【第134回】ビジネス書との出会い:苦しみは「現実」ではなく「あなたの脳」が捏造している。直感を取り戻し、迷いを断ち切る『考えすぎてしまう人のための決める練習』
この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。
書籍と著者
本日ご紹介するのは、作家でありコーチのジョセフ・グエン氏による**『考えすぎてしまう人のための決める練習』**(原題:Don't Believe Everything You Think)です。
どんな本か: 悩み、不安、決断疲れ。それらの根本原因が「出来事」そのものではなく、それについて「考えすぎる(思考する)こと」にあると看破し、頭の中のノイズを消して直感で生きるための超シンプルな哲学書。
著者の権威性: 自身の壮絶な苦悩から抜け出した経験を元に書かれた本作は、自費出版からSNSの口コミだけで火がつき、世界30カ国以上で翻訳される異例の大ベストセラーとなった新世代のバイブルです。
以前紹介した本との関連: 【第109回】『Chatter』で頭の中の「ひとりごと」を制御する方法を学びましたが、本書はさらに踏み込み、「そもそもその思考(ひとりごと)を信じるな」という根源的なアプローチで、迷う時間をゼロにします。
導入:あなたは「熟考」という名の自傷行為をしていないか?
「A案で行くべきか、B案で行くべきか。考えれば考えるほど泥沼にハマる」 「将来の不安をシミュレーションしすぎて、一歩も動けなくなっている」 現代のビジネスパーソンは、「深く考えること」こそが正解を導き出す唯一の手段だと教え込まれ、脳をフル回転させることを美徳としています。
しかし、著者は鼻で笑い飛ばすようにこう断言します。 「私たちの苦しみの100%は『思考』から生まれている。現実そのものが私たちを苦しめることは絶対にない」
信じがたいかもしれませんが、あなたが抱える苦痛の正体は、目の前のトラブルではなく、あなたが頭の中で捏ねくり回している「勝手な解釈」に過ぎません。本書は、ビジネスパーソンが陥りがちな「考えすぎ(オーバーシンキング)」という病を断ち切り、自分の中に眠る最強の決断ツール「直感」を再起動させてくれます。
本書の核:頭の中の「デタラメ」を真に受けない
本書の主張は、目から鱗が落ちるほどシンプルです。私たちが身につけるべき真理は以下の3つに集約されます。
「考え(Thought)」と「思考(Thinking)」を分ける: 「考え」とは、ふと頭に浮かぶ自然な情報のことで、これ自体は無害です。一方「思考」とは、その考えを掴み取り、ああでもないこうでもないと捏ねくり回す能動的な行為です。すべての苦痛と迷いは、この「思考」から生まれます。
ネガティブな感情は「現実からの警告」ではない: 不安や焦りを感じたとき、私たちは「状況が悪いせいだ」と思い込みます。しかし実際は、あなたの脳が「今、悪い『思考』に囚われているぞ。今すぐ考えるのをやめろ」と知らせてくれている内なるアラームに過ぎないのです。
答えは「空白」に降りてくる: 必死に考えているときに良いアイデアは出ません。シャワーを浴びているときや、散歩をしているときなど、思考が止まった「空白(無の境地)」にこそ、正しい決断(直感・インスピレーション)は舞い降りてきます。
現代ビジネスへの応用 / 実践:迷ったら「思考の電源」を落とす
では、私たちは明日からどうすればいいのでしょうか?
感情が乱れているときの「決断」を一切禁止する: イライラしている時や、不安で胸が押しつぶされそうな時に出した答えは、100%間違っています。嫌な気分のアラームが鳴ったら「今は思考が濁っているから、決めるのをやめよう」と、勇気を持って判断を丸一日ペンディングしてください。
「わからない」という状態を愛する: 答えが出ないことを恐れ、無理やりロジックで答えをひねり出すのをやめましょう。「今はわからない。でもそのうち直感が教えてくれるだろう」と放置する。この「手放す勇気」が、結果的に最短ルートで最高の決断を連れてきます。
まとめ:あなたの脳を過信するな。直感を信じろ。
私たちは賢くなろうとするあまり、最も優秀なセンサーである「直感」をロジックで殺して生きてきました。
魔法はありませんが、この法則を知っているだけで、世界の見え方が変わるはずです。 考えて、悩んで、苦しんで決めることが「仕事」ではありません。今日からは、頭の中に湧き上がるもっともらしい「言い訳」や「不安」を完全スルーして、フッと心が軽くなる直感の方へ、軽やかに舵を切ってください。
▼ 合わせて読みたい
『考えすぎてしまう人のための決める練習』を読んだ方には、以下の過去記事もおすすめです。思考のノイズを消し去り、本質を見極めるための強力なラインナップです。
【第109回】『Chatter(チャッター):「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』 [選定理由:深化] 本書で言う「思考(Thinking)」が暴走した状態が、まさにチャッターです。脳内のネガティブな声をいかにして静め、客観的な視点を取り戻すか。科学的な見地から自己対話をコントロールする決定版です。
【第38回】『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』 [選定理由:応用] 考えすぎる人は、そもそも「決断すべき選択肢」を抱え込みすぎています。直感を信じて身軽に動くために、まずは自分にとって「本当に重要な1%」以外を容赦なく切り捨てる哲学をインストールしてください。
【第21回】『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』 [選定理由:対比] 直感(システム1)と思考(システム2)。人間の脳が持つ2つのモードをノーベル経済学賞受賞者が解き明かした名著。「直感」の素晴らしさと同時に、直感が陥りやすい「エラー」も知っておくことで、決断の精度は完璧になります。
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