見出し画像

人生初のウォシュレットを北九州で|明鏡止水談話#1

私は、これまでウォシュレットに微塵も信頼を置いてこなかった。
家のトイレにウォシュレットがなく、幼い頃からトイレットペーパーに頼りきっていたせいかもしれない。

『あんなもので拭けるわけがない』
『拭いた感のあるトイレットペーパーが一番だ』

ライト兄弟が飛ぶ乗り物を作ろうとしたとき、それを聞いた群衆は彼らをからかったそうだが、私はその群衆と同じような嘲笑の目を、ウォシュレットに向けていた。
しかし、ライト兄弟が群衆の予想を大きく覆したのと同じように、ウォシュレットも私を大きく覆してきたのだった__


2025年6月某日。
私は卒業論文の調査の一環で、北九州に来ていた。
昼頃には調査をひとしきり終え、帰りのフェリーが出港するまでの半日を北九州で過ごすことになった。

さて、どう過ごすか。1人で来ているから、どう決めようが私の自由だ。

どこか面白いところはないかGoogleマップで探してみると、「TOTOミュージアム」なるものが近くにある。

TOTO。
皆様もトイレでよく目にするであろう、日本が誇るあのトイレメーカー。
なんと、この北九州が本家大元の地。
そんな会社が運営するミュージアムが、ここ北九州にあるというのだ。しかも無料。それなら行かない手はない。

さっそく小倉駅からバスに乗り、TOTOミュージアムを目指した。


中央の白い建物がミュージアム。右横の黒い建物が本社。


着いた。小倉駅から10分余り。
真っ白な外観とTOTOのマークが印象的、これがTOTOミュージアムだ。隣には本社がある。

1階が企業向けのショールーム、2階がミュージアムという構造になっていて、一般の方でも両方を見学することができる。
今回訪れた2階のミュージアムは3つの展示室に分かれていて、第1展示室がTOTOの歴史、第2展示室が水回りの歴史や構造、第3展示室が今後のTOTO、という風にテーマ分けされていた。事細かく紹介したいところだが、写真撮影ができないところも多かったので、私が驚いたところだけを文字でご紹介。

まずは第1展示室。一番の驚きは、TOTOがもともと食器メーカーだったこと。実際に当時作っていたものも展示されていて、かなりクオリティの高い食器を作っていたことが分かる。全然昔のものとは思えない。

続いて第2展示室。驚いたのは、触って体験できるものが非常に多かったこと。例えば、縦にまっぷたつの状態になったトイレの展示。レバーを引くと本当に水が流れて、どういう仕組みなのかがよく分かる。ほかにも、お相撲さん用の便器、大人用の便器、子供用の便器を実際に座り比べることができる展示や、実際に水を流してどれぐらい節水できるかが分かるシャワーヘッドの展示などなど。大学四年生なのに1人で大はしゃぎしてしまった。

最後に第3展示室。今後のTOTOについて説明されていたはずだが、第2展示室が楽しすぎて全然覚えていない。また訪れる口実になった、としておこう。TOTOさん、ごめんなさい。



さて、ここまでにQOML(クオリティ・オブ・ミュージアム・ライフ)を思う存分高めてきた私だが、実は第2展示室に入る前からずっと気になっていることがある。

第2展示室に入る直前に見た、「化粧室」の三文字。ずっと気になっている。
日本人のお尻を長年支えてきた、TOTO。
その本家大元の見本市、TOTOミュージアム。
そんな場所にある、トイレ。
気になりすぎる。これは確かめるしかない。

思わず記念撮影


高鳴る胸と尿意を抑えつつ足を運び、トイレの前まで来た。
同じような考えを持つ人でごった返しているかと身構えていたが、誰もおらず非常に静かだった。

いざ、玉座に入るかの如く足を踏み入れた瞬間、あるものが視界に飛び込んできた。

なん…だと…

『NEOREST NX を是非ご体感ください』
『ネオレストNXはTOTOタンクレストイレの最上位モデルです』

トイレに「ご体感」や「最上位モデル」、という未だかつて見ぬコンビネーションが載った看板だ。なんとTOTOミュージアム、ガチのトイレまで展示物にしてしまったのか。
まさか最初にこんなものが来るとは。
ご体感くださいと入り口で言われてしまったら、最初に行かざるを得ない。
謎に2種類もある洗面台を尻目に、一直線でネオレストNXのある個室のドアを開ける。


実物を撮っていいのかわからなかった(公式パンフレットより)


たまごっちのような丸みを帯びたフォルム。タンクレストイレだと知らなければ、「タンクを盗まれた哀れなトイレ」と思ってしまうところだった。


閉めるとこんな感じ(公式パンフレットより)



「タンクを無くした秀逸なトイレ」と思い直しつつ、いよいよ座ってみる。


おーー

ん…?

ふつう…?

あ、ちょっとフィット…


起承転結の弱い四コママンガ状態になったところで、用を足す。
バカ尻なのでよくわからなかったが、フィット感が高い気がする。
そこまで座ってる感がない、と言うべきだろうか。普段のトイレより立ったり座ったりするのが楽な気がする。
じわじわと面白くなってきたところで、ふと横を見ると、ウォシュレットのスイッチがある。


私「お前は……」

ウォ「…ついにこのときがきたか」

私「……よし」

人生初のウォシュレットを経験するにはこの上ないタイミングと環境だ。
したがって、決断は早かった。(ケツだけに。続きをどうぞ。)
「おしり」ボタンにそっと手を触れる。
覆されうる時が来た。


ウォ「カチ。ウィーーーーン シャーーー」

私「うぉ、ァ…」

ウォ「シャーーー。カタッ。」

私「……」


終わった。
これがウォシュレット…
お尻だけお風呂に入ってる感じ。
半身浴のさらに半身浴といった感じ。
良い。拭けてる感もある。素晴らしい…
謎の多幸感と達成感に満たされるのが分かる。

その一方で、これほどの実力を持つ機械に信用を置いてこなかった私がいたことを知り得た。慣れ切ってしまうこと、その影響で冒険をしなくなること。それが自分の経験をどれだけ狭めていってしまうのか。それをウォシュレットは教えてくれたのだ_____

そして、ウォシュレットへの懺悔と感謝が入り混じる中、私はスイッチ下のトイレットペーパーをちぎり取り、落ち着かないお尻をしっかりめに拭いた。
そして、足早にトイレを後にしたのだった。(手はちゃんと洗った)

帰りがけに買ったTOTOミュージアム缶バッジ
袋も可愛い

この世に生まれて21年余り。この歳にして人生初の経験をすることができ、大変光栄だった。しかもそれを本場の地で体験するというのは、なかなか別格だったように感じる。こういった人生初の体験はあと何回できるのだろうか。非常に楽しみだ。

西野さかばち








追伸
前回の初投稿にて50ビューを突破いたしました。お読みいただいた方々、誠に感謝申し上げます。ちなみにまだトイレットペーパー派です。それでは。


いいなと思ったら応援しよう!