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働くとは、誰かの不安に責任を持つことだった

10人の取材で、私の仕事観は静かに変わった

私はこれまで、働くことを「成果を出すこと」だと思っていた。

与えられた仕事をきちんとこなし、数字や結果で評価されること。
それが仕事であり、社会人としての価値だと、どこかで信じていた。

けれど、ウェルネスダイニングで働く10人に話を聞くうちに、その考えは静かに、でも確かに変わっていった。

彼らが向き合っていたのは、単なる業務ではない。

食事の不安。病気への不安。家族への不安。仕事への不安。

そのひとつひとつに、どう寄り添い、どう言葉を返し、どう行動につなげるか。

その姿を見て、私は思った。

働くとは、「誰かの不安に責任を持つこと」なのではないか。

そして、その責任を果たすには、正しさだけでは足りず、
誠実さと想像力が必要なのだと、この10本の取材は教えてくれた。

ウェルネスダイニングで働く、ということ


私はウェルネスダイニングで働く10人にインタビューをした。

同社は「からだ想い、家族想いのあったか健康応援団」を掲げ、
食事制限を必要とする方々とその家族に向けて、
「健康宅配食」と「管理栄養士による栄養相談」を提供している。

日々の食卓は、当事者や家族にとって小さな積み重ねであり、
その「小さな不安」の蓄積が生活の大きな負担になりうる。

ウェルネスダイニングは、その不安を少しでも和らげ、
誰もが相談できる味方でありたいと活動している。

この理念は決してスローガンにとどまらず、
社員の言葉や行動のなかに根づいている。

現場の声を聞けば、
理念と実践が具体的な仕事の仕方に落とし込まれていることが見えてくる。

正しさより、相手が動けること

最初に私の考えを変えたのは、
管理栄養士としてお客様対応を担う人たちの言葉だった。

病院実習で、忙しさに追われる現場では本当に必要な食事のサポートが十分に行き届かない――その現実に違和感を持った人がいた。

「栄養相談の時間は30分しかない」
「もっと聞きたいのに、聞ききれない」

そんなもどかしさが、入社の原点だった人もいた。

別の人は、病気になってからではなく、
その前の段階、「一次予防」に関わりたいと考えた。

また別の人は、
私たちはただ「お弁当を売る会社」ではなく、
よりお客様へ寄り添った、
「人に寄り添うサービス」になっていくべきだと語った。

そのなかで印象的だったのは、
「すべてを変える必要はないですよ」
「普段の食事の安心材料として使ってください」

というお客様への声掛けの言葉だった。

相手が今ほしいのは、
知識や単なる正しさではなく安心かもしれない。
背中を押す言葉かもしれない。
あるいは、「全部を変えなくていい」という許可かもしれない。

働くうえで大切なのは、正しいことをただ伝えるのではなく、
相手が動けるような言葉に形を変えて、優しく渡すことなのだと思った。

この気づきは、私のなかの「伝える」の定義を変えた。

私はそれまで、言葉は事実を伝えるためのものだと考えていた。
けれど実際には、言葉は行動の入口にもなり、相手の不安を和らげるものにもなる。

同じ内容でも、
どういう順番で、
どんな温度で、
どんな表情で手渡すかで、
相手に残るものはまるで違う。

そのことを、この取材は何度も思い出させてくれた。

見えない仕事が、会社を支えている

次に私の視点を変えたのは、会社の基盤をつくる人たちだった。

経営管理、経理、セキュリティ。
事業を前に進めるために必要だけれど、表には少し見えにくい仕事。

正直に言えば、私はそれまで、成果が見えやすい仕事に目が向きがちだった。

けれど、話を聞くうちに、目に見える成果の前には、必ず見えないところで支える仕事が積み上がっているのだと気づいた。

「困っている人を助けよう」
「失敗しても諦めない」

そんな言葉を自然に口にする人がいて、
その言葉どおりに、誰かのために静かに動いている人がいる。

制度を整える人。
情報を守る人。
数字の裏側を見つめる人。
現場が集中できるように環境を整える人。

その存在があるから、前線の人たちは思い切って動ける。
より良いサービスをお客様へ提供することができる。

私はそこで、仕事の価値は「成果に見えるかどうか」では決まらないのだと知った。

むしろ、誰かが安心して働ける環境をつくること。それこそが、組織にとって大きな成果なのかもしれない。

この視点は、私自身の仕事観にも静かに影響を与えた。

取材や記事づくりも、見えているのは完成した文章だけかもしれない。
でも、その裏には、
インタビューをする際に相手が話しやすい空気をつくること、
事実を正確に拾うこと、
記事を書くときに読み手が受け取りやすい順番を考えること、

