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歌題「鶯」の和歌を詠もう!

 こんにちは、歌(を読んだり詠んだりすることがただただ好きな)人の有泉です、よろしくお願いいたします。
 私の地元・ここ海士町(島根県の隠岐諸島島前地域の中ノ島にあるまち)では、毎年『隠岐後鳥羽院大賞』という詩歌大会が開催されています。
 昨日3月27日(金)、今年度の作品募集が開始されたようです!
隠岐後鳥羽院大賞さんの公式ホームページは以下の通りです。

日本で唯一の『和歌』部門のある大会

 隠岐後鳥羽院大賞には、和歌部門、俳句部門、短歌部門の三つの部門があります。この島におよそ八百年前にお遷りになった歌聖、後鳥羽院が大切にされていた日本の詩歌を継承することを目的のひとつとした大会で毎年全国からたくさんの作品が寄せられております。
 おおきな特長の一つとして『和歌』の部門があることが言えると思います。選者(作品の審査をしてくださる先生)は、冷泉 渚(れいぜい なぎさ)様。藤原 俊成・定家を祖に持つ、京都の冷泉家の後嗣(こうし)でいらっしゃる方です。
こちら↓期限付きですが、Tver(TV番組が見られます)にて、
京都浪漫 悠久の物語
第190回「和歌の家 冷泉家に密着~守り継がれる「型」の美~」という番組が見られますので、ご覧ください。

隠岐後鳥羽院和歌大賞 今年のお題は『鶯』 

 今年の募集題は『』なんですね。
和歌(古典和歌)と現代短歌の大きな違いは、現代短歌の場合、お題にそって歌を詠む(作る)場合でも、歌のなかに「鶯」の言葉が入っていればわりとなんでもよいという感じなのですが、和歌(古典和歌)の場合、出されたお題によって、歌の中でどんな言葉を使うかが決まってきます。
今年の和歌大賞の募集要項では、このように書かれています。

題 鶯(うくひす)について
春を告げる鳥です。
暗い冬が終わり「鶯の初音」が渡る時、人々は再生の春の訪れを知ります。
和歌での鶯は、姿よりも鳴き声が重要です。声を聞いてその方角を見ると姿が見えた、と詠むのが一般的です。
「雪の古巣」を出でて、「まだ里慣れぬ」鶯が、「淡雪に鳴く」「さえづり初むる」
声を聞き、人々は「春を知り」ます。
梅と鶯は、互いになくてはならない友です。
梅の枝や花に「うつろひ」、「梅の香のしるべ」をたよりに飛び、春を彩ります。

令和八年度『隠岐後鳥羽院和歌大賞』募集要項より引用

 美しい…。
 さっそくですが、『鶯』の和歌にはどんなものがあるか見ていきたいと思います。
 鶯は、冬の間谷の巣に籠っており、春になると里に出てくるものとされていました。

うぐひすをよみはべりける
やまたかみ ゆきふるすより うぐひすの いづるはつねは けふぞなくなる【訳】山が高いので、雪が降る古巣から出て来た鶯の初音は、今日はじめて聞えてきたことだ。
※ゆきふるす…雪₊降る、古巣

『後拾遺和歌集』大中臣能宣

 すみません。正直に申しますと、私(有泉)は古典文法があまり得意ではないので、和歌の訳についてはあれこれ参考文献を参照し(こうかな…?)という感じでおそるおそる書いていますので、だいたいこんな意味なんだなあというくらいで読んでいただけると幸いです。
 大中臣能宣の「やまたかみ(山が高いので)…」の和歌は、これは、鶯のすみかが山の高いところにあって、そのために、人里に降りてくるまでに時間がかかって、今日ようやく今年初の鳴き声をきくことができたなあという歌ですかね。
 大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)は、百人一首の歌人でもありますね。
「御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ」の歌を詠んだ歌人です。
 続いては、淡雪に鳴く鶯の和歌を見てみましょう。

梅が枝に鳴きて移ろふ鶯の羽(はね)白たへに沫雪(あはゆき)ぞ降る
【訳】梅の枝に鳴いては飛び移ってゆく鶯の、羽もまっ白になるほどの沫雪が降るよ

『万葉集』巻10・1844・作者不記
羽に淡雪を纏いながら鳴く鶯

 わー寒そう。これも『声を聞いてその方角を見ると姿が見えた、と詠む』手法のひとつでしょうかね。
では次に、山からおりてきたばかりの時は「まだ里慣れぬ」状態だった鶯が、里に馴染みはじめたかな?という様子を詠んだ和歌です。

はじめて鶯を聞くといふことをよめる
けふよりや梅の立枝(たちえ)に鶯の声里なるるはじめなるらむ
【訳】今日からが、梅の高く伸びた枝で、鶯の声が里に馴染むはじめなのであろうか。

『金葉集』二奏本・春部・13・春宮大夫〈藤原〉公実


なお、後鳥羽院の和歌にも『鶯(うくひす)』は詠まれています。

鶯のなけどもいまだふる雪に杉の葉しろき逢坂(あふさか)の山
【訳】鶯が鳴いているものの、まだ雪が降り続き、杉の葉まで白くなっている逢坂の山であることよ。
※逢坂(あふさか)の山=滋賀県と京都府との県境の山。古代の関所『逢坂関』があった。

