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京都でも出会える以字点

以字点」という謎の記号をご存知でしょうか。
今回は、東京、群馬、沖縄、そして京都で出会った「以字点いじてん」をご紹介します。

(1) 萬福寺(東京都大田区)

大田区南馬込一丁目に建立されている「萬福寺」の境内に「摩尼輪まにりん堂」があります。
このお堂は転輪経蔵と同じ様式なのですが、お経ではなく四天王像と地蔵菩薩像を擁しています。

萬福寺摩尼輪堂(東京都大田区)

その一面の扉にお札が貼られています。

向かって右側の般若札に「以字点」

向かって左側のお札は「歳徳神」で、その年の福徳を司どる神様。毎年、居場所を変え、その年にいらっしゃる方位が「恵方」です。周りにはべっている神様たちは「八将神」で方位の吉凶を司っています。上方に瑞雲付きの日月が配されています。

右側は般若札。そもそも転輪蔵には、大般若経全16部600巻(三蔵法師がインド方面から梵語版を持ち帰り長安で漢訳したもの)が収められていて、それを全て読経したいところ、なかなか難しいので転輪蔵を一回転させることで全巻を読経したことにするものです。

上方の梵字は「ジャジニャ」で「般若菩薩」を表しています。般若菩薩とは聞き慣れませんが、女性の菩薩で「胎蔵曼荼羅」の中台八葉院の直下、持明院の中央にいらっしゃいます。
この梵字を左右から挟むように「四つの点」(この例では、「冫」と「人」)が配されていて、これが「以字点」と呼ばれるものです。
以字点」はお札の冒頭に配する記号で、その意味はよく分かっていないようです。

般若菩薩(六臂、三眼、柔和相)


(2) 積善館(群馬県中之条町)

映画「千と千尋の神隠し」の「油屋」のデザインの参考にされたとも言われている四万しま温泉の「積善館」

四万川の支流新湯川に架かる「慶雲橋」


本館の玄関引き戸の上に厄除けのお札が掲げられていて、

本館玄関に掲げられているお札

観音菩薩の種字「サ」の下に「厄除御守護」「家内安全」「商売繁昌」と記されていて、その頂部を挟むように「以字点」が配されています。

お札の頂部に「以字点」


(3) 沖縄県那覇市内

沖縄では、いまでも陰暦カレンダーが流通しているなど道教的な文化が息づいています。

門柱などで魔除けのシーサーは頻繁に目にするわけですが、たまに護符を見かけることがあります。

門柱にシーサーとフーフダ

下の写真は門柱に貼り付けるタイプのお札(フーフダ)です。木簡に「妖怪消滅急々如律令モン」と書かれていて、その上に「以字点」が配されています。

語尾の「急々如律令」は呪符や護符の最後に配する決まり文句で、ただちに「律令」で命じられたのと同様に厳しく実行せよ、という意味。つまり、このお札の本願は「妖怪消滅」ということになり、怪異除けのためのものということになるのでしょう。末尾の「モン」の意味は全くわかりません。

護符の頂部に「以字点」

この護符は豊見城市にある道心寺が頒布しているものです。こちらのお寺さんは金峯山修験本宗ということですから、奈良県吉野の金峯山寺を総本山とする修験道の流れを汲むものです。
もともと、修験道は道教や仏教とアニミズム系の神道が習合しているので、福建省の影響が色濃く、また現代でも陰暦カレンダーが流通している沖縄の地に根を張ることは、とても自然なことのように思います。


(4) 金閣寺・銀閣寺(京都市)

金閣寺や銀閣寺では参拝料を納めると入場券代わりにお札をわけて下さいます。
そのお札の頂部に「以字点」が配されています。
なにやら四方に広がる後光を表す模様のように見えなくもありません。

金閣寺のお札に「以字点」(2023年)

下の写真、右側のお札は、かれこれ何十年か前に頂いたお札ですが、「以字点」が配されていません。
銀閣寺のお札に「以字点」を配するようになったのは、意外と新しいことなのかも知れません。

銀閣寺のお札。「以字点あり」(2016年)と「以字点なし」(1970〜1980年代?)


・「以字点」は謎の記号
・お札の頂部に配される
・少なくとも、関東、京都、沖縄と、かなり広範に分布

※本記事は別ブログで複数回に分けて公開していた内容を一編の記事にまとめ、加筆修正したものです

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