そうした見えにくい小さな工夫が積み重なっている。

文章は一瞬で完成するように見えて、実は多くの工程を踏んでいる。

それと同じように、成果はたくさんの支える仕事の上に成り立っている。
そのことを、あらためて意識するようになった。

変化は、失うことではなく、広がること

印象的だったのは、異動や新しい役割を前向きに受け止める人が多かったことだ。

「ワクワクする方へ飛び込む」
「変化を楽しめる人が向いている」

そんな言葉が、何度も印象に残った。

部署が変わる。
任される仕事が変わる。
これまでの延長線ではない場所に立つ。

普通なら不安のほうが大きいはずだ。
「できない」と逃げ出してしまいたくなることだってある。
けれど彼らは、その変化を
「挑戦できる機会」
「視野が広がるきっかけ」

としてポジティブに捉えていた。

私はその姿勢に、何度もはっとした。

私はどちらかというと、変化に慎重なほうだ。慣れたやり方に安心し、未知のものには身構えてしまう。

でも彼らは、変わることを怖がるのではなく、変わることで得られるものを見ていた。

その背中を見て、私は少しずつ、変化を「失うこと」ではなく「広がること」として捉えられるようになった。

新しい場所に行くたびに、自分の輪郭は少しずつ広がる。
その広がった輪郭が、あとから必ず自分の力になる。

そう信じられるようになったことも、大きな変化だったと思う。

働くことは、ただ安定して同じことを続けることではない。
変化のなかで、自分の可能性を少しずつ増やしていくことでもある。
自分の伸びしろを信じることも、働くうえでは大切なのだと思う。