『新古今和歌集』春上・18・後鳥羽院

逢坂の山は、古代の頃には京都に入るための関所「逢坂関」があり、百人一首の蝉丸の和歌
「これやこの 行くも帰るも 別れては知るも知らぬも 逢坂の関」
三条右大臣
「名にし負はば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな」
清少納言
「夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも 世に逢坂の 関はゆるさじ」
歌枕の地です。

逢坂山関跡(写真:写真AC)

関越ゆる 春の使ひや 行きやらぬ 音羽の山の 鶯の声
【訳】逢坂の関を越えて都へ入ってくるはずの春の使いは、まだそこを越えきっていないのだろうか。
音羽山に響く鶯の声が、そう思わせることだ。
※春の使ひ=鶯 音羽山=逢坂山と峰続きの山。滋賀県と京都府との県境にあるが京都により近い。

『俊成五社百首 日吉』藤原俊成

春たつ日よみ侍りける
逢坂の関をや春も越えつらん音羽の山のけさはかす(霞)める
【訳】逢坂の、関を春も、越えたのだろうか。音羽の山が、今朝は霞んでいる。

『後拾遺和歌集』春上・4・橘俊綱朝臣/『新訳 後拾遺和歌集』水垣 久 訳 注/やまとうたeブックス

橘俊綱朝臣の和歌。これは、春が東からくるという考えにもとづき詠まれた和歌です。この和歌には鶯は登場しませんが、春が東国との関を越えて都に訪れると見立てた和歌はいろいろとあります。

正月二日、逢坂にてうぐひすの声を聞きてよみ侍りける
ふるさとへ行く人あらばことづてんけふ鶯の初音ききつと
【訳】故郷の都へ、行く人があったならば、伝言しよう。今日逢坂で鶯の、初鳴きを聞いたと。
※春は東から訪れるとされていたので、「逢坂」は、都より春の訪れの早い地とされた。

『後拾遺和歌集』春上・20・源兼澄/『新訳 後拾遺和歌集』水垣 久 訳 注/やまとうたeブックス

この時期(執筆している今日は3月29日)、桜前線が南の地域からだんだんと北上してきていて、春はあたたかい南の地域から先にやってくるという感覚でいますが、和歌の時代の人々は、中国からの『陰陽五行説』にもとづいた季節と方角の感覚があったため春は東からやってくるものという認識だったそうです。

「鶯」との取り合わせで具体的に名前が詠みこまれる花はほとんどすべて「梅」。

 和歌では鶯の生態を具体的に詠みこんだりすることはないですが
一旦、説明を。

鶯は燕雀目(えんじゃくもく)ウグイス科の小鳥。主に山地帯の低木林や笹やぶに生息し、早春梅の花が咲くころに都会や平野に出現してホーホケキョと美しい声で雄は鳴きはじめ、初夏におよぶ。

『歌ことば歌枕大辞典』角川書店

 鶯は、春の最初に鳴く鳥とされ、梅は春の最初に咲く花ととらえられていたので、和歌のなかで一緒に詠まれることが多かった。ただ、梅の樹で実際によく鳴いているのはメジロ(目白)。和歌のなかでの詠まれ方と、実際の鶯の行動とはかならずしも一致しないのですね。また、和歌で詠まれる梅は基本的には「白梅」だそうです。
 鶯は俳句の季語にもなっている鳥ですが、夏まで囀っている鶯のは老鶯(ろうおう)と呼ばれ、鳴き方がなれていて巧みな鶯です。
 和歌での鶯はあくまでも春の鳥とみなされているようで、春を待つ歌から春を惜しむまでが詠まれます。

百首の歌めしける時、暮の春の心をよませたまうける
花は根に鳥は古巣に帰るなり春のとまりを知る人ぞなき
【訳】(春が暮れてゆけば)桜の花は根に帰り、鶯は谷の古巣に、帰るという。(桜も鶯も帰るべき場所はあるが)春の帰り着く果てを、知る人はいないのだ。
※鳥=鶯を指す。とまり=行きつく先・終着点。

『千載和歌集』春下・122・崇徳院/『新訳 千載和歌集』水垣 久 訳 注/やまとうたeブックス

和歌の用例を探すのに便利な検索サイト(和歌のデータベース)

最後に、和歌の用例を探すのに、便利な検索サイトをご紹介させていただきます。

↑『万葉百科 奈良県立万葉文化館』は便利な検索サイト。たとえば「鶯」をキーワードに入れて検索すると、『万葉集』に掲載されているさまざまな鶯の和歌が検索結果に表示されます。

↑こちらは国際日本文化研究センター(日文研)の、和歌の検索サイト。
掲載されている和歌の出典は、

勅撰集21種すべて、万葉集をはじめ「夫木和歌集」などの私撰集と主要な私家集の和歌を収録。データはすべて当時奈良工業高等専門学校教授であった勢田勝郭氏がみずから多年にわたって入力・蓄積したもので、日本研究に役立てて欲しいと日文研に一括寄託されたもの。件数 190,423件(平成14年1月更新)

国際日本文化研究センター(日文研)データベースより引用

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たとえば鶯の和歌を探したい場合は、『語句検索』に
ひらがな(「鶯」の場合は「うくひす」)入力で検索します。
和歌って本当に奥が深いですね、これからも色々と紹介してまいりますのでよろしくお願いいたします。

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