【若者用語解説】「冷笑系」ってなに?─若者との会話で知った、いまの時代の距離の取り方
「冷笑系」という言葉を知っていますか?
若者と雑談していたとき、SNSの話から自然と最近の空気感の話になりました。
恋愛リアリティショーの流行や、Xでよく見る言説、紅白歌合戦を家族と見るときの気まずさ。そんな話題が続く中で、ふとこんな言葉が出てきました。
「最近、“冷笑系”って言葉ありますよね?
本気でハマってる人を見ると、ちょっと引いちゃうというか。否定はしないけど、同じテンションにはなれない、、、そんな感じです」
その場では「たしかに」と返しつつ、冷笑系という言葉自体は知っていたものの、説明なしで会話の中に出てきたことが、印象に残りました。
これは一部の人の態度というより、今の若者世代に広く共有されている感覚なのかもしれない。そんなふうに感じました。
冷笑系とは何か
「冷笑系」は、XなどのSNSを中心に使われている言葉です。
強く否定したり、攻撃したりする言葉ではありません。
何かに熱中している人や、感情を前面に出している人に対して、
一歩引いた場所から眺める。同じ温度にはならず、踏み込みすぎない。
冷静で、客観的で、判断を誤らない側に立っていたい。
そんな距離の取り方を指して、「冷笑系」と呼ばれているようです。
なぜ、冷笑するのか
若者の話を聞いていて印象的だったのは、
「常に正解を選び続けなければならない感覚」が若者の価値観の前提にあることでした。
進学、就職、転職、恋愛、結婚。
どの選択も、間違えた瞬間に将来が閉じてしまうように感じてしまう。
そんな緊張状態が、慢性的に続いていると言います。
だからこそ、誤っているように見える選択をしている人を見て、
「自分はそっちではない」と確認する。
冷笑は、他人を否定するためというより、
自分が間違っていないことを確かめる行為に近いのかもしれません。
何かに熱中することへの怖さ
もう一つ出てきたのが、
何かに全力で打ち込むこと自体が、リスクに感じられるという話でした。
もしそれが「不正解」だったとき、時間も労力も取り戻せないのではないか。だから最初から、深く入り込みすぎない。
冷笑は、感情を持たない態度というより、
リスクを最小化するための選択として現れているようにも見えました。
背景にあるSNS環境
私自身は、この冷笑的なスタンスの背景に、
SNSの存在がかなり大きく影響していると感じています。
SNSには、「不正解に見える大人」があふれています。
炎上、失言、過去の不適切発言、オジサン構文やお母さんLINE。
*オジサン構文とは:絵文字や語尾が多く、距離感が近すぎる中年男性特有のLINE文体のこと。
*お母さんラインとは:生活感や心配がにじみ出る、母親世代に多い独特のLINE文体のこと。
一見まともそうな大人が、
簡単に「こうなりたくない存在」として切り取られ、拡散される。
この話をしていたとき、若者がこんなことを言っていました。
「オジサン構文とか、お母さんLINEもそうなんですけど、
文面だけで“いい年した中年感”を嗅ぎ取れちゃうじゃないですか。
そうなると、電車に乗ってる隣の、まともそうなおじさんも、
もしかしたらネットではこんな感じなのかも……って思っちゃって。
それ、けっこう怖かった記憶があります(笑)」
SNSを通じて大人の素や失敗が想像以上に早い段階で可視化されてしまう時代。高校生くらいからその光景を見続けていれば、
「外さないこと」を最優先にする価値観が育つのも自然です。
それでも支持される「本気」の存在
一方で、冷笑的な空気が広がる中でも、強く支持されている存在があります。その一つが「 HANA(ハナ) 」 です。
*HANAとは:2025年にリアリティオーディション番組「No No Girls(ノノガ)」から誕生した7人組のガールズグループ。プロデューサーはちゃんみなで、デビュー曲『ROSE』をはじめ『Blue Jeans』などがヒットし、短期間で日本の音楽シーンを席巻しています。
HANAは、オーディションや活動の過程で、
努力や葛藤、成長のプロセスを隠さずに見せてきた存在です。
結果だけでなく、そこに至るまでの試行錯誤や感情の揺れを含めて可視化されている点が、多くの共感を集めています。
自分自身が大きなリスクを取らなくても、誰かが本気で挑戦する姿を見ることで、疑似的な達成感や前向きな感情を得る。
冷笑が広がる一方で、こうした「本気で向き合う人」が支持されるのは、
熱中そのものが失われたわけではない、ということの表れなのかもしれません。
冷笑系は「若者らしさ」ではなく「時代らしさ」
冷笑系という言葉は、若者の性格や態度を表すラベルとして使われがちです。
ですが、今回の会話を通して感じたのは、
これは個人の問題というより、正解を外せない社会構造が生み出した振る舞いだということです。
失敗が可視化され、反面教師ばかりが目につく世界で、距離を取り、冷静でいようとする。
冷笑系という態度は、この時代を生き抜くための、かなり合理的な選択なのかもしれません。
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この記事の監修者
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
若者の研究所 研究員。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。
この記事を書いた人
三上広葉 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
若者の研究所 所長。新卒でバイデンハウスに入社。Weiden HausのFood & Beverage、Beauty & Cosmetics、Social mediaのリーダーシップ。 Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。2025年より株式会社バイデンハウス取締役。
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