伝えるとは、入口をつくること

事業企画やクリエイティブの仕事をしている人たちは、
自分たちの商品をより多くの人に見てもらうために、
「どう届けるか」を徹底的に考えていた。

情報を並べるだけでは、人は動かない。
見やすいだけでも足りない。
大切なのは、お客様が迷わずたどり着ける入口をつくることだ。

「ここで頼みたい」
そう思ってもらえる設計が必要だと、彼らは言っていた。

私はこの話から、魅力を伝えることは「一方的な情報提供」ではないのだと気づいた。

相手に必要な順番で伝えること。
相手が受け取れる温度で渡すこと。
そして、その人のなかに「行ってみよう」「頼ってみよう」という気持ちが芽生えるように整えること。

この視点は、取材にも文章にも、そのままつながる。

書くことは、ただ記録することではない。読む人がその記事から次の一歩を踏み出す勇気やヒントを得られるような入口をつくることだ。

その意味で、私はこの取材を通して、仕事のなかにある「視点」の重要性を学んだ。

また、「伝えたいこと」があることと、「伝わること」があることは違う。この当たり前のようで難しい差を、私はあらためて意識するようになった。

何かを発信するとき、自分の熱量だけで押し切るのではなく、
相手が入りやすい形に整える。
そのひと手間が、結果的に大きな違いを生むのだと思う。

体験して初めてわかることがある

経営に近い立場の人が、実際にお客様の立場になり制限食を作ってみる。
そんな話も印象的だった。

レシピを読むだけではわからないことがある。
食べてみて、作ってみて、初めて見えることがある。

私はこのエピソードを聞いて、理解するとは、頭のなかで完結することではないのだと思った。

「制限食を作ってみたら、普段の食事の塩分の多さに気づいた」
そんな実感のこもった言葉は、どんな説明よりも重かった。

相手を理解したいなら、相手の世界に少しでも触れてみること。
そこには、単なる情報収集では届かない解像度がある。

この感覚は、私の仕事にもそのまま必要だと思った。

相手を理解するには想像だけでは足りない。
可能な限り相手の世界に触れてみること。

また「わかったつもり」にならない謙虚さも必要だ。
知ったふりをせず、わからないことを認めて掘り下げる姿勢が、
相手への誠実さにつながると思った。

失敗できる環境が、人を育てる

新入社員の座談会では、失敗しても責められず、
相談しやすい環境が印象に残った。

「失敗=成長のチャンス」
そんな空気があるからこそ、若手が安心して前に進めるのだと思った。

わからないことを早く聞ける。
ミスを隠さずに済む。
その安心感が、挑戦の速度を上げている。

私はこれまで、わからないことがあっても、
「こんなこと聞いていいのだろうか」と躊躇することがあった。

でも、わからないときに早く聞くことは、弱さではない。
仕事を前に進める力だ。

失敗を恐れて立ち止まるより、早く相談し、早く修正するほうが、ずっと前に進める。

このことを知っただけでも、私の仕事の向き合い方は少し変わった。

仕事は、一人で完璧に進めることではない。
むしろ、
失敗を共有できること、
助けを求められることが、

長く働くうえでは重要なのかもしれない。

その安心感があるから、人は新しいことに挑戦できる。挑戦できるから、成長できる。失敗するから、経験を積むことができる。

そんな循環を生む環境はやはり強く、人が育っていく土台になるのだと思う。

働き方に、唯一の正解はない

ある人は、子どもを育てながら働いていた。

その人の話で印象に残ったのは、「両立」という言葉を、
自分の感覚で捉え直していたことだった。

仕事と家庭、どちらかを我慢するのではなく、
自分なりのリズムで両方を大切にする。

そのために必要なのは、誰かの理想に合わせることではなく、
自分にとっての責任の持ち方を決めることなのだと思った。

「両立の定義は、人それぞれ違う」

その言葉には、すごく救われるものがあった。

私はこの話から、働き方に正解はないのだと感じた。

大事なのは、誰かの基準に合わせて無理をすることではない。
自分の暮らしと責任を、自分で引き受けることだ。

それができる働き方は、きっと強い。

そしてその強さは、決して無理を重ねた先にあるものではない。
自分に合った形を知り、その形を守りながら働くことのなかにあるのだと思った。

私のなかで、働く意味が更新された

10人の取材を通して、私は働くことを見直した。
以前は成果や効率で仕事を見ていた。

もちろん、それらは今も大事だ。
だが、それだけでは仕事の価値は測れない

誰かの不安をほどくこと。
見えないところを支えること。
変化を受け止めること。
伝わる形に落とし込むこと。
体験して理解すること。
失敗を学びに変えること。
自分の働き方を自分で定義すること。

その一つひとつが、働くうえで本当に大切なことだった。

そしてそれは、取材先の人たちだけの話ではなく、
これから私自身が実践していくべきことでもある。

相手の立場で考えることが以前より自然になった。
何かを伝える時には
「自分が言いたいこと」よりも
「相手が受け取れること」を優先
するようになった。

わからないことを曖昧にせず、きちんと確認することの重要性も、
以前よりずっと強く感じている。

この変化を、単なる気づきで終わらせたくない。
仕事のなかで、形にしていきたい。

これから私は、どう働くか

今回の取材を通して得た学びを、
私はこれから、次のように活かしていきたい。

1.相手の状態を想像して言葉を選ぶ

正しさだけではなく、相手の不安や状況に合わせる。

2.見えない仕事の価値を見落とさない

前に出る仕事だけでなく、支える仕事にも目を向ける。

3.変化を学びに変える

新しい役割や環境を、怖いものではなく学びの機会として受け止める。

4.自分の頭と体で理解する

必要であれば、自分で試し、体感してから伝える。

5.失敗を早く共有する

隠さず、抱え込まず、早めに相談して修正する。

6.自分の働き方を自分で定義する

誰かの基準ではなく、自分にとっての納得感を大切にする。

おわりに

10人の取材を通して、私は「働くとは何か」を考え続けた。

そして最終的にたどり着いた答えは、働くとは、
「誰かの不安に責任を持つこと」だ、ということだった。

成果を出すこと。
効率よく進めること。
役割を果たすこと。

それらはもちろん大事だ。

でも、
その前提には、
相手を思うこと、
誠実であること、

必要なら一歩踏み込むことがある。

ウェルネスダイニングの人たちは、それを日々の仕事のなかで実践していた。

私はその姿を見て、これからの自分の働き方も変えていきたいと思った。

相手の不安に気づける人になること。
曖昧にせず、誠実に向き合うこと。
そして、誰かの次の一歩を支えられる人になること。

この取材経験は、私にとってただの仕事ではなく、
働くことへの見方を変えた大きな学びだった。

そしてこの学びを、これからの文章にも、仕事にも、
ちゃんと活かしていきたい。

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