのチームでは、「知的な失敗」をした人がヒーローとして扱われていますか? それとも、「失敗は失敗だ」と一緒くたに叱責されていませんか? この分類ができるかどうかが、チームの学習能力を決定づけます。


4つの柱:チーミングの作法

即席チームを機能させるために、リーダーには以下の4つの行動が求められます。

  1. 率直に話す(Speaking Up): 疑問や懸念をすぐに口に出す。(心理的安全性)

  2. 協働する(Collaborating): 専門用語を使わず、共通言語で話す。

  3. 試みる(Experimenting): 小さな実験を繰り返す。

  4. 省察する(Reflecting): 「何が起きたか?」「次はどうするか?」を振り返る。

特に重要なのが「省察(リフレクション)」です。 忙しいとつい「やりっ放し」になりますが、振り返りのない実行は、ただの「暴走」です。 【第89回】で学んだ「小さな進捗」を確認するためにも、立ち止まって考える時間が不可欠なのです。


まとめ:チームは「ある」ものではなく「する」もの

本書のメッセージは強力です。 「理想のチームなんて待っていても現れない。今いるメンバーで、今すぐ『チーミング』を始めろ」

チームワークは、相性の良し悪しではありません。 「学習しながら進む」というスキルです。 このスキルさえあれば、どんなメンバーと組んでも、どんな未知の課題に直面しても、あなたは恐れることなく前に進むことができます。

さあ、名詞のチームに安住するのはやめて、動詞のチーミングを始めましょう。


▼ 合わせて読みたい(過去の連載より)

『チームが機能するとはどういうことか』は、これまでの組織論の実践的統合版です。


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