【第71回】ビジネス書との出会い:あなたの「世界を見る目」はチンパンジー以下かもしれない。『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』
この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。
書籍と著者
本日ご紹介する書籍は、医師であり公衆衛生学者でもあった故ハンス・ロスリング氏(他2名)による**『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』**(原題:Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About the World--and Why Things Are Better Than You Think)です。
導入:世界はどんどん悪くなっている?
突然ですが、クイズです。 「過去20年間で、世界の極度の貧困層の割合はどう変わったでしょう?」
A. 2倍になった B. あまり変わっていない C. 半分になった
正解は「C(半分になった)」です。 しかし、先進国の多くの人が「A」や「B」を選びます。その正答率は、なんとチンパンジー(ランダムに選んだ場合=33%)よりも低いのです。
なぜ、私たちはこれほどまでに世界を誤解しているのでしょうか? それは、私たちの脳に狩猟採集時代から刻まれた「ドラマチックすぎる本能」が、事実(ファクト)を歪めて見せているからです。 本書は、その曇ったレンズを外し、クリアな視界を手に入れるための「データの眼鏡」です。
本書の核:私たちを騙す「10の本能」
著者は、私たちが世界を誤解する原因となる10の本能を紹介しています。ここでは特に強力な2つを紹介します。
1.分断本能(世界は分断されているという思い込み)
誤解: 私たちは世界を「金持ちと貧乏」「先進国と途上国」「私たちと彼ら」という2つのグループに分けたがります。
事実: 今の世界の大部分は、その中間の「レベル2」と「レベル3」(そこそこの生活水準)にいます。
かつてのような「極貧か、大富豪か」という分断は消え、世界中のほとんどの人が、少しずつ豊かになっています。
ビジネスにおいても、「途上国=安い労働力」という古い認識でいると、彼らが「巨大な中間層市場」に変わっていることを見落とし、チャンスを逃します。
2.ネガティブ本能(世界は悪くなっているという思い込み)
誤解: ニュースを見れば、戦争、犯罪、自然災害ばかりです。「昔はよかった」と感じます。
事実: ニュースは「悪いこと」しか報道しません。
「今日も何億人もの人が平和に暮らしました」というニュースは流れません。
飛行機事故のニュースが増えたとしても、それは事故が増えたからではなく、監視網(報道)が発達したからかもしれません。
「悪いこと」と「良くなっていること」は両立します。 世界は悪い状態ですが、それでも以前よりは良くなっています。
実践:データを基に世界を見る
では、どうすればファクトフルネス(事実に基づいた世界の見方)を身につけられるのか?
1.「平均」ではなく「分布」を見る
「平均年収が上がった」と聞いて満足してはいけません。 ごく一部の大富豪が平均を引き上げているだけで、大半の人は貧しいままかもしれません(格差)。 数字を見たら、必ず「その内訳(分布)はどうなっているか?」を問う癖をつけましょう。
2.「犯人捜し」ではなく「仕組み」を見る
何か悪いことが起きると、私たちはすぐに「誰のせいか(犯人)」を探そうとします。 しかし、誰かを責めても問題は解決しません。 【第70回】で学んだように、重要なのは個人の資質ではなく、それが起きてしまう「システム(仕組み)」に目を向けることです。
まとめ:世界はあなたが思うより、もっと良い場所だ
なぜ、ビジネスパーソンがこの本を読むべきなのか? それは、「悲観的な人は新しい市場を見つけられないから」です。
「どうせ世界はダメになる」「格差は広がるばかりだ」と思っていると、萎縮して守りに入ります。
しかし、データを見れば、世界は確実に良くなり、人々は健康になり、教育を受け、新しいテクノロジーを求めています。
ファクトフルネスを身につけると、過度な不安が消え、世界に対して前向きな好奇心が湧いてきます。 「データは、あなたを安心させるためにある」 この本を読み終えたとき、あなたの世界地図は、恐怖の地図から、希望とチャンスの地図へと書き換わっているはずです。
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