副業で、本業が強くなる 番外編② まだ、どの名前にも収まらない ── GTMエンジニアと、FDEのあいだで
この連載を10本書き終えて、少し落ち着いた頃に、見逃していいた動画を一本見ました。私がAIを学ぶキッカケを作ったYoutuberの動画です。
ここ2週間は、案件につながる提案のことで頭がいっぱいで、動画を見る余裕がありませんでした。久しぶりに落ち着いて見たら、
「これ、僕のことですか」
と思う話が、また出てきました。
その動画で紹介されていたのが、GTMエンジニアという言葉です。
GTMエンジニアという言葉
GTMは、Go To Market の略だそうです。
海外では、AIや自動化を使って「売れる仕組み」そのものを作る人、あるいはプロダクトと営業とマーケティングの間に立って、複雑な技術を「収益につながる形」へ翻訳する役割、と説明されているようです。
エンジニアの感覚があり、ビジネス側も分かり、最後に市場へ出すところまで考える。
その説明を読んで、思わず手が止まりました。
自分のやってきたことと、かなり重なっていたからです。
メカ屋だった人間が、いまやっていること
私は、もともとゴリゴリのメカ屋でした。
ソフトエンジニアではありません。コードは書けませんでした。
でも、ものがどう動くかは、なんとなく分かります。
ものづくりの世界では、メカとソフトは切り離せません。機構を組んでも、それを思い通りに動かすにはソフトの考え方が必要になる。だから、ソフトの担当者と一緒に「どう動かしたいか」を考える時間が長くありました。
実装はお願いするしかなかった。でも、「こうしてほしい」「ああしてほしい」を、相手の考え方を踏まえて一緒に詰めていく。そこは、ずっとやってきたことです。
その人間が、いまはマネジメント側にいます。営業寄りのことも、経営に近いことも、少しずつ考えるようになりました。
そこに、副業で本気でマーケティングを学ぶ経験が重なりました。
そして、AIです。
コードは書けなかったのに、いまはAIと一緒に、実際に動くツールを作っています。
社内の課題を見る。
会社の外の困りごとを見る。
それを、形にできないか考える。
バラバラだった経験が、AIを真ん中に置いた瞬間に、一本につながった感覚がありました。
最初に近いと思ったのが、このGTMエンジニアという言葉でした。
もう一つ、引っかかった言葉
ただ、調べていくうちに、もう一つ気になる言葉が出てきました。
FDE。Forward Deployed Engineer という職種です。
顧客の現場に入り、困りごとを聞き、AIやソフトウェアを使って、実際に動く形にしていく人。単に提案するだけでも、ただコードを書く人でもない。現場と技術のあいだに入って、業務の中で本当に使われるところまで持っていく役割だそうです。
この言葉を知ったとき、また少し引っかかりました。
自分がやってきたことは、AIで何かを作ることだけではなかったからです。
長いメールを整理する。
議事録を、早く共有できる形にする。
父が一人でも使える形の議事録ツールを作る。
社長さんの困りごとを聞いて、2週間でデモを作る。
その一つひとつは、小さなことです。大きなプロダクトを作ったわけでも、最初から立派な事業を立ち上げたわけでもありません。
でも、どれも共通していました。困りごとを聞き、現場の言葉を理解して、AIを使って、相手が判断できる形に近づける。やっていたのは、ずっとそれでした。
GTMエンジニアが「誰に、どう届けるか」の言葉だとしたら、FDEは「現場の困りごとを、どう動く形にするか」の言葉。そんなふうに、自分の中で並びました。
それでも、FDEそのものだとは思っていない
もちろん、私はFDEそのものだとは思っていません。
本番運用。セキュリティ。保守。継続的な改善。顧客の環境の中で、責任を持って動かし続けること。
そこまで含めて担うには、まだ足りないものがあります。いまの私にあるのは、現場を理解して、課題を整理して、試しに作って、判断の材料を出すところまで。その先の「ずっと使われ続ける」を背負った実績は、これからです。
だから、胸を張って「私はGTMエンジニアです」とも「FDEです」とも、まだ言えません。

まだ、どの名前にも収まらない
不思議なもので、近い言葉が二つ見つかったのに、自分はそのどちらにも、きれいには収まりませんでした。
GTMエンジニアでもない。
FDEでもない。
AIエンジニアでもない。
そのあいだの、まだ名前のついていないどこかに、いる感じがします。
でも、悪い気はしませんでした。
メカ屋の感覚、マネジメントの視点、営業や経営への関心、副業で学んだマーケティング、そしてAIでものを作る力。これらがつながった先に、ひとつの輪郭が見え始めたのは確かだからです。
AIによって、「考えるだけ」から「形にする」まで、自分の手で進められるようになった。
ここが、いちばん大きな変化だと思います。
名前が、あとから追いついてきた
振り返ってみると、この10話の連載は、ただの副業体験記ではなかったのかもしれません。
AIを使い始めた3月から、気づけば13個のツールを作り、本業の仕事の見方が変わり、87日目に35万円の案件につながるまで。
その流れを並べてみて、ようやく分かりました。
私は、先に「GTMエンジニアになろう」とか「FDEを目指そう」と思って動いたわけではない。会社員として積み上げてきた経験を、AIを使って会社の外でも試せるようになって、外で試したことが、また本業の見え方を変え始めた。ただ、その繰り返しでした。
名前が先にあったのではなく、やってきたことに、あとから少しだけ名前が追いついてきた。
連載で書いたのは、その、名前がつく前の手探りの記録です。
何ができなかったか。何に詰まったか。どう乗り越えようとしたか。そして、会社員の経験が、どうやって会社の外で値段のつくものに変わっていったか。
だからこそ、いま同じように手探りしている人に、いちばん近いところにいるのかもしれません。
完成した人の武勇伝ではなく、変わっていく途中の記録。
そう思うと、この連載は、ここで終わりではない気がしています。
まだどの名前にも収まらない会社員が、AIで本業と副業をつないでいく。その途中経過を、これからも書いていけたらと思っています。
同じ場所にいる方がいれば、スキやコメントで反応を残してもらえるとうれしいです。
