21世紀になって途上国の旅はどう変わったか。
スマートフォンと旅人達
時は2000年代。
当時大学生の私はバックパックを背負ってアジアの国を中心に貧乏旅を繰り広げていました。
当時の旅は極めて「ドラクエ」に近かったです。
次の街へ移動し、ぼったくりタクシーとの闘いを得て安宿街へ。
村人と会話を重ねて宿と飯の確保。迫りくる物乞いと詐欺師、スリ師を回避して経験値を上げて次の街へ向かいます。
宝箱を開けたら(見知らぬ人に着いて行ったら)ミミックだったりそうじゃなかったりとにかく明日どうなるかわからない、はちゃめちゃなドッキドキ♡アドベンチャーがそこにはあったのでした。
間違いなく当時旅人達が手にしていたのはスマートフォンではなく、「地球の歩き方」(紙のガイド)でした。
スマートフォンが変えた旅
2010年頃から皆が持ち始めたスマートフォン。皆さんが今手に持っているこのデバイスは10年そこそこで旅の世界をあっと言う間に変えてしまいました。
空港に着いてsimフリーのスマホに空港に必ずある販売窓口の1週間1000円程度(これは国によるけど)のsimカードを挿入すれば、あら不思議、日本と変わらない動作でスマホがすぐに使えるようになります。
※厳密には当時海外でもガラケーでネットに繋ぐことはできました。
しかし1日数千円の費用がかかります。貧乏学生長期旅行者にとっては実質許容不可能な金額ですのでネット環境無しで強制リアルドラクエを始めることになります。
①まず海外旅行に行くには航空券が必要になりますよね。
旧:当時は駅前にあるJTBやHISなどの旅行代理店を利用するのが一般的でした。
担当の人からおすすめの国や地域、美味しいご飯や気を付けることなどお喋りをしながら口ぐるまに乗せられて楽しく手続きを進めます。
指定された口座に料金を振り込み、後日窓口に航空券を取りに行きます。
新:今は航空券比較予約サイトskysccanerを使って急げば2分で最安の航空券を爆速で取得することができます。
②さて、ついに入国します。
旧:ゲートを超えればそこは外国。
楽しい旅の始まりです。
そして程無くして目的地に着くためにボッタくりタクシーとの熱い闘いが始まります。
新:今は多くの空港には地下鉄やモノレールが乗り入れています。
快適に出来たばかりの綺麗な公共交通機関に乗り、目的地までアクセスすることができます。(全ての国ではないけど。)

新しく清潔だ。我らが金正男同志が非業の死を遂げた
悲劇の地でもある。
③人間なので睡眠が必要。ホテルに泊まります。
旧:大抵の場合街の中心部には安宿街があります。
当時もメールで事前予約する仕組みはありましたが、計画性の無いアホな私は現地で安宿に飛び込み(前述の通りネットに繋がってない)空き部屋の交渉をはじめ、大抵の場合何かしらの不備で痛い目にあいます。(お湯が出ない。ダニだらけのベット。)
ひどい場合はホテルのスタッフに金を盗まれます。
死んだ魚の目をしている長期滞在の日本人のおっさんとの会話が貴重な情報源となります。
新:クレジットカードでスマホで予約。
出発日前日に自宅のリビングで、それどころか現地の空港に着いてから予約サイトでの予約が可能です。
ホテルオーナーはサイト上の口コミで顧客から常時監視されています。民泊サイトも相互監視の仕組みが確立されており、双方従業員からお金を盗まれようものならマーケットプレイスから排除されます。
よってオーナー側はそういった問題が起こらないよう、顧客に満足して貰うために安心安全清潔な環境を心掛けるようになります。
透明性のある市場原理万歳。

監獄のような宿に泊まっている。
なぜなら職が無いと書いて無職だからだ。
④その国にいったら絶対行くべき観光地ってありますよね。
誰もが知る世界遺産Aのゲートに到着しました。
旧:ゲート付近には怪しい流暢な日本語を話すボッタくりガイド。高額で入場兼を売りつけてくるダフ屋兼ガイド。周辺の他の観光地も含めて案内をしてくれるというぼったくりタクシー。
団体ツアーを選択しなかった場合には全て交渉は自己責任です。(※中には善良な人もいますので悪しからず。)
新:チケットサイトで日時を選択し、クレジットカードで購入できます。日本語音声ガイド付きのヘッドセットも選択可です。
決済後にQRコードがメールで届きます。
それをゲートにかざせば誰と会話をすることもなく、世界遺産Aを拝むことができます。

紹介パネルが1㎝弱ズレているのか
小一時間問い詰めたい
⑤一日中歩き回って疲れた。美味しいご飯を食べてホテルに帰ろう
旧:地球の歩き方にお勧めのレストランの記載はあるけど、住所を見ても英語のアドレスが書かれていたとて、どこにあるのかわからない。そもそも自分がこの街のどの辺にいるのかもわからない。
結局視界に入った適当な飲食店に入ります。
アタリの場合もあれば、到底食べることのできない逸品に出会うこともあります。
会計を済ませて、今か今かと外で待ち構えているタクシーと交渉成立。運ちゃんはメーターを使うと言います。
地球の歩き方の地図のページを見せ、ホテルの名前を伝えてあなたはほっと一安心。
そして運ちゃんは当たり前の用に約束を反故にし、走行距離を稼いでメーターを回すためにホテルとは逆方向に進みはじめますが、それを確かめる術は私にはありません。
なぜならインターネットをつかえないから。
新:お腹が好いたのでgoogle mapを起動。
レストランと入力すれば一帯のレストランが表示され、☆の数で評価が一目瞭然。(中にはステマもある。)
料理の画像や日本人の口コミを閲覧することもできます。
運が悪くなければ大外れは無いでしょう。美味しい料理に口鼓を打ち、食べ終わる頃にはライドシェア(Uber,Grab等)のアプリを起動します。
アプリにホテルの名前を入力すればすぐさま必要な料金が表示されます。
金額に納得がいけば、決済。暫し小休止、会計を済ませた頃にはレストランの前にドライバーが到着しています。
客もドライバーも口コミで相互監視されているので悪いことはできません。
逆方向に進み始めることも無ければ、クレジットカードで納得した金額で事前に決済されているので料金で揉めることはありません。
そして快適に目的地に到着することができます。
(ライドシェアについては日本の地方の高齢化、限界集落を救うツールに成り得ると思っているのでいつかこのテーマに絞って執筆したい。日本以外ではもはや社会インフラです。訪れたほぼ全ての国でライドシェアは既に日常の市民の足。一方、岸田首相はこれから検討を加速するとのこと。乙。

初心者にバイク便は推奨しない。車を呼ぼう。
発展する経済と快適になった旅。
スマートフォンで変わった旅。でも私はこの便利で快適になりすぎてしまった旅に消失感に似た悲しみを覚えるのでした。あートラブルが起きなくてつまんねぇなと。
これからモンスター達観光業従事者とアツい戦闘交渉はできないんだなと。
もうドラクエをすることはできないんだなと。
それと同時にスマホを落としたら全てが詰むということも理解されたい。可能であれば2台持ちを筆者は推奨する。
凄まじい発展を続ける途上国。国をティーカップになぞらえると、そのカップから溢れた富が、社会的弱者にも行き渡りはじめます。
社会が豊かになり、街の掃除に従事する人が国に雇用され、街は綺麗になります。給料が上がり、余裕ができ、親は自分の子供に高等教育を施すようになります。
皆がスマートフォンを持ち、TIkTokを見る東南アジアの若者が韓流アイドルに憧れます。ネットフリックスで日本のアニメを見ます。相互理解と尊重の促進。
そして自分がメディアとなる時代となりました。
これは本当に素晴らしいこと。
ここ15年で多くの途上国が豊かになり、肌感覚ですが、生活困窮者や路上生活者は減り、QOL(人間の生活の質)は確実に上がりました。
でも一部の国ではこの、ドラクエに似た旅情(DNR)が急速に消えつつあります。
特殊な癖であることは重々承知。
物好きのそこのあなた。行くなら今ですよ